ジャーナリストの田原総一朗氏は、ウクライナ侵攻が食糧に与える問題について言及する。

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 ロシアによるウクライナ侵攻は、世界の食糧事情に甚大な影響を及ぼしている。穀物の一大産地であるウクライナとロシアは、世界の小麦輸出量の3割を占めており、国際相場が急騰しているのである。

 日本の食卓への影響は、具体的にどうなっているのか。

 日経新聞(5月31日付)によれば、食用油やマヨネーズの店頭価格は昨年から1割以上上昇し、今年6月からは即席麺や調味料、アイスクリームなどが値上げ。「値上げラッシュ」となる。賃金上昇が乏しい中で値上げが進めば、消費意欲の停滞を生む可能性もあると指摘されている。

 さらに日経新聞では、全国のスーパー約470店の販売データを集める日経POS(販売時点情報管理)情報で、昨年にメーカーが値上げを表明した商品の21年1月の平均価格を100として指数化し、その推移を分析している。

 上昇が目立ったのは、食用油やマヨネーズで、22年4月の平均価格は21年1月と比べて、食用油で14%、マヨネーズも13%ほど上昇。大豆油などの国際相場の高騰や物流費の上昇などを背景に、メーカー側が複数回の値上げを表明してきた品目が目立つ。原材料が高止まりし、メーカーが強い姿勢で要請していることが店頭価格に反映されているようだ。

 7月以降も値上げは続き、山崎製パンは菓子パンや食パン計141品目を値上げ。1月に次ぐ今年2度目の値上げに踏み切る。秋にはビールや清涼飲料の大手が価格を引き上げる。帝国データバンクの調査によると、6月以降に食品メーカーが値上げを予定している品目は3615品目に上る。22年中に値上げする食品は1万品目を超えるそうだ。

 内閣府がまとめた消費者心理を表す消費者態度指数(2人以上の世帯、季節調整値)は3月まで3カ月続けて前月を下回り、4月も33.0前月比0.2ポイントの上昇にとどまった。

 ここまでは朝日新聞や日経新聞を参考に記した。

 私は1970年代のオイルショックも経験したが、当時は一般の人間には詳しい情報がつかめず、混乱も起きた。今はSNSなどで多くの情報に触れられるが、その分、何が正しいのかの見極めが難しい。冷静に注視することが大事だと感じている。

 ウクライナ戦争が続くことで心配なのは物価上昇だけではない。

 世界の専門家たちはウクライナ戦争が秋以後も続けば、多くの途上国が間違いなく飢餓に襲われることになる、と捉えている。

 とすれば、何よりも重要なことは、早く戦争を終わらせることだ。

 それができるのはプーチン大統領とゼレンスキー大統領の二人しかいないと言い切る専門家が少なくない。しかし私は、プーチン氏もゼレンスキー氏も停戦に持ち込むことはできないと見ている。両者を停戦させるような状況に誘導できるのは、バイデン米大統領だ。

 だが、バイデン氏の最近の言動は、停戦への誘導ではなく、まるで米国のためにゼレンスキー氏をロシアと戦わせているようにさえ受け取れる。当初のウクライナ戦争に対する慎重な発言が米国民に嫌われ、だから支持率が低い、という自信のなさがあるかもしれないが、モスクワに飛び、プーチン氏と対面での交渉をすべきである。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

※週刊朝日  2022年6月17日号