9月17日の自民党総裁選告示を目前に控え、大波乱があった。

 これまで出馬は「白紙」としてきた石破茂元幹事長が9月15日、記者会見し、不出馬を表明した。

「自民党の改革を志す勢力が、二分せずに一致すべきだ」と河野太郎ワクチン担当相の支援を打ち出した。

 一方で、自ら率いる石破グループ「水月会」のメンバーには、「誰を支援するのか、それぞれの議員で考えるべき。グループとして拘束しない」と述べ、自主投票とする意向を示した。石破氏の不出馬で総裁選の候補者として急浮上したのが、野田聖子幹事長代行だ。

 推薦人に確保にメドがつき、4番目の候補者として明日にも出馬表明をするという。

 過去3度の総裁選で推薦人が足らずに断念した野田氏だが、今回は「これも神風かもしれません」(野田氏と近い衆院議員)という。

「石破氏が自主投票としたことでグループはフリーハンド。石破氏が出馬しないなら、政治的な共通点の多い野田氏を支援したい、推薦人になってもいい、という議員が出てきました。にわかに野田氏の推薦人集めが現実的になってきたのです。これまで石破氏に出馬を進めていた二階派の一部も野田氏の推薦人に応じると聞いています」(石破グループに属する国会議員)

 石破氏が不出馬を決めたことで、野田氏への「流れ」ができたというのだ。野田氏の推薦人集めは、過去の総裁選のときと同様に浜田靖一元防衛相らが中心いなっているという。

 野田氏が参戦すれば、河野氏、岸田文雄元外相、高市早苗前総務相に続いて4人目の候補となる。

 安倍晋三前首相、菅義偉首相の時、真っ先に支援を打ち出し、勝ち馬に乗ってきた二階派だが、今回は岸田氏が党役員改革案という「矢」を二階俊博幹事長に放ったため、退任を迫られ、迷走が続いた。二階派幹部はこう話す。

「石破氏がうちの要請には応じず、不出馬を決めました。河野氏に乗ろうという意見も多くあった。しかし、二階幹事長に引導を渡そうとした岸田氏以外ならこの際、誰でもいいんじゃないかという意見もある」

 一方で、高市氏の支持にも一部が回ればいいという意見もあるという。

「つまり、全方位外交ですよ。そこへ野田氏の推薦人確保があと数人というところまでになったという話が届いた。野田氏を幹事長代行に抜擢していたのは二階氏で、ずっと相談に乗ってきた関係上、出馬は大歓迎です。おそらく推薦人を出すのではないか」(同前)

 さらに竹下派の一部も野田氏へ協力する方向だという。この動きに、神経をとがらせるのは、河野氏の陣営だ。河野氏は昨日、石破氏と会談して協力を求めている。

「安倍前首相や派閥のボス、麻生太郎副総理兼財務相に支援を求めている河野氏が、2人と敵対してきた石破氏に協力要請したのは大きなバクチだった。だが、党員に人気がある石破氏はとりわけ、地方の党員票に強い。石破氏が不出馬なら、その党員票を取り込み、圧勝してその勢いで議員票もという戦略を描いていた。だが、野田氏が出馬すれば、正直、痛い。高市氏と女性候補が2人というのは、総裁選では初になる。河野氏が取れそうだった票が2人に流れてしまう可能性が高い。戦略通りにいかないのではないかと心配する声がでている」(河野氏支援の国会議員)

 もう一人の有力候補、岸田派の国会議員は野田氏の出馬を歓迎している。

「野田氏の出馬により、議員票で河野氏に勝てる可能性がでてきた。党員票でも思ったほど、河野氏が優勢というわけではない。例えば、大阪では日本維新の会が強いでしょう。河野氏が菅政権継承なら官邸と維新とのパイプも続き、否決された大阪都構想をもう一度と言い出しかねず、拒否反応も強い。そこへ野田氏が名乗りを上げたとなれば、党員票がさらに割れる。河野氏がダントツではなくなるので、うちにチャンスがあるかもしれない」(同前)

 岸田派は党員票383票の行方についてこう推測しているという。

「河野氏が160、岸田氏が120、高市氏と野田氏を合わせて100と予測しています。あるメディアが自民党員を対象に世論調査した内容では、次期首相は河野氏が25%、石破氏が21%、岸田氏が19%、高市氏が16%、野田氏が3%でした。世論調査の上位の1番の河野氏と2番の石破氏が手を組めば、普通は勝ちますよ。河野氏かと私も思った。しかし、党内の様子から一筋縄ではいかない感じがする。河野氏と岸田氏でかなり激戦になるという空気があります。野田氏は推薦人20人をよく集めたと思う。ひいき目ももちろん、ありますが、野田氏の出馬で、岸田氏へ有利な方に働いたのかな」(自民党幹部)

 河野氏圧勝ムードから一転、勝負の行方は混とんとしてきた。

(AERAdot.編集部 今西憲之)