ジャーナリストの田原総一朗氏は、政権への支持率が低下する岸田内閣に正念場だと忠告する。

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 岸田文雄首相のやることなすことが後手後手になっている。

 まずは旧統一教会問題で見苦しい対応を続けた山際大志郎前経済再生担当相だ。やっとというべきか、10月24日に事実上更迭したが、4日後の28日には、自民党の新型コロナウイルス対策本部長という要職に就任させたことで、さらに批判が巻き起こっている。

 葉梨康弘前法相は、所属する岸田派の議員パーティーで「だいたい法務大臣というのは、朝、死刑のハンコを押して、昼のニュースのトップになるのはそういう時だけという地味な役職だ」などと発言し、11月11日に更迭された。

 岸田首相は東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の首脳会議出席のため、同日にカンボジアに向けて出発する予定だったが、大臣交代のため急きょ延期となり、12日未明に出発するというドタバタであった。

 立て続けに岸田内閣の閣僚辞任が起きている。それも、ギリギリのタイミングでの更迭ばかりだ。

 寺田稔総務相も、政治資金収支報告書問題で野党に厳しく追及されており、この原稿の掲載号が発売されるころにはどうなっているかわからない。

 新聞、テレビなどが調査した内閣支持率はいずれも大きく下落している。

 読売新聞(11月4〜6日調査)では10月から9ポイント下がり、36%。朝日新聞(11月12、13日)では3ポイント下がって、37%。産経新聞・FNN(同)では2.3ポイント減の38.6%。NHK(11月11〜13日)では5ポイント減の33%といった具合だ。いずれも40%を下回っているが、毎日新聞(10月22、23日)では27%。時事通信(10月7〜10日)は27.4%と、30%を切っている。

 欧州や米国ならば、当然政権交代になる支持率だ。だが、日本の問題は政権交代すべき政党が見当たらないことだ。国民の多くも政権交代を求めていない。野党が弱すぎるのだ。

 そこで、問題の岸田内閣だ。

 野党が弱いうえに、自民党内にはどうやら岸田首相に取って代わってやろうという戦意を持った議員もいない。

 現在、マスメディアなどでは旧統一教会と自民党議員の関わりが大問題となっているが、私が極めて問題視しているのは日本経済の劣化である。

 1980年代には企業の時価総額ランキングで、世界のトップ10社に日本企業が7社も入っていたが、現在ではトップ10社どころか、トップ50社にトヨタがランクインするのみである。

 そして、30年前には日本人の平均賃金は韓国の2倍であったが、現在では抜かれてしまっている。

 劣化した日本経済を活性化するにはどうすればよいのか。

 岸田首相は、聞く耳は持っていると思う。柔軟性もある。しかし、強い批判に抗する度胸に欠けているきらいがある。

 政権交代には期待できそうになく、岸田首相に取って代わるという戦意を持った議員もいないのだから、岸田首相が覚悟を決めて思い切った構造改革をやるしかない。

 私は先月、岸田首相に死に物狂いで覚悟を決めてやるように強く求めた。岸田首相は力強く応じてくれたと捉えている。どのような姿勢を見せてくれるか。岸田内閣の正念場である。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

※週刊朝日  2022年12月2日号