第17回世界水泳選手権大会がハンガリー・ブダペストで現地時間7月14日から開幕した。前半戦はシンクロナイズドスイミングや飛込競技、OWS(オープンウォータースイミング)競技、水球競技が中心に行われ、23日からいよいよ競泳競技がスタートする。今回の注目は、メダルの数だ。当然楽観視するわけではないが、萩野公介(ブリヂストン)、瀬戸大也(ANA)、池江璃花子(ルネサンス亀戸)を始め、今年は現状の世界ランキング上位に位置する選手が多数存在している。



 萩野、瀬戸はいわずもがな。200メートル個人メドレーは萩野がランキング2位につけており、400メートル個人メドレーで日本人初の大会3連覇を狙う瀬戸はランキング3位に位置する。タイム的に見れば、瀬戸は世界ランキング1位から1秒遅れているものの、こと『勝負』となったときの瀬戸の強さは群を抜く。萩野も瀬戸だけには負けたくないという想いは強く、2人が競り合えば400メートル個人メドレーでは、日本人選手のワンツーフィニッシュが見られる可能性は高い。

 この2人のライバルになるのは、リオデジャネイロ五輪で2位に入ったチェース・ケイリシュ(米国)と、地元ハンガリーのダービド・ベールラストーだ。ケイリシュは五輪のリベンジ、そしてベールラストーは地元での優勝と、それぞれ懸ける想いは大きい。瀬戸、萩野が彼らを打ち破れるのかに注目したい。

 一方、今年に入って何かと停滞が騒がれている池江は、練習量も五輪前に比べれば落ちているものの、その天性のスピードは健在。五輪で5位入賞を果たした100メートルバタフライは厳しい戦いが予想されるが、50メートルバタフライでは十分にメダル争いが期待できる。

 さらに、この3人以上に注目したい選手が出場する種目がある。男子200メートル平泳ぎ、男子200メートルバタフライの2種目だ。

 200メートル平泳ぎは、今年1月に前人未到の2分06秒台に突入する2分06秒67の世界記録を樹立した渡辺一平(早稲田大学)がいる。さらに、ロンドン五輪後から平泳ぎを牽引し続けてきた小関也朱篤(ミキハウス)も世界ランキング2位の2分07秒18のタイムを持っている。2人とも、個人メドレーのケイリシュのように、五輪で味わった悔しさ(渡辺は6位、小関は5位)をなんとか晴らしたいと、この大会に懸ける想いは強い。その気持ちを前面に押し出したレースを期待したい。

 200メートルバタフライでは、リオデジャネイロ五輪銀メダルを獲得した坂井聖人(早稲田大学)。金メダリストのマイケル・フェルプス(米国)が引退した今、順当に世界ランキング1位を獲得している。課題にしている前半のスピード強化がどこまでできているのか。それが今大会のメダル獲得のカギを握っている。

 また、同じチームで切磋琢磨する若手2人、高校3年生の長谷川涼香と牧野紘子(ともに東京ドーム)が出場する200メートルバタフライにも注目したい。五輪2大会連続銅メダルを獲得した星奈津美が引退した今、2人がその伝統を受け継ぐ。現状で長谷川が世界ランキング2位、牧野が3位に位置する。この2人には、メダル獲得のための勝負などとは考えず、世界の舞台で思い切って全力を出し切るレースを見せてもらいたい。それが、必ず3年後の東京五輪につながるだろう。

 長く世界から遅れをとっていた女子個人メドレーにも、大橋悠依(東洋大学)という新星が現れた。日本選手権の400メートル個人メドレーでマークした4分31秒42の日本記録は、世界ランキング1位。ただ、この種目では、女王カティンカ・ホッスー(ハンガリー)が本番になると記録をあげてくる。過度な期待は禁物だが、大橋には長谷川、牧野と同様に、初の世界水泳選手権で周りを気にすることなく自分のレースだけに集中してもらいたいところだ。

 彼ら、彼女らは当然、3年後の東京五輪でもメダル候補になる。五輪翌年の今だからこそ、本物の強さを世界にアピールしておきたいところ。これだけ世界ランキング上位に名を連ねておきながら、今大会でメダルが獲得できなければ、「日本人選手には、記録で負けていても勝負をすれば勝てる」という印象を与えかねない。五輪翌年の今年だからこそ勝負強さを見せ、世界での[「格付け」が決まる絶好の機会を生かしたい。

 願わくば、メダルを意識してプレッシャーを感じるのではなく、自分の力を信じ、自分の泳ぎだけに集中してレースをしてほしい。それが、結果につながる最善の策なのだから。(文・田坂友暁)