旧統一教会と自民党の密接な関係が次々と明るみに出る中、岸田文雄首相は自民党のコンプライアンスを強化する方針を示した。岸田首相は抜本的な対応策を打ち出せるのか。AERA 2022年9月12日号の記事を紹介する。

*  *  *

 会合出席や選挙での応援、パーティー券の購入、会合への祝電……。旧統一教会と自民党との関係は多岐にわたる。その問題の本質は何か。

 原点は東西冷戦下の反共運動でのつながりである。当時、統一教会と一体の勝共連合は自民党を全面支援。安倍氏の祖父である岸信介元首相らが勝共連合との窓口になっていた。統一教会の日本国内での活動には霊感商法や合同結婚式など社会的に問題となるものが多かったが、「共産主義との対決」を名目に連携は続いた。

反共から反民主党へ

 時移り、冷戦は終わった。「共産主義との対決」は自民党のレゾン・デートル(存在理由)にはならなくなった。一方でこの間、自民党はロッキード事件やリクルート事件などで金権腐敗体質が批判され、小選挙区制の導入を柱とする政治改革が実現した。金権体質は是正されたが、小選挙区制下では政権党の失政が下野に直結する。

 2006年の第1次安倍政権から自民党政権は首相の交代を繰り返し、混迷した。その結果、09年に自民党は民主党に政権を明け渡した。自民党は「野党暮らしが続くのではないか」と危機感を募らせた。安倍氏は民主党政権を「悪夢」と呼んだ。その陰で、09年に議席を失った萩生田氏や山際氏は、復権を狙って旧統一教会系の団体との連携を深めていた。安倍氏が首相在任中や退任後に、自民党の参院比例区候補をめぐって、旧統一教会系の組織票の割り振りを取り仕切っていたことも明らかになっている。

 冷戦時代の「反共」が「反民主党」に入れ替わり、「民主党から政権を奪還するには、多少問題のある団体と連携しても構わない」という意識が醸成された。それは、まさに「コンプライアンス危機」である。コンプライアンスは単に法律などを守るというだけでなく、社会規範や社会道徳を守るという価値基準である。歴代の自民党政権は、企業に対して「利益を上げるためにどんな団体とも付き合ってよいというわけではない」とコンプライアンスの徹底を求めてきた。それなのに自民党自身がコンプライアンスを守っていないことが露呈した。旧統一教会問題の本質はまさにそこにある。

 岸田首相は、旧統一教会をめぐる問題の本質を把握しているのだろうか。茂木敏充幹事長ら自民党執行部に対して「もう一段踏み込んだ対応」を求め、自民党は所属する衆参両院議員に対して旧統一教会との関係をめぐってアンケートを実施することになった。ただ、アンケートは「祝電を打ったか」「パーティー券の購入はあったか」など、これまで首相官邸が閣僚や副大臣・政務官に問いただした内容とほぼ同じで、党全体で集計したとしても意味はない。

 岸田首相は新型コロナウイルスに感染し、公邸で隔離生活を送っていたが、8月31日に対面での公務に復帰。記者会見で旧統一教会問題について「自民党のコンプライアンスを強化する」と表明した。だが、具体策には踏み込んでおらず、国民の理解が高まるとは思えない。

ブレに知事らが不信感

 岸田首相がこの問題の深刻さを自覚し、旧統一教会関連団体と自民党との関係の全体像を把握することが不可欠だ。その上でコンプライアンス確立のため、第三者機関による検証などの具体策を打ち出さなければならない。教団との関係が深かった自民党安倍派を中心に反発も予想されるが、岸田首相が「解党的出直し」ともいえる抜本的な対応策を打ち出せるかどうかが焦点となる。それはまさに「古い自民党体質」との決別宣言でもある。

 一方、岸田首相がこの問題の本質に迫らず、閣僚や党幹部と旧統一教会との関係がずるずると明らかになっていくようだと、内閣支持率の低迷は続くだろう。それは岸田政権の政策遂行にも影を落としてくる。岸田首相はコロナ感染拡大を受けて、陽性者の全数把握の見直しを提起。都道府県の判断で陽性者の登録を簡素化してもよいという方針を表明したが、一部の都道府県知事の反発を受けて軌道修正。見直しは全国一律で行うことにした。岸田首相の「ブレ」には知事らの不信感が募っている。

「決断」が裏目に出た形

 岸田首相は原発政策の方針変更にも踏み込んだ。原発の再稼働に加えて、新増設や建て替えの検討を進める考えを表明したのだ。脱炭素の加速化や電力不足への対応を念頭に置いたものだが、原発の新増設を「想定していない」としてきた政権の方針転換には、原発を抱える自治体から反発が出ている。旧統一教会問題で内閣支持率が下がり、求心力を失っている岸田政権には、原発政策の転換という大きな仕事を成し遂げる政治力はなく、岸田首相は早晩、軌道修正を余儀なくされるだろう。岸田首相は安倍氏の死去を受けて安倍氏の葬儀を「国葬」とすることを表明。安倍氏が代表する自民党内保守派に配慮した判断だった。しかし、国葬の法的根拠が乏しいことなどに反発が高まり、世論調査では「国葬反対」が多数派を占めている。岸田氏の「決断」が裏目に出た形だ。

 旧統一教会問題は自民党の足元を激しく揺さぶっている。小手先の対応に終始すれば、岸田政権は泥沼から抜け出せない。(政治ジャーナリスト・星浩)

※AERA 2022年9月12日号より抜粋