9月29日に投開票の自民党総裁選は折り返し点を迎え、終盤戦に突入した。河野太郎ワクチン担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行が火花を散らす。メディア各社では投票権がある自民党の党員に対しての世論調査も実施された。

 集計された数字をみると、河野氏がダブルスコアで岸田氏を引き離し、次いで高市氏、野田氏という順番だ。この数字を見て、ご機嫌なのが二階俊博幹事長だという。

「河野氏が大差リードと聞かされて『これでいい』『河野でいける』と嬉しそうに二階氏は話しています。キングメーカーが続くと夢見ているんでしょうかね」(二階派の国会議員)

 二階派は今回の総裁選で派閥で特定候補者は推さずに自主投票となった

 推薦人を出したのは、河野氏に2人、高市氏へ3人、野田氏には8人だ。出馬会見で党役員人事の改革案を発表し「二階外し」に打って出た岸田氏にはゼロというわかりやすい対応だ。

 自民党の幹事長になって5年以上、在任記録を更新し続ける二階氏。菅義偉首相が辞めると同時に、二階氏も幹事長の座から降りることになる。二階氏の存在は一気に小さくなっているというのだ。

 野田氏に8人もの推薦人を出したのは、推薦人集めに汗をかいた二階派の幹部・鶴保庸介参院議員が野田氏の元夫という背景もある。しかし、あまりに突出している。

「野田氏に推薦人を多く出したことで、高市氏を推す安倍前首相に女性票が分散すると不評を買っています。二階氏は河野氏が優勢と喜んでいるのですが、派閥内ではあまり反応がありません。総裁選後、二階氏は幹事長という大きな権力を手放すわけで、派閥内では2人寄れば、今後は誰が派閥を仕切るのか、という話題ばかりですよ」(前出・二階派の国会議員)

 二階氏には派閥内でも冷たい風が吹きつつある。それは二階氏の地元、衆院和歌山3区でも同様だ。10月に衆院議員の任期は満了となり、総選挙が行われる。

 

 

 今回は大島理森衆院議長や二階派でもある伊吹文明元衆院議長、塩崎恭久元官房長官など大物が次々と高齢を理由に引退を表明している。だが、82歳の二階氏はどこ吹く風。次期衆院選への出馬意向は変わらないという。和歌山3区の地方議員は地元の「二階離れ」をこう語る。

「二階先生は昔から口癖のように『副総裁とか、そういうのはやらん』と言っていた。要するに名誉職はイヤ、幹事長のように権力がないとダメということです。次、誰が首相になっても二階先生が幹事長になることはない。引退にはいいタイミングと地元ではささやかれている」

 和歌山3区は「一票の格差」問題で、いずれ選挙区が2つになり、定数減となる公算が大きい。そうなれば、選挙区が広くなり、より幅広い活動が必要になってくる。和歌山3区では圧倒的な強さを誇る二階氏も、油断できない情勢だ。

 二階氏の地元、御坊市の市長選では16年に二階氏の長男が立候補。二階氏の威光もあって小泉進次郎環境相まで応援にやってきたが、大差で敗れた。この敗北が二階氏の後継問題に大きな影響を与えているという。

「今の感じでは二階先生の秘書の三男が後継でしょう。しかし、二階後援会を地元で仕切っているのは長男で、選挙に出たがっている。二階先生もなかなか、後継を決めることができない感じですよ」(前出・地方議員)

 また、参院和歌山選挙区には衆院への転出が噂される世耕弘成・自民党参院幹事長がいる。

「世耕氏は参院のライバル、林芳正氏が衆院山口3区に転出することになり、いろいろと考えることもあるようです。無派閥の高市氏が総裁選に出馬し、所属する派閥・清和会を率いる安倍晋三前首相が熱心に推している状況もある。世耕氏がもともと強い地域は和歌山3区です。二階氏本人がいる間は我慢するでしょうが、世襲で息子が出るとなれば、考えるでしょう。二階氏も心配で仕方ないでしょう。また地元では『陳情は世耕氏に』という二階離れの流れになりつつありますね」(自民党幹部)

 総裁選でリードしている河野氏がそのまま総裁、首相になった際、二階氏は菅義偉首相の時と同様に、キングメーカーとして振る舞えるのか?河野陣営の国会議員は冷淡な評価だ。

「二階派の支援はありがたいが、寝技師、権謀術数的な派閥で河野氏のカラーとは相いれない。推薦人を出してもらっているので、無下にできないが、菅首相の継承と言っても、二階派を厚遇とはいかないでしょう。キングメーカーもあり得ない。それに野田氏へ推薦人を8人も出してあまりに風見鶏じゃないですか。党員票が分散するので、河野氏の形勢が不利になった。うちが負けたら、勝つのは岸田氏じゃないのかな。二階派はいったい、何をやりたいのか…」

 安倍前首相、菅首相と長く勝ち馬に乗り続け、キングメーカーとして権勢を振るってきた二階氏。だが、今回は永田町、地元で強烈な逆風にさらされているようだ。総裁選後、新たなキングメーカーとして誰が君臨するのか。(AERAdot.編集部 今西憲之)