「桜を見る会」をめぐり東京地検特捜部が安倍晋三前首相の公設第一秘書らを任意で事情聴取した問題が波紋を投げかけている。公明党の山口那津男代表は11月24日の会見で、「本人自身の説明責任はある」との考えを示した。



 一方、安倍前首相は同日、「告発を受けて捜査が行われていると承知している。全面的に協力していく。それ以上のことをお答えすることは控えたい」と国会内で記者団に答えた。

 捜査が行われているのは、安倍前首相の政治団体「安倍晋三後援会」が東京都内のホテルで主催していた「桜を見る会」前夜祭での資金の流れだ。

 前夜祭は「桜を見る会」の前日に、安倍氏の選挙区・衆院山口4区の有権者などを対象に開催された。2015年から2019年の5年間で、会場となったホテルへの支払い総額が約2300万円。一方、参加者から徴収していた総額は約1400万円とされ、約900万円の差額があった。

 読売新聞、NHKなどが24日までに差額分に当たる会費800万円以上を安倍氏側が補填していたことを示す領収書の存在をスクープするなど、疑惑がここに来て再燃している。

 東京地検特捜部はこれまで安倍氏の公設秘書を含む約20人の関係者から、任意で事情聴取。ホテル側からも会計書類など、資料の提供を受けているという。安倍氏側が800万円を負担していたとなると、どんな罪となるのか。

 元東京地検特捜部の郷原信郎弁護士はこういう。

「地元の有権者なら公職選挙法違反の買収という線もあるが、選挙と今回は直接、関連性がないようだ。ならば、政治資金収支報告書に800万円の負担分を正しく記載していなかった政治資金規正法の虚偽記載なら立件できるのではないか」

 安倍前首相の後援者によると、1か月ほど前から事情聴取が始まったという。

「安倍さんが退陣してすぐ事情聴取でしょう。検察もわかりやすいことをするなと地元で噂になっていた。しかし、安倍さんの後援会幹部は『告発された以上、検察も仕事だからね。立件されないから大丈夫だよ』などと話していた」(後援者の1人)

 安倍前首相の立件の可能性は薄いのか。捜査関係者はこう解説する。

「検察が告発を受けて独自捜査する場合、20人も調べるというのは、それなりに事件に脈があるということ。立件できる可能性がある」

 安倍前首相は国会で一貫して、「安倍事務所の補填はない」「後援会の収入や支出もなかった」などと説明していた。

 補てんが事実ならその説明は真っ赤な嘘ということになる。検察の捜査次第では、政局に大きな影響を与えかねない。これまで政権が頼ってきた“官邸の守護神”と呼ばれた元東京高検検事長、黒川弘務氏は5月に賭け麻雀問題で失脚。自民党幹部が不安な胸の内をこうぼやく。

「黒川氏がいれば、こんな面倒なことにはならなかったと思うよ。今になって黒川氏の存在がいかに大きなものだったのか痛感するね。菅首相だって黒川氏に頼って政権運営してきた。心配でたまらないと思うな」

 もう一つ、注目されるのは、安倍前首相への事情聴取だ。前夜祭の主催は「安倍晋三後援会」で、その代表は安倍前首相の公設第一秘書だ。

「公設第一秘書から安倍氏が関与という証言があれば、そりゃすぐに事情聴取となるでしょう。安倍さんには秘書の監督責任、政治資金収支報告書をチェックして正しいものか把握する義務はある。それについて事情を聞くということはあり得る」(前出の捜査関係者)
また野党・立憲民主党の幹部はこう話す。

「安倍氏の国会答弁はウソだったことが明白だ。事件としても問題だが、国会で総理がウソを堂々とついていたというのは、とんでもないこと。今度こそ国会で証人喚問すべきという声もある。菅首相も官房長官として、安倍氏のウソに加担していたかもしれません。同罪ですよ」

 前出の自民党の幹部はこう話した。

「これまで黒川元高検検事長を通じて、検察を抑え込みすぎた結果かもしれない。その重しがなくなったとばかりに、検察が一気に政治家へ向かってくることもありうる。安倍さんを事情聴取、事件を立件となれば、官房長官だった菅首相の責任も問われる。本当にまずいよ」

(本誌取材班)

※週刊朝日オンライン限定記事