自民党総裁選に注目が集まる中、新生立憲民主党は存在感を示せないでいる。だが14回当選、選挙で負け知らずの中村喜四郎議員は全く違う構図が見えると語る。その戦略は──。AERA 2020年9月21日号の記事を紹介する。



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 枝野幸男氏(56)を代表とする新生立憲民主党が、9月15日に誕生する。149人を擁する野党第1党だ。

 この新党に中村喜四郎氏(71)が参加した。建設相などを務め「将来の首相候補」とされるも、1994年にゼネコン汚職で逮捕。同年自民党を離党して以来、26年ぶりの主要政党への復帰となる。14回当選、かつて自民党総務局長として選挙実務を仕切った男が、今度は「野党共闘」の裏で汗をかく。「ダメな民主党に戻っただけ」との声もあるが、今度の新党の「違い」は、自民党から密かに警戒されるこの男の存在かもしれない。新党の展望、菅政権との戦い方を聞いた。

──菅義偉内閣が16日にスタートします。菅政権の行方をどう見ますか?

 安倍政権の「負の遺産」も背負い込むことになる。今までは、安倍さんを神輿に乗せ、大参謀として指揮をとる凄腕の官房長官だった。だから派閥も雪崩をうった。しかし、名宰相になるかと言えば、全く別問題。安倍政権では、最大派閥細田派が足もとを支え、二階俊博幹事長、麻生太郎副総理をはじめ各派閥の利害関係がそれなりに均衡を保ってきた。しかし菅さんは無派閥。均衡が崩れたとき、誰が抑えますかね。

──早くも「早期解散」論が広がっています。

 安倍晋三首相の解散・総選挙は、国民に何を問いたいのかわからない場合がほとんどだった。3年前は「国難突破」解散、その前は「消費税を上げない」解散。菅さんは何を争点とするか。迎え撃つ野党として、国民に問う争点を明確にしなければならない。

 自民党の議席は大幅に後退しかねない。20か30議席減らした場合、与党の組み替えなど、政局が一気に流動化する可能性もある。選挙で言えば、野党にとって石破茂さんが一番手強い。安倍さんのアンチテーゼとしての存在に振ってくる「懐の深さ」がかつての自民党にはあった。田中角栄首相退陣後、国民の批判をかわすため、クリーンイメージの三木武夫首相を押し出すなど、絶妙なバランス感覚があった。今回は継承内閣。野党としては攻めやすい。

──自民党内の空気は全く違います。立憲民主党の合流選挙が告示される前ではありますが、朝日新聞の世論調査(9月2、3日)では、「誰が首相にふさわしいか」との質問で菅さんが38%(前回3%)。自民党の政党支持率も40%(同30%)に上がり、立憲民主党は3%(同5%)存在感がありません。

 地元を歩くと、有権者の声はマスコミの世論調査とは全く違いますがね。安倍政権の公文書改ざんや新型コロナ対策の失敗に、厳しい批判が多い。その調査結果は選挙まで続くか。急激に上がった数字は急激に下がることもある。

──中村さんは「野党が共闘すれば小選挙区100議席も可能」と公言しています。その戦略は?

 3年前は、野党が立憲民主党と希望の党に分かれたが、それでも289の小選挙区のうち59の選挙区で野党(系)候補が当選。当時の希望と立憲、共産、社民4党の票を単純に合わせると、84の選挙区で、野党が自民・公明の与党を上回った。今度の総選挙は、維新も与党入りする可能性があるので、3年前の比例票をこの3党で合わせると2892万票。一方で野党4党を合わせると2611万票。その差はわずか281万票、9.8%の差しかない。共産党も合わせた4党で選挙をやると、全く違う構図が浮上する。小選挙区で100議席をとり、比例区も合わせて200議席台にのせれば、全465議席の衆院の過半数が見えてくる。

──共産党と本当に連携できるかという疑問もあります。

 野党4党で話を重ねるうちに、共産党は変わってきました。「野党共闘で行くしかない」との方向へ舵を切った。これまで新潟、埼玉、高知、東京の4都県の知事選を、4野党が協力して戦い、「1勝3敗」。うまくいかない部分もあるが、各党とも手応えは感じている。私が呼びかけ、4党の党首にお酒も入れた懇談会を4〜5回、幹事長・書記長や政調会長懇談も合わせると8〜9回はやったかな。

 ただし、政権が射程に入ってきたら、憲法、外交、防衛問題などを突き詰めることになる。責任ある政権ができないとなれば分かれるしかないが、現段階で共産党を排除する理由は全くない。

(構成/朝日新聞社・菅沼栄一郎)

※AERA 2020年9月21日号より抜粋