「築地は守る、豊洲を活かす」(6月20日)という基本方針を発表した小池百合子都知事の“変節”に、築地市場関係者や専門家らが猛反発している。

 知事就任直後の昨年8月に豊洲移転延期を決定し、「安心安全の確保」「築地ブランドを守る」と繰り返し、石原慎太郎元知事や自民党都連などの移転推進派と対決してきた小池知事。

 しかし、市場移転問題で協力的だった人たちが最近、小池知事と次々と袂を分かち、批判する側へと回っているのだ。 

「盛り土がない」と小池知事が記者会見をした際、情報提供したのは、豊洲移転問題を追い続ける東京中央市場労働組合の中澤誠・執行委員長と一級建築士の水谷和子氏の2人だ。中澤氏がこういう。

「築地再整備を模索していた小池知事が変節したのは理解できない。都と市場関係者の約束である『無害化』を反故にし、豊洲移転(築地解体)と五輪用駐車場整備の日程のゴリ押しに邁進し始めた。今では自民党や石原元知事と同じ立場で、愚かなことをしている。側近が正確な情報を伝えていないのではないか」

 豊洲移転中止の申入れを8月29日、小池知事にした水谷氏も、その直後の記者会見でこう批判した。

「追加対策で敷き詰めるコンクリート床では有害ガス侵入を防ぐことは困難。市場問題PTは8月10日に出した第二次報告書で、追加対策に効果が認められないことや地下水管理システムの事実上の破綻を認めていました」

 昨年の都知事選の折、小池知事に移転見直し政策を“パク”られた宇都宮健児弁護士も豊洲移転問題のシンポジウム(8月26日)でこう怒りの声を上げた。

「知事に『移転見直しを頑張って下さい』と言って期待していたが、裏切られた。ただ戦いはこれから。辺野古のように仲卸業者が座り込みをすれば、移転中止に追い込める。都が無害化の約束を破ったのだから強制執行に対抗可能だ」

 移転慎重派だけでなく移転推進派も「一部が築地に戻って両市場が機能するはずがない」と小池知事の基本方針に納得していない。

 7月の都議選で都民ファーストの会が圧勝し、臨時都議会で追加対策工事の予算も通った。しかし、計画が進む保証は全くないと中澤氏は指摘する。

「来年6月までに工事が完了しても、無害化が達成できるわけではなく、安全宣言も出来ない。このことは『市場問題プロジェクトチームPT)』(座長・小島敏郎・東京都顧問)も、8月10日に出した第二次報告書の中で認めています。これでは、市場関係者の理解が得られるはずがない。科学的見地に基づく万全の対策実施や消費者等への説明と理解が必要と表明している農水省が中央卸売市場開設(豊洲新市場開設)を許可しない可能性もあります」

 市場関係者の不信感に拍車をかけたのが、豊洲市場で発覚したカビの大量発生だ。豊洲市場に新店舗を構えた業者はこう話す。

「都の発表後、すぐに豊洲市場に見に行きましたが、壁一面にカビが発生している状況でした」。

 都の担当者は「真摯に対応したい」と懸念払拭に躍起だが、水谷氏は「地下水の上に建物が立っている豊洲新市場には地下に湿度の供給源がある」と構造的欠陥がカビ大量発生の原因の可能性を指摘。

 水谷氏と共に知事に申入れをした畑明朗・日本環境学会元会長(元大阪市立大学大学院教授)も会見でこう強調した。

「カビにベンゼンや水銀などが付着している可能性がある。大阪の地下駐車場でも同じ現象が起き、有害物質が付着した。都は調査すべき。都がやらないのならば、民間が調査する必要がある」

 都が環境アセスメントの再実施をしないことに対しても無害化断念と同様、疑問の声が上がっている。

 かつて市場問題PTのメンバーだった森山高至氏(建築エコノミスト)は、先のシンポで次のように批判している。

「環境アセスメントの第一人者の原科幸彦・東工大名誉教授に協力を依頼、アセスを実施しないことを検証してもらおうと考えている。無理強いされてもいないのに、小池氏自身が築地市場解体・五輪用駐車場整備に積極的になったのは不可解」

 かつて市場問題PTのメンバーとして小池知事に協力してきた森山氏だが、都議選前にPTメンバーを辞め、中央区から立候補し、落選。今では、知事批判の急先鋒になっているのだ。

 一気に広がった反発を抑えるべく、小島顧問は市場関係者向け勉強会を開いて基本方針を説明、理解を得ようとしている。

 小池知事がどう対応していくのかが注目される。(横田一)