シーズンの後半戦に突入したJ1は中断期間を経て、今週末に第19節が行われる。浦和レッズが8月15日にスルガ銀行チャンピオンシップでブラジルのシャペコエンセと対戦するため、7月22日にイレギュラーで第22節のセレッソ大阪vs浦和が行われ、C大阪が4-2で勝利。これで首位のC大阪は2位の鹿島アントラーズと暫定で勝ち点差を4に広げた。一方の浦和は勝ち点29から伸ばせず、勝ち点41のC大阪とは12差となった。

 これまでJ2昇格組が翌シーズンにJ1優勝を果たしたケースは2011年の柏レイソル、2014年のガンバ大阪と2度あるが、いずれも前シーズンのJ2王者だった。1年前にJ2でトップに立てなかったC大阪がJ1優勝となれば、初めてのケースとなる。普通なら浮足立ってもおかしくない状況だが、厳格な指導者として知られる尹晶煥監督に油断の様子はなく、J1での経験が豊富な選手も多いため、メンタルが原因で唐突に大きく崩れることは考えにくい。

 けが人などのアクシデントを除き、懸念材料があるとすれば対戦相手が前半戦よりC大阪の戦い方を研究してくることだ。C大阪は基本布陣が固定的で、攻撃の特徴もはっきりしている。特に中盤の底から組み立て、機を見て攻め上がるソウザと、1トップで2列目にボールを落とし、そこから迫力のあるフィニッシュにつなげる杉本健勇の縦ラインは明確な起点になっているだけに、対戦相手の多くはここを封じるための対策を施すはずだ。

 タイトル争いの経験値で首位のC大阪を大きく上回るのが2位の鹿島だ。前半戦の途中まで上位に付けていたものの、大目標だったAFCアジア・チャンピオンズリーグ(以下、ACL)で敗退が決まると、昨季J1制覇の功労者である石井正忠前監督を解任し、大岩剛新監督が引き継ぐ形となった。この処遇には賛否両論あったが、新体制で臨んだ第14節の広島戦から5連勝。第18節でFC東京と引き分けたものの、新指揮官就任から負けていないことが追い風となっている。また鹿島は今夏の補強が今のところないが、開幕前に大型補強をしており、ここ5試合で6得点のペドロ・ジュニオールをはじめ新戦力が馴染んできたタイミングでもある。もともと、鹿島はACLとの“二足の草鞋”を想定したメンバーであることから、体力面の不安も少ない。ただ、ここまで得失点差はプラス9で、1点差勝利が8試合もある。相変わらずの勝負強さだが、裏を返せば相手を圧倒しているわけではない。安定した戦いの継続、第22節に待つ川崎とのアウェー戦、さらに第24節のC大阪とのアウェー戦といった“直接対決”の勝利が連覇に直結するはずだ。

 3位の川崎フロンターレは、5年間チームを率いた風間八宏前監督から引き継いだ鬼木達監督がクリエイティブな攻撃志向の戦術にハードワークを組み込んでおり、失点せず得点できるチームに成長してきている。また、ここまでACLとリーグ戦を並行する過密日程をこなしているにもかかわらず、主力にけが人が少ないことはフィジカルコーチを含め高く評価できるポイントだ。リーグ戦、ACL、天皇杯、ルヴァンカップと4つの大会を並行して戦う今後も主力に故障者が出ず、良いコンディションをキープしていけるかが川崎の生命線となる。惜しくもタイトルを逃し続けてきたチームだけに、さらにモチベーションは高まるはずだ。ただ、忘れられないのが、やはり終盤まで4つのタイトルの可能性を残しながらひとつも取れずに終わった2009年の出来事だ。全てのタイトルを狙いにいく姿勢はもちろん大事だが、クラブの体力は有限であり、どこかで優先順位の折り合いを付ける必要が生じるかもしれない。

 4位の柏はC大阪と勝ち点差7に付けており、シーズン中にも若手が成長を続けるチーム状態をキープできれば、逆転優勝の可能性はありそうだ。若手の指導に定評のある下平隆宏監督は効果的な選手交代など采配面でも手腕を発揮している。ただ、これまではワンプレーが明暗を分けるような試合展開で、守護神・中村航輔の奮闘により僅差で勝ち点3をもぎ取った試合が多い。

 過去の逆転優勝を見ると、07年の鹿島が首位に勝ち点10差をつけられたところから大逆転。14年には浦和に14差を付けられていたG大阪がJリーグ史上最大の逆転優勝を果たしている。その例を見れば、5位の横浜F・マリノス、6位のG大阪、7位のジュビロ磐田までが試合数のひとつ多いC大阪と勝ち点10差以内につけているため、逆転の可能性を見込んでもいい。その中で、14年の王者であるG大阪が得失点差プラス13とポテンシャルは高いものの、けが人や堂安律の移籍などマイナス面もあり、ACLでかかった負荷も気になるポイントだ。FW黄義助を新たに加えたチームがいかにまとまっていけるかが鍵を握る。

 C大阪と勝ち点12差で、同じ試合数を消化している8位の浦和がここから巻き返してJ1制覇となればドラマチックだが、勝ち点差だけでなく、両者の間に6つのチームが居並ぶ状況は苦しい。1つひとつ勝利を重ねて浮上するしかないが、ACLを含めたカップ戦タイトルに照準を合わせるべきタイミングがくるかもしれない。

 総合的に判断すると、優勝の本命は前回王者の鹿島。ただし、首位のC大阪が相手の対策を上回る戦いぶりで勝ち点を積み重ねられれば、“逃げ切り”のチャンスは十分にある。川崎はさらなる過密日程が想定される中で、J1でのパフォーマンスを落とさない準備ができれば逆転も可能だろう。

 柏は接戦の勝負強さを後半戦も発揮していけるかどうか。さらに横浜FM、G大阪、磐田にも数字上はチャンスが残る。浦和はここから巻き返し、06年以来となる悲願のJ1優勝となれば、14年のG大阪にも匹敵する“大逆転劇”になるが、困難なタスクであることは間違いない。(文・河治良幸)