ジャーナリストの田原総一朗氏は、閣議決定された岸田政権の「骨太の方針」について、問題点を指摘する。

*  *  *

 岸田文雄内閣が7日、今後の経済財政運営の指針である「骨太の方針」を閣議決定した。

 まず、目につくのは防衛力の強化だろう。ウクライナ情勢などを踏まえ、「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」と明記した。

 朝日新聞(6月8日付)によれば、5月の日米首脳会談で、岸田首相が「日本の防衛力を抜本的に強化し、防衛費の相当な増額を確保する決意」を表明したことが、党内の議論に拍車をかけたとされ、外務省幹部は「首脳会談で『相当な増額』を打ち出したのは首相の判断だ」と打ち明けたという。

 一定の制限がかけられる他の予算とは異なり、防衛費は例外扱いで拡大していく可能性がある。

 また、経済政策について岸田首相は、経済財政諮問会議と新しい資本主義実現会議の合同会議で、「成長と分配の好循環を実現するための政策の全体像を示した」「参院選後に方策を具体化する」と話した。成長戦略である「新しい資本主義」実現のため、人への投資拡大を目指し、3年間で4千億円規模の予算を投じることを盛り込み、最低賃金を千円以上に引き上げることや、「資産所得倍増プラン」を打ち出した。個人の金融資産を貯蓄から投資へ向かわせるのが狙いである。少額投資非課税制度(NISA)の非課税枠の拡充、個人型確定拠出年金(iDeCo)の年齢制限の緩和などを進める計画で、年末までに具体化、策定する。

 財政健全化では、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標について、2025年度の年限の記載を削除しており、「財政健全化の旗は降ろさない」としながらも、財政再建は後退している印象だ。

 7月の参院選をにらんでか、「骨太の方針」に中身はまるでない。

 財源の確保についてはあいまいな表現に終始し、岸田首相がことあるごとに表明してきた「分配」についての具体的な政策はほとんど示されず、国民の関心事でもある格差是正が期待できるような内容にはなっていない。国民にとって耳ざわりのよい言葉を並べているだけではないのか。

 私は先日、前経済再生担当相の西村康稔氏と会って、「骨太の方針」では経済成長は実現できないのではないか、と不満をぶつけた。

 12年に第2次安倍晋三内閣がスタートしたとき、安倍首相は日銀の黒田東彦総裁と組んで、異次元の金融緩和と思い切った財政出動によって経済成長を実現させると意気込んでいた。だが、18年に3選した後、まったく経済成長ができていないことを知って、西村氏を担当相に据え、齋藤健氏、村井英樹氏らをキーパーソンにして、日本の産業構造の抜本的改革を図ろうとした。日本的経営の基本である年功序列や終身雇用の見直しなど、経営者や政治家たちの意識改革が必要と考えたのである。

 しかし、安倍首相は途中で辞任し、去年4月に菅義偉首相にこの構想の実現を訴えたのだが、菅首相は「現在、私はコロナ問題で精いっぱいで、コロナが一段落したら取り掛かる」と答え、そのまま辞任してしまったのである。

 私が西村氏に、かつての構想をやるべきだと打診すると、氏の反応は極めて良かったように感じた。具体的にどうすればよいか。齋藤氏、村井氏とも相談したいと考えている。

※週刊朝日  2022年6月24日号