柴崎岳がスペイン2部のテネリフェから1部ヘタフェへ移籍することになった。ヘタフェは昨季の昇格プレーオフ決勝でテネリフェと戦った相手。柴崎は2アシストを記録したものの2戦合計スコア3-2で敗れ、テネリフェは惜しくも昇格を逃した。柴崎はスペインに渡ってからの短い期間でも着実にリーガでの土台を築き、1部行きを争った相手からの直々のオファーで“個人昇格”を果たすことになったわけだ。

 ヘタフェは1部復帰の来季に向け、レンタル期間が終了する選手を完全移籍で獲得するなど昇格に貢献した選手の維持に努めながら、ベティスからDFブルーノ・ゴンサレス、サラゴサからFWアンヘル・ロドリゲスを完全移籍で獲得。またレアル・ソシエダから守備的MFマルケル・ベルガラがレンタルで加入したが、主力の陣容は大きく変わらない見込みだ。

 昨季からチームを率いる ホセ・ボルダラス監督は4−2−3−1を用いることが多いが、メンバーや状況により4−4−2も採用する。対戦相手の大半が“格上”となる来季は堅守速攻の度合いが強まると見られるが、 フランシスコ・ポルティージョやダニエル・パチェコがサイドから仕掛け、昨季22得点を記録したエースのホルヘ・モリーナに合わせる基本型は変わらないだろう。

 キャプテンでもある33歳のMFメフディ・ラセンはブラジルワールドカップまで日本代表のハリルホジッチ監督が率いたアルジェリア代表の主力を担っていた選手で、1対1の強さとシンプルな展開力に定評のあるベテランだ。彼とアルゼンチン出身で得点力もある左利きのアレハンドロ・ファウルリンを基本セットに、182cmの長身MFセルヒオ・モラ・サンチェスがオプションとして起用されてきた。

 来季はそこに柴崎が加わる構図だが、もちろん彼の攻撃的な性能を生かすために4−2−3−1のトップ下に配置するプランも考えられる。2部で厳しい当たりや攻守の切り替えに慣れたといっても、1部では相手の攻撃クオリティが格段に上がり、自陣で耐える時間帯も多くなる。そう考えれば、高い位置でアクセントになり、少ないチャンスでも良質なパスや飛び出しで相手の脅威になる形の方が機能しやすいかもしれない。

 一昨季に19位で2部降格するまで12シーズンにわたり1部で戦ってきたヘタフェ。その大半でシーズン終盤まで残留争いを強いられたが、09-10シーズンには“ヘタフェ旋風”を巻き起こして6位フィニッシュ。ヨーロッパリーグの出場権を獲得した。ただ、その“代償”として、ロベルト・ソルダードがバレンシアに、ペドロ・レオンがレアル・マドリードに移籍するなど主力が引き抜かれ、次のシーズンでは再び残留争いを経験して16位に終わった。

 選手側の観点に立てば、1部の強豪を相手に活躍できれば、すぐにでもステップアップできる環境にあるということだ。マドリード州のムニシピオ(基礎自治体)であるヘタフェは人口約18万人の小都市ながら、マドリードの中心部から車で30分ほどの場所にあり、電車でのアクセスも可能。アフリカ大陸に近いカナリア諸島のテネリフェと異なり、チームのアウェー移動もバスがメインになるだろう。

 本拠地のコリセウム・アルフォンソ・ペレス(スペイン代表で活躍した地元出身のストライカーから名付けられた)は収容人数2万人を満たないローカル感漂うスタジアム。近くに大きなショッピングモールがある。特に近郊のビッグクラブであるレアル・マドリードやアトレティコ・マドリードを迎える試合は盛り上がるが、1部昇格の新シーズンでボルテージはさらに高まると予想される。そのピッチに柴崎が立ち、確かな存在感を示すことができれば、さらなる未来につながることは間違いない。(文・河治良幸)