「じわじわ変わってくる可能性はあるのではないか。表立ってアベノミクスを否定するのでなく、少しずつ岸田カラー、つまりは財務省寄りのカラーを出してくる可能性はあるかもしれない」

 楽天証券経済研究所の香川睦チーフグローバルストラテジストはこう話す。岸田氏は、伝統的に財政再建を重視する宏池会出身。金融市場では、参院選で自民党が圧勝したことで、リフレから財政正常化路線に舵を切るのか注目されている。

 だが、すぐに岸田カラーを出すのは難しいという。アベノミクスを推進してきた自民党最大派閥の安倍派に、目くばせする必要があるからだ。

 じわり岸田カラーが出るとすれば、まずは人事だろう。香川さんは、来年4月に任期満了となる日本銀行の黒田東彦総裁の後任がどのような考えを持つ人になるか注目しているという。

 また、日本は国債残高が1千兆円規模となり、これ以上の金融緩和は進めない趣旨を財務大臣に発言させて物価高の一因の円安を止める工夫などをしてくるかもしれないと、香川さんはみる。

 熊野英生・第一生命経済研究所首席エコノミストは言う。

「岸田首相が長期政権を築くなら、リーダーシップを発揮しないといけない。独自色を打ち出せないと支持率は高まらない。いまは正念場」

 実際に「変化の芽が出ている」という。金融政策を決める日銀審議委員には、これまで積極的な金融緩和を主張するリフレ派が登用されてきた。7月下旬に任期満了となる片岡剛士委員の後任に、岡三証券グローバル・リサーチ・センター理事長の高田創氏を決めたのは、岸田政権だ。リフレ派でない人を選んだのは「岸田カラー」と熊野さんはみており、「人事を積み重ねることで岸田首相の時代と思われるようになるのでは」と話す。

 アベノミクスの中核は、積極財政と超金融緩和。国債をどんどん発行し、日銀が買い支える。国債は市中消化という原則があり、財政法で日銀の引き受けを禁じているが、民間金融機関を迂回させているだけで、実際は「禁じ手」とされる財政ファイナンスの状況にある。それを正常化させるのは多難が予想される。

「支持率や目先の景気回復が必要になる。それがないと、財政金融政策の正常化は難しくなる」

 上野剛志・ニッセイ基礎研究所上席エコノミストはこう話す。上野さんは岸田首相について、すぐに財政金融政策の正常化を進める考えでもないとみる。状況が許せば正常化に舵を切りたい気持ちはあるだろうが、景気の回復や、副作用への世論の理解が必要と指摘する。円安を止めたいが、利上げで金利が上がると景気も悪くなる。

 前出の熊野さんも、岸田首相は、補助金などの物価高対策を優先し、必要なときはお金をつぎ込み、最優先事項は財政正常化ではないとみる。

 ただ、日本銀行が目標としてきた物価上昇率2%はすでに達成するようになっており、国民の生活に悪影響も出始めている。岸田首相が国民の側を向いて政治ができるのであれば、じわりじわり財政再建に舵を切る可能性もあるかもしれないという。(本誌・浅井秀樹)

※週刊朝日  2022年7月29日号