独ブンデスリーガのマインツに所属する武藤嘉紀選手が「AERA」で連載する「職業、ブンデスリーガー」をお届けします。大学在籍時からFC東京に所属し、日本代表にも選出。現在はマインツで活躍する武藤選手が異国の地での戦い、生活ぶりをお伝えします。

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 引っ越しをしました。

 今まではマインツに加入する時にクラブから紹介してもらった部屋で暮らしていました。そこは170平方メートルほどの広さがありながら、間取りは1LDK。少々使い勝手が悪く、友人や両親が遊びに訪れた時に、泊まれる部屋があればいいなと思っていました。娘も日ごとに大きくなり、妻がキッチンで食事の準備をしている傍らで僕は筋トレで汗を流し、その周りを娘が歩き回るという、奇妙な光景も続きました(笑)。

 僕は心置きなくトレーニングができ、妻も気兼ねなく娘と過ごせる、それぞれが自分に向き合える場所を持てることが、引っ越しの決め手となりました。

 今度の家は、日当たりのよい4LDKです。家賃も少し上がりましたが、ドイツでの賃貸相場は、1平方メートルあたり10ユーロ(約1300円)程度が平均だそうです。大都市ではもっと高いようですが、日本と比べると格段の安さですね。

 オフを日本で過ごす直前に、慌ただしく引っ越しを済ませてきたのですが、約1カ月ぶりに新居に戻った今、「とても落ち着くな」というのが正直な気持ちです。良い旅をして帰ってきた直後の、心からくつろげるような感覚でしょうか。

 僕はもちろん日本が大好きで、食事のおいしさ、利便性などについても本当に良い所だと感じています。東京では、いつでも友人や両親たちに会うことができ、刺激を受ける場所でもあります。それに、マインツでは、「ちょっと買い物に、映画に……」というような気軽な気分転換はなかなか望めません。カフェでお茶をするぐらいですが、ただ、その分、静かに、サッカーに集中できる環境であることに間違いありません。

 僕はこの2年の間に、「海外に旅に出てチャレンジする」という「非日常」的な気持ちから、今、ここが自分にとってのあるべき姿、居るべき場所へと変わっていったように思います。現在は、ドイツで戦う日々が僕にとっての「日常」になっています。「家」はそのベースとなる大切な場所です。

※AERA 2017年7月24日号