岸田文雄内閣の支持率が、各社の世論調査で軒並み落ち込んでいる。大臣の不祥事への対応などで批判を浴びるばかり。なぜ世論を読めないのか。2022年11月28日号の記事を紹介する。

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 岸田文雄首相は11月11日午後、法相の役割について「死刑のはんこを押す」「地味な役職」などと9日に発言した葉梨康弘法相(当時)を事実上更迭した。だが、判断の遅れは明らかだった。11日午前の参院本会議の答弁で「説明責任を徹底的に果たしてもらわなければ」と続投の意向を示し、批判を浴びてからの決断だったからだ。

 遅いだけではない。世界平和統一家庭連合(旧統も一教会)との関係で10月24日に山際大志郎経済再生相(当時)を更迭しながら、4日後に自民党の新型コロナウイルス対策本部長に就任させた。「政治とカネ」で厳しい批判を浴びる寺田稔総務相(当時)については11月20日に事実上更迭したが、秋葉賢也復興相はそのまま続投させている。

 性的少数者(LGBTQなど)について「生産性がない」などの主張をした杉田水脈議員を総務政務官に据えたり、自身の長男を首相秘書官に抜擢(ばってき)したりもするなど、国民が首をかしげる判断を続けてきた。

「当面は選挙もないので、世論をナメているのだと思います」

 こう話すのは、ジャーナリストで流通経済大学教授の龍崎孝さんだ。

「そのような決断がいいと思ってやっているはずはない、と私は思います。国民感情とズレていることはわかったうえでやっている。なぜか。党内への配慮を優先しているからです」

■安倍派の動きに警戒

 岸田派は安倍派、麻生派、茂木派に続く党内第4派閥。反対勢力を抑え込む力はない。特に警戒するのは安倍派の動きだ。

「安倍晋三さんが亡くなり、リーダー不在の最大派閥である安倍派は抑えが利かない状況です。仮に流動化すれば、非主流派の菅義偉前首相や二階俊博元幹事長の勢力と結びつく危険もある。(衆院を解散しない限り国政選挙がない)『黄金の3年間』だからこそ、岸田首相にとって最も要注意なのは党内の動き、つまり党内世論なんです。国民世論は脇においてでも、党内世論の波風を立てず『やはり岸田のまま行こう』としておかざるを得ない。野党も弱く、支持率が下がっても政権が倒れることはないだろうというおごりの結果だと思います」

 法政大学大学院教授(現代政治分析)の白鳥浩さんも言う。

「少数派閥出身の宰相であるということが、常に岸田首相の足かせになっている。主体的に何かを決断しようにも、党の皆がついてきてくれるかどうか自信がない。だから判断が遅れる」

「聞く力」というキャッチフレーズも自信のなさの裏返しだと白鳥さんは分析する。

「『私は聞く力があります』とわざわざ言うのは、自身にも、そして自分の聞く力にも本当は自信がないから。周囲の話を最後まで聞いて、世論の帰趨(きすう)を最後まで見て、ただ多数派に乗っかっていこうとしているのでは」

■危機管理能力の欠如

 さらに決定的に欠けているのは、国のリーダーとしての危機管理能力だと指摘する。

「葉梨前法相の件でも、問題が確認できた時点で即刻更迭するのが『正解』でした。泣いて馬謖を斬ることが求められたはずで、辞表を待っているようではリーダーシップはとれません。過去の首相は良きにつけ悪しきにつけ、小泉純一郎氏の郵政民営化、安倍氏のアベノミクス、菅氏のワクチン100万回など、リーダーとして『ワンイシューで一点突破』の気概がありました。岸田首相はやりたい方向性が国民にはよくわからない。ある意味、世論が読めていないからとも言えます」

(編集部・小長光哲郎)

※AERA 2022年11月28日号を一部改変