ジャーナリストの田原総一朗氏は、日米同盟のあり方を見直す転換期にあると指摘する



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 今回は改めて日米同盟のあり方について記したいと思う。4月16日にワシントンで、バイデン米大統領と菅義偉首相との日米首脳会談が行われた。バイデン氏は、新型コロナウイルスの感染警戒が高まるなか、初の対面式の会談相手に日本の首相を選んだのである。バイデン氏は日本に大きな期待を抱いていたわけだ。

 共同声明には「台湾」が明記され、両政府関係者は、「台湾有事」が現実味を帯びて語られたと漏らしている。

 米国では、中国が6年以内に台湾に武力攻撃をかけるという危惧が強まっている。そこでバイデン氏は、その場合に米国は当然、台湾を守るために戦わなければならないが、そのとき日本はどうするか、と問うたようだ。対して菅首相は、日米は同盟関係にあり、台湾有事は日本有事である、と答えた。

「だが、米中の衝突を起こさないためにどうすればよいのかを考えることが最重要であり、日本の役割はそこにある」と菅首相は強く言い、バイデン氏は「そのとおりで、そこを日本に期待したい」と繰り返し述べたようだ。

 これは、これまでにない重要な役割が日本に課されたことになる。

 これまでの日米同盟は、いわば受け身の同盟で、日本はカネの負担など、米国の言うことを聞いておけばよい、という同盟であった。

 というのは、第2次大戦後、米国は世界で最も強く豊かな国で、世界の平和・秩序を守る役割は、米国民のプライドであり、自信であり、使命だと捉えていたからだ。

 ところが、米国の国力が大きく低下し、オバマ元大統領は「世界の警察をやめる」と言い、トランプ前大統領は「世界のことはどうでもよい。米国第一主義だ」と唱えた。米国は「パックス・アメリカーナ(米国による世界平和)」を事実上、放棄したのである。

 だから、安倍前政権末期に、私は安倍首相に「これからは受け身ではなく、積極的な日米同盟に踏み出さなければならないのではないか」と訴え、安倍首相は本格的に取り組もうとした。だが、体調が悪化して辞任せざるを得なくなった。私は菅首相、二階俊博自民党幹事長と相談して、中谷元元防衛相や長島昭久元防衛副大臣、そして細谷雄一慶応大教授らと勉強会を作り、月1回、新しい日米同盟のあり方を論議してきたのである。

 そして、菅首相の訪米直前の4月9日、首相官邸で細谷氏と2人で菅首相に面会した。「これからは主体的な日米同盟に変わらなければいけない」と言うと、「よくわかっている。そうせざるを得ないだろう」と、菅首相は前向きの答え方をした。

 さらに、(1)民主主義国家間の連携(2)同盟関係の強化(3)インド太平洋地域への関与拡大──を挙げ、「日米同盟がその三つのすべてにおいて鍵となる」と記した提言書を渡し、主体的な同盟への転機だと訴え、菅首相が目指す社会像「自助・共助・公助」を外交戦略に取り入れたらどうかとも提案した。

 平和のために日本が主体的に動いていく「自助」が必要だと言うと、菅首相は「反対も相当あると思うが、やらなければいけない」と、強い口調で答えた。

 受け身の同盟関係から積極的同盟に転換すると、菅首相が世界にはっきりと示したのが、今回の日米首脳会談だったのである。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

※週刊朝日  2021年6月18日号