東京五輪へ向けて、期待のニューヒロイン誕生だ。

ハンガリーのブタペストで開かれた水泳世界選手権で注目を集めたのは、リオ五輪のメダリストの瀬戸大也でも、萩野公介でもなく、主要国際大会初出場の東洋大学4年の大橋悠依(21)だった。

女子200メートル個人メドレーで日本新をマークし、銀メダルを獲得。同400メートルでは、惜しくもメダルは逃したものの、世界の強豪と競り合い4位に食い込んだ。

200メートル個人メドレー決勝後、大橋の感想は、

「まさかと思った。びっくりした」

 今年4月の日本選手権までは「ほぼ無名で、我々からしてもノーマークの選手でした」(スポーツ紙デスク)というほど、遅咲きの選手。大橋本人も今大会直前、本誌の取材に対し、「私はまだほとんど知られていない存在です。『えっ誰それ』という感じでメダルをとったら面白いですね」と語っていたくらいだ。

 躍進の陰にいるのは、寺川綾や北島康介などをメダルへ導いた日本代表監督の平井伯昌氏(54)。東洋大水泳部でも指導にあたる。大橋は高校時代も飛び抜けた選手ではなかったが、平井氏が、その可能性にいち早く目を付けた。

「平井さんは、大橋は泳ぎが大きくて腕も長いので伸びる余地がある、と判断。『君を強くしたい。リオは無理だけど、東京五輪を目指そう』と言って勧誘したそうです」(五輪担当記者)

 大橋の得意は背泳ぎ。軸がぶれず、力みの少ない、泳ぎが特徴。

「それは、水をつかむ感覚に天性のものがあるから、だそうです」(前出デスク)
 
 ちなみに、箱根駅伝で“山の神”を輩出し、日本人初の100メートル9秒台を期待される桐生祥秀選手も在籍する東洋大学は、陸上だけでなく競泳にも力を入れているという。大学では珍しい屋内50メートルプールもあり、恵まれた練習環境にある。

 もっとも、そこで彼女が順調に成長した、という話ではない。大学1、2年生の頃の彼女は体調不良で、泳げない時期もあったという。長らく、平泳ぎも苦手としていた。

「苦手だった平泳ぎは、北島康介を見て研究したそうです。北島は、昨年まで平井さんの下で東洋大の学生と共に練習していましたからね。さらに、いま日々の練習を共にしているのは世界トップレベルの萩野公介。最高の環境で才能を伸ばしたということでしょう」(前出デスク)

 そんな大橋の実質デビューは今年4月の日本選手権。400メートル個人メドレーで日本記録を3秒24更新する4分31秒42(リオ五輪銅メダル相当)をマークして優勝し、今回の世界選手権の代表権を得たのだった。

 今回の世界選手権に備えて6、7月にはスペインで高地合宿し、涙を流しながら頑張ったという。

 取材した記者が「とにかく明るい」と証言する大橋。遅咲きゆえに虚勢を張らないところも、五輪という大舞台では精神面で好材料となるだろう。

アイドルグループ欅坂46の「サイレントマジョリティー」が流れると踊り出すそうで、付いたあだ名が“マジョリーナ”。2020年東京で、マジョリーナの歓喜の踊りをぜひ見たいものだ。(岸本卓司)

※週刊朝日オンライン限定記事