東京都議選惨敗後の出直し内閣改造で、首相に批判的な野田聖子氏(56)が総務相、女性活躍相として入閣した。その起用の裏にある思惑とは──。

 内閣支持率の下落に苦しむ安倍晋三首相(62)が助けを求めたのは、当選同期で宿敵の野田聖子氏だった。首相に批判的な野田氏を閣内に取り込めば、これまでの“お友達内閣”のイメージや、安倍一強のカラーを薄めることができる──。挙党一致の演出に余念がない首相にとって、確かにメリットはある。

●次も総裁選に出る

 実は、野田氏にとってももっけの幸いだった。2年前の自民党総裁選で首相の対抗馬として出馬を模索、今年に入ってからは5月に村上誠一郎衆院議員らと「脱アベノミクス」を考える勉強会を結成した。「反安倍」で耳目を引いてきたのに、内閣支持率の下落とともに注目されたのは、外相だった岸田文雄氏の去就、石破茂元幹事長の政権に批判的な発言だった。ポスト安倍レースから脱落しつつあった野田氏が一転、入閣で脚光を浴びた。野田氏は3日、来年秋の自民党総裁選について「次も必ず出るということは申し上げていく」と改めて宣言した。

 野田氏の起用には別の思惑もある。1日、安倍首相は側近議員にこう漏らしたという。

「野田氏を入れざるを得ない」

 政治ジャーナリストの角谷浩一さんは、こう指摘する。

「野田さんを閣内に入れるのは、小池百合子東京都知事を取り込む狙いもあるだろう」

 仮に野田氏を閣僚として起用せず、民進党の分裂や都民ファーストの国政政党化で政局が流動化した場合、どうなるか。糾合する新たな野党の顔に、小池氏に近く、知名度のある野田氏を担ぐ動きになれば、安倍自民党にとって波乱要因となる。

 一方、野田氏が無役のまま党内に残れば、自民党総裁選に野田氏が立候補、その応援に小池氏が駆けつける可能性も。3選を目指す安倍首相にとって大きな脅威になりうるのだ。

「小池氏の議員時代、議員会館の事務所は野田氏と同じフロアにあった。野田氏の部屋の前を通る必要があり、気軽に立ち寄り交流を深めていった。外様の小池氏と県議から上りつめた野田氏は立ち位置も価値観も違うが、女として自民党を生き抜いてきた強いつながりがある」(角谷さん)

●すぐ顔に出ちゃう

 そのつながりは、2016年の東京都知事選で証明済みだ。自民党は増田寛也元総務相を推薦したが、野田氏は小池氏の応援に。小池氏は16年9月に開かれた野田氏の政治資金パーティーで、

「野田先生が選挙を手伝ってくれた。『ここに行け、あそこに行け』と(野田氏の地元の)岐阜から指令が飛んだ」

 角谷さんはこう話す。

「離党したとはいえ、小池氏はそもそも自民党員で、安倍首相とも考え方が近い。自民が都民ファーストと連立を組むこともあり得る。野田氏の登用には、この先の政界再編を念頭においた自民党の考えもあるだろう」

 もっとも、小池氏の動向以前に、安倍政権はすでにぐらついている。今回の内閣改造では再入閣組が7人も含まれるなど、手堅い人事になっているが、森友学園や加計学園をめぐる疑惑はくすぶったままだ。

「各派閥からバランスよく指名し、挙党態勢を整えた。当面は安全運転しながら、世論の動向を見極めるだろう」(角谷さん)

 9月には臨時国会が召集される見通しだが、閣内に入って、言いたいことが言えない状況になれば、野田氏にとっても正念場だ。就任後の記者会見で、野田氏はこう話している。

「この職をいただいたときに、『あなたは耳の痛いことをしょっちゅう言うよね』と。総理自身も『すぐに顔に出ちゃうんだよね』というお話をされました。でも、『それを乗り越えていかなければいけない』と言っていただきましたので、適度な距離を保って、自民党の自由さとか、鷹揚(おうよう)さとか、もう一度みなさんにお示しできればと思っています」

 死中に活を求めた答えは、遠からず出る。

(編集部・澤田晃宏)

※AERA 2017年8月14−21日号