サウナを市役所に持ち込むなどした問題をめぐり、記者会見で4月26日、辞任表明した大阪府池田市の冨田裕樹市長(44)。27日の臨時市議会で不信任案が可決される公算が高まり、去就が注目されていた。

 冨田氏は記者会見の冒頭、神妙な面持ちでこう語った。

「サウナ問題によって世間をお騒がせして、市民に心配と迷惑をかけ、
市政を停滞させたことを心よりお詫び申しあげます。一連の騒動のけじめと責任とるために市長を辞職させていただきます」

 しかし、続きがあった。

「現在はコロナ対策に万全を期すべき。よって辞職の時期は高齢者の命と安全が担保された時、高齢者にワクチン接種が行き届いた時期に辞任します」

 辞職の時期を明言しなかったことから、池田市役所の中でも「本当に辞任するのか」と疑問視する声が上がっている。

 家庭用サウナだけでなく、ベッド、冷蔵庫、キャンプ用品、エアロバイクなど数々の私物を持ち込み、市役所に泊まり込んでいた冨田氏。その動画や写真が大きく報じられ、市議会では百条委員会が設置され、不適切な庁舎使用やパワハラなどが調査された。その結果、「市長としての資質を著しく欠く。不信任相当」とされ、冨田氏の答弁が「虚偽にあたる。刑事告発相当」とまで結論づけられた。

 辞意表明は不信任決議案の可決の可能性が高かった市議会へのけん制ではないか、という指摘も記者会見で出ていた。

「そうみられるタイミングだが、混乱なく市政を前へ進めるためです」と言い、不信任決議案について市議会へこう要望した。

「不信任決議案が可決されると選挙になる。ワクチン接種が完了していない高齢者が危険だ。市議会に副市長を通じて(不信任決議案の回避を)
申し入れる」

「(可決されれば、)私はやめることになる。その場合、市長選挙になります。市長と市議会の選挙を別々にやると、費用が余分にかかります」

 そして可決されれば、市議会を解散し、市長選挙とのダブル選挙にし、冨田氏自身が出馬する意向と言及した。一方で冨田氏は高齢者のワクチン接種がまだ終わっていない段階で選挙を実施すれば、リスクがあるのですぐに辞職はしないとも主張した。

 高齢者へ2回のワクチン接種は、国が7月末までと見通しを示している。しかし、ワクチンは世界的に不足しており、日本に十分な供給がなされるか不透明。本当に7月末で接種が完了するか、仮定でしかない。

「国がワクチン接種の見通しを伸ばす度に、冨田氏も市長の辞職を先延ばしできる。自分ではなく、国の責任で辞任しないと言い張れる。実に巧妙な延命策。その間、冨田氏には給料が支払われますからね。冨田氏の月給の額面は98万円ですが30%削減を公約としており、実際には月に70万円前後。仮に8月までワクチン接種がずれ込めば、4ヵ月間で280万円。高齢者のワクチン接種など、コロナ対策の仕事をすると冨田氏は言うが、辞めることがわかってる市長についていく市職員は、ほとんどいません。辞職と言いながら、すぐにやめたくないのはお金の事情もあるのではないか」(池田市の幹部職員)

 4月25日は3つの国政選挙と名古屋市長選挙が実施されたが、選挙をすることでワクチン接種ができず、高齢者が危険に晒されたという話は聞いたことがない。

 早期の市長辞職、市議会を解散巡って、政党、池田市議会も動き出した。百条委員会で冨田氏に反旗を翻し、秘密保持契約書にサインを強要された話を涙しながら証言した池田市職員に市長選、市議選出馬の「待望論」もあり、冨田包囲網が着々と進んでいる。池田市民からは「冨田氏はもういらん。サウナ市長、恥ずかしい」など批判が多かった。

 冨田氏は日本維新の会の足立康史衆院議員の秘書で、池田市長選で勝利した時も、大阪維新の会から出馬している。だが、冨田氏の辞職表明を受けて、大阪維新の会代表でもある大阪府の吉村洋文知事はこう切り捨てた。

「すでに離党しているが、大阪維新の会公認で我々は応援した。また(池田市の)百条委員会でも問題と指摘された。公私混同で辞職するという本人の判断を尊重したい。(大阪維新の会が)公認した責任はあります。そして池田市民の皆様に深くお詫び申し上げたい」

 立つ鳥跡を濁さず、となることを祈るばかりだ。(今西憲之)