ジャーナリストの田原総一朗氏は、衆院選の日程が当初の予測より早まった理由を指摘する。

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 10月4日、岸田文雄新政権が発足した。

 自民党総裁選では、岸田文雄、高市早苗、河野太郎、野田聖子の4氏が出馬を表明。総裁選前の段階で自民党の多くの国会議員たちが、菅義偉首相(当時)の下では秋の衆院選で落選する可能性が高い、と大変な危機感を抱いていた。

 8月中旬までは安倍晋三元首相と麻生太郎前副総理も、菅首相の続投でよい、と考えていたのはこれまで書いてきたとおりである。

 ところが、それぞれの派閥の国会議員たちが、菅首相の下では戦えない、何としても辞めさせてほしい、と強く求めた。そのため、両者とも考え方を改めざるを得なくなったのだ。

 総裁選では世論調査でずば抜けて支持率が高かった河野氏が伸び悩み、何と1度目の投票でも、岸田氏に敗れて2位であった。しかも、議員票では高市氏にも敗れて3位でしかなかった。

 どうして、こういう結果になったのだろうか。

 何よりの要因は、小選挙区制になって、党の執行部に公認されないと当選できなくなったことだ。それが20年以上にも及んでいるので、議員や党員たちの多くが、権力者である安倍元首相に逆らうのを恐れたのであろう。菅前首相についても、安倍氏がポスト安倍は菅だと決めて、各派閥の領袖(りょうしゅう)たちがそれに従ったのであって、今回もこのパターンで決まったと見ている。

 岸田政権の人事を見ると、まず幹事長に甘利明氏が決まった。当時の安倍首相が辞任して、菅首相になったとき、何も決まっていない段階で、「幹事長は誰がよいか」と安倍氏に問うと、すかさず甘利氏の名前が出た。そして、官房長官に「河野氏はどうか」と問うと、「それは反対だ」と強く答えた。河野氏が脱原発派だからである。

 そして、官房長官には松野博一氏、原発などエネルギー政策を所管する経済産業相には萩生田光一氏と、いずれも安倍氏が強く推す人物が任命された。

  衆院は14日に解散、31日に投開票と決まった。当初の予測から選挙の時期を早めたのには、二つ理由があると考えている。

 一つは、新型コロナウイルスの感染者が減っている間に行いたいという思惑があるからだろう。11月下旬には第6波の到来によって、感染者は再び上昇傾向に転じるとも言われている。そうなれば、いまだコロナ対策への解を見いだせていない政権は追及される。

 そして二つ目は、コロナ対策を含め、国会で野党に追及する時間を与えるのが嫌だからであろう。森友・加計疑惑の再調査問題や、甘利幹事長の金銭授受疑惑などスキャンダルは山積している。

 こうした選挙日程で、野党はどれほど議席を増やせるのだろうか。菅政権下では現有議席から70議席減との予測があったが、今回はそこまではいかずとも30議席前後減らすのではないかと予想している。菅政権末期は支持率が20%台だったが、岸田政権は5割を切るほどと多少持ち直しているからだ。

 しかし、発足直後の支持率としては予想以上に低く、党内の危機感は強いはずだ。短い期間で大きく支持を伸ばすことは考えづらく、となれば選挙が早まるのは必然だろう。野党に与えられた時間は多くない。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

※週刊朝日  2021年10月22日号