衆院議員の小沢一郎氏(国民民主党)は、次期首相の最有力である菅義偉官房長官、安倍政権の森友・加計問題、桜を見る会など数々の疑惑をどう見るのか。ジャーナリストの田原総一朗氏が聞いた。



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田原:自民党総裁選の行方は菅(義偉官房長官)さんでほぼ決まり。菅さんについてはどう思う?

小沢:菅さんは、僕と同期当選の小此木彦三郎さん(元建設相・故人)の秘書だったから、直接の付き合いはありませんでした。個人的にはあまり知らないのです。

田原:彼はいまの自民党では珍しく世襲議員ではない。高校卒業後に秋田から上京して、昼間働いて夜間の大学を出た。秘書や、横浜市議を経て47歳で初当選した。何より安倍さんの信頼が厚く、第2次政権発足以来7年8カ月、ずっと官房長官を務めた。相手としては手ごわい?

小沢:森友・加計問題、桜を見る会などの疑惑について、菅さんは「ご批判は当たらない」と繰り返してきました。公文書の隠蔽(いんぺい)や改ざんの実務的な指揮を執った人物です。それに、彼は大衆にアピールするタイプではないと思うんです。野党がしっかり結束できれば、十分に対抗できます。

田原:安倍さんの任期途中の辞任と新型コロナウイルスの流行を理由に、総裁選で全国一斉の党員投票をやらなかった。そのことに若手議員の不満が募っている。そのしっぺ返しは必ず来ると思う。

小沢:菅さんが出馬表明した時点で、自民党はもう根回しが済んでいます。これまでの数々のスキャンダルを闇に葬り去り、派閥の力学だけで総裁を決めてしまう談合政治のできあがりです。過去6度の国政選挙で自民党は全勝していて、確かに野党には政権の受け皿になれなかった責任があります。でも、それ以上に安倍・菅政権に対する国民の批判や不満のほうがはるかに大きくなっています。

田原:安倍さんが辞任表明したことに対する同情票で、いま自民党の支持率が上がっている。一方、野党合流が遅れている。菅さんは、選挙に勝てる今のうちに解散を打つ可能性がある。総選挙になった場合、小沢さんはどう勝負しようとしているのか。そこを聞きたい。

小沢:9月16日の首相指名後、すぐに国会を閉じて25日に再召集、冒頭解散という流れもささやかれています。ですから、僕は一日も早く新党を立ち上げて、党の体制づくりをしなければならないと思っているんです。選挙の候補者選びから候補者調整まで、3日や4日でできる話ではないですから。

田原:総選挙に向けて、自民党の中から消費税を争点にするという話も聞こえてくる。共産党は減税、国民民主党も減税。枝野(幸男・立憲民主党代表)さんも減税に言及した。

小沢:新党では必ず進言します。言わなければ勝てませんし、自民党に先を越されてはなりません。われわれの主張としては、減税に経済条項を導入することです。景気が悪くなったら税率を下げることができ、景気がよくなれば上げてもいいとする柔軟性を持った条項です。自民党も5%にするかは別にして、必ず言ってくるでしょう。

田原:税金と言えば、安倍政権には桜を見る会の疑惑が残っている。安倍首相が後援会関係者をどんどん招待したのは税金の私物化ではないか、と。

小沢:自分の後援会を招待するなんて、総理として非常識。見識がなさすぎます。

田原:疑惑はまだまだある。森友問題では決裁文書を改ざんした。あれは内閣人事局が国家公務員の人事を握ったことによる弊害ではないか。

小沢:人事局そのものが悪いとは思っていません。官僚機構の中から人事が上がってきて、それがおかしい、あるいは政策と反するような人事であれば、人事局で修正すればいい。問題は権限を乱用して、好きな人物ばかりを集めたことです。権力者が恣意(しい)的に使おうとすれば、官僚はその顔色をうかがうようになります。

田原:そして特大のスキャンダルは、前法務大臣の河井克行氏とその妻・案里氏の金のバラマキだ。あんなものは田中角栄以前の話。参議院の広島選挙区は自民党の溝手顕正氏と野党1人で安定していたのに、溝手氏が数年前に安倍首相を「過去の人」と批判したことで、あんなやつは落とそうということになった。そして、河井氏はゴマすりのために案里氏を出した。

小沢:僕は2010年に2人区には全部2人出した。2人出すこと自体は悪くないと思います。ただ、今回は総理個人の私怨が理由になっているでしょう。

田原:選挙資金は溝手氏に1500万円で、案里氏には1億5千万円。

小沢:総理の肝いりで、片方にだけ10倍の金を出すというのはありえない。しかも、全額、党の金だと。二階(俊博)幹事長が了承して出したのかはわかりませんが、誰かがサインしなければ金は出せない。

田原:安倍首相や幹部が一番恐れているのはそこ。検察がその気になれば……。

小沢:やれるんでしょう。自民党本部を捜査すればいいんだから。

田原:問題は広島の検察が自民党本部まで行く度胸があるかどうか。

小沢:なんだかんだ言っても自民党は経理はきちんとしているはずです。献金もありますが、メインは政党交付金ですから、それをいい加減にというわけにはいかない。だから自民党の正式な経理では出ていないんじゃないですか? 10倍なんてバカな話はないですから。

>>【後編/小沢一郎「すぐの選挙でも自民党に勝てる」3度目の政権交代に挑む】へ続く

(構成/本誌・秦正理、亀井洋志)

※週刊朝日  2020年9月18日号より抜粋