「#検察庁法改正案に抗議します」のハッシュタグがTwitter上で大流行し、大揺れだった安倍政権。小泉今日子さんら芸能人を中心にした反対世論に押され、安倍晋三首相は18日午後、今国会での検察庁法改正案の成立断念に追い込まれた。



 安倍首相は自民党の二階俊博幹事長と会談後、「国民の理解なしに前に進めることはできない」と検察庁法改正案を先送りする方針を官邸で表明した。自民党幹部がこう嘆く。

「新型コロナウイルス感染拡大で、不要不急の自粛を国民に呼び掛けていた安倍首相が矛盾することを国会でやらかした。国民に反発されても仕方ないだろう。安倍官邸は数の力を背景に強引に強行採決しようとし、撤回に追い込まれたんだから、後の政局に大きな影響を及ぼしそうだ。アベノマスクなど官邸の新型コロナウイルス対策は国民に不評を買っているしね」

 今年1月末に東京高検の黒川弘務検事長の定年延長を強引に閣議決定して以降、注目された検察庁法改正案。

「“官邸の守護神”と呼ばれ、これまで森友、加計問題など数々の安倍政権の疑惑を巧みに処理してきた黒川氏を何とか、検事総長の座につけたいという官邸の意向が強く働いた定年延長の閣議決定だった。それにお墨付きを与えようと今国会での検察庁法改正を成立させようとしていた」(前出の自民党幹部)

 法務省キャリア官僚によれば、最初に黒川氏に目をつけたのは、菅義偉官房長官だったという。

「黒川氏は一時期、完全に菅さんの右腕のような存在だった。会議を開くと、まったく関係ない黒川氏が菅さんと一緒に現れる。なぜ、黒川氏が同席するのか、と尋ねると菅さんが『彼はうちの法律のアドバイザー役だからいいんだ』などと説明し、右腕のように面倒をみていた。それで安倍首相の目にも留まった。しかし、法務官僚が関係ない会議に来ていたので、他の省庁の官僚からブーイングがすごかった。その上、黒川氏の定年延長を閣議決定でしょう。そんなえこひいきはあり得ないと思った。安倍政権の検察庁法改正案の断念は、ざまあみろですね」(法務省キャリア官僚)

 自民党幹部によると、検察庁法改正案の断念は当初、安倍官邸の頭にはなかったという。しかし、ツイッターの「#検察庁法改正案に抗議します」などで批判が高まるにつれて危機感を覚えたのが、公明党だった。

「検察庁法改正案について連日、支援者から電話やメールが届きました。『まさか検察庁法改正案に賛成したりしないでしょうね』『ツイッター見ていますか。検察庁法改正案を通したりしたら、次の選挙は応援しない』などの電話もあった。うちの幹部も『この法案を自民党の言う通り、賛成するととんでもないことになる』と焦っていた」(公明党の国会議員)

 そこで、安倍官邸に方針を変えさせようと公明党がすがったのが、二階俊博幹事長だったという。公明党とのパイプが太い二階幹事長が、山口那津男代表と安倍首相の会談をお膳立てし、コロナ対策で国民への給付金を条件付きで30万円から一律10万円に変更させたのは、記憶に新しい。

「安倍官邸は検察庁法改正でも当初、強気で強行採決も辞さない構えだった。だが、二階さんが公明党と先送りの方向で話をつけ、それを官邸の菅さんに真っ先に伝えた。菅さんはコロナ対策で干されるなど、安倍首相や側近の今井尚哉首相補佐官らと最近は関係が悪い。検察庁法改正でも興味を失っていた。二階さんに外堀を埋められ、安倍首相はこれ以上、無理はできないとあきらめたようだ」(前出の自民党幹部)

 自民党ベテラン議員によると、後援会で「検察庁法改正に賛成したら次の選挙で自民党に入れません」と訴える支援者が何人もいたという。

「党内でも検察庁法改正に賛成できないと訴える議員は結構、いました。安倍首相の求心力が落ちている背景には、自民党総裁の任期が来年秋に迫っていることもある。今国会の検察庁法改正案の成立断念で、安倍首相と二階さん、菅さんとの亀裂はより深まったことが露呈した。干されている菅さんは二階さんの後押しで巻き返しを狙っているようだ」

 検察庁改正法案は新たな政局の火種を残したようだ。(本誌取材班)
※週刊朝日オンライン限定記事