7月10日投開票の参院選がスタートした。政権交代選挙ではないので、静かにはじまった雰囲気だ。しかし、当事者にとっては自身の生き残りを、そして党の威信をかけた“一大イベント”でもある。激戦の京都、北海道、新潟と注目の選挙区を追った。

■京都(改選数2)

「京都のことは京都でやる。大阪に言われることはない。厳しいなかで守り続けてきた京都の1議席、勝たせていただけませんでしょうか」

 参院選公示日の出陣式で涙を浮かべ訴えたのは、立憲民主党の前幹事長・福山哲郎氏。知名度も高く、5期目をめざすベテランだが、今回は全国でも屈指の激戦となりそうなのだ。

 昨年の衆院選で、大阪府や近畿地方で大きく議席を伸ばした日本維新の会が、京都を「最重要地区」と位置づけ、新顔の楠井祐子氏を擁立して初の議席獲得を狙ってきた。

 福山氏にとってさらに厳しいのは、これまでと違い、国民民主党の前原誠司衆院議員が楠井氏の支援を決めたことだ。

 旧民主党時代、福山氏は前原氏グループ「凌雲会」で事務局長を務めたことがあるほど近い関係だった。

 しかし、今回はたもとを分かち、対決する。

 楠井氏の出陣式、前原氏はマイクを握り、

「大阪の維新を持ち込むのではない。日本のこと、京都のことを楠井さんがやるためだ」

 と訴えた。

 維新の幹部が打ち明ける。

「前原氏が維新についてくれたのは非常に大きい。維新にはない前原氏の固定票が楠井氏にのれば、福山氏と十分勝負になる」

 一方、福山氏陣営の地方議員は、

「福山氏のこれまでは、京都の2議席を自民党と旧民主党で分け合うような無風の選挙戦だったので、福山氏は今回のようなきつい選挙は戦った経験がない。前原氏とはもともと支持者が重なるため、その票が維新にいくとなれば厳しい。正直、なんとか滑り込んでほしいと願うばかり」

 と警戒感をにじませる。京都は立憲の泉健太代表の地元でもあり、野党第1党の威信をかけても敗北するわけにはいかない。

 3年前に議席を獲得した共産党も新顔を擁立しており、混戦必至だ。

 京都を制することは、どの党にとっても、その後に大きな意味を持つ。

◇京都選挙区の候補者

武山彩子(共新)福山哲郎(立現)平井基之(諸新)橋本久美(諸新)星野達也(N新)安達悠司(諸新)近江政彦(N新)楠井祐子(維新)吉井章(自新)

■北海道(改選数3)

 もともと旧民主党系が強い北海道。現有議席では、自民1、立憲2で、今回両党とも2人の候補者を立てた。

 自民は現職で3期目をめざす長谷川岳氏と元衆院議員の船橋利実氏。立憲は、現職で2期連続当選の徳永エリ氏と、元衆院議員の石川知裕氏を擁立している。

「石川氏は当初、立憲ではなく野党統一候補、無所属を模索した。しかし、共産や国民民主も独自候補を出すということで立憲からとなった。その代わり、石川氏はれいわ新選組の推薦を得ることができた。これまで女性の徳永氏が若い層の野党票を取りそうな気配だったが、石川氏にという流れになってきた」

 と石川氏陣営の選対幹部は話す。

 今回の参院選では、全国的に候補を立てている維新。北海道は、参院議員の鈴木宗男氏が北海道総支部代表として仕切っているが、選挙区での擁立を見送り、鈴木氏が代表を務める地域政党「新党大地」が船橋氏の推薦を決めた。

 ある自民道議は、

「維新は比例で元自民道議らを出馬させているが、選挙区に候補者がいないことで大地と維新の票がこちらにくれば、勝機は十分にある」

 と自信を見せる。

 2019年の参院選では、鈴木氏は2議席を獲得した自民を支援した。

 熾烈(しれつ)を極める3番目の議席は、れいわ新選組、新党大地がカギを握りそうだ。

◇北海道選挙区の候補者

大村小太郎(諸新)船橋利実(自新)浜田智(N新)斉藤忠行(N新)沢田英一(諸新)畠山和也(共新)長谷川岳(自現)森山佳則(諸新)臼木秀剛(国民新)徳永エリ(立現)石川知裕(立新)石井良恵(N新) 

■新潟(改選数1)

 16年、19年と2度続けて野党が勝利している新潟も激戦区の一つだ。

 現職の野党統一候補の立憲・森ゆうこ氏と、自民新顔の小林一大(かずひろ)元県議の事実上の一騎打ちとも見られている。

 小林氏には、麻生太郎副総裁や菅義偉前首相が駆けつけている。安倍晋三元首相も入り、「小林さんを国政に送ってほしい。あと一歩です」と支援を訴えた。

 その前で小林氏は、

「失われた自民の議席を奪還したい。働かせてください」

 とあいさつした。

 ある自民県議は、

「勝機があるという裏返しだ。3度も続けて野党に負けられない」

 と自信を見せる。

 前回の参院選では、共産も含めた野党共闘が進んで候補者が一本化された。今回は調整ができなかった選挙区が多い。数少ない一本化となっているのが新潟だ。

 森氏の応援には、新潟県選出の西村智奈美幹事長、小川淳也政調会長ら、こちらも立憲幹部が新潟に入りマイクを握る。

「アベノマスク、今している人います? 世紀の愚策、もっと追及すればよかった」

 と国会論戦に定評がある森氏は、自民党批判を展開する。

 森氏を支援している、米山隆一衆院議員(新潟5区選出/無所属)によれば、

「世論調査の数字ではわずかに、森氏が勝っているとされてきた。それが公示直前で、小林氏が猛攻をかけてきた。6年前の参院選では、森氏が自民候補に2千票差という僅差(きんさ)で勝利している。今回も、森氏、小林氏のどちらが勝っても千票、2千票程度の差になるだろう。選挙戦が進むにつれ、森氏も野党共闘の効果が出始めている」

 と語る。

 自民は、昨年10月の衆院選以来、県連がギクシャクしていた。

 米山氏に敗れた、元新潟県知事の泉田裕彦衆院議員(比例復活)が、自民の「新潟の首領」と呼ばれた星野伊佐夫県議に対して、

「裏金を要求されたが、出さなかった。その録音もある」

 と暴露し、公職選挙法違反容疑で刑事告発し、星野氏の政界引退まで求めた。県連は仕返しとばかりに泉田氏を「常任顧問」から外して無役とした。

 自民県議がこう打ち明ける。

「今回の参院選では、泉田氏はまったく関与していない。泉田氏を外したことで、県連が一枚岩になっている。正直、トラブルメーカーの泉田氏には参院選には最後まで絡まないでほしい。泉田氏が出てくると星野氏との問題が再燃し、選挙戦にマイナスになりかねない」

 場外乱闘が勝負のカギにならないとも限らない。

◇新潟選挙区の候補者

遠藤弘樹(諸新)越智寛之(N新)森ゆうこ(立現)小林一大(自新)

【候補者の見方】

・敬称略、届け出順

・自=自民、立=立憲、公=公明、維=維新、共=共産、国民=国民、N=NHK党、その他は諸=諸派。

(AERA dot.編集部・今西憲之)