西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、日本のトレード事情は「古すぎる」と苦言を呈する。



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 日米ともに7月31日がトレード期限だった。つまり、今季の戦力補強がほぼ終わりを意味する。大リーグでは少し事情が違うようだが、ここは難しいルール説明をする場ではないから省く。日本でも7月のトレードが4件成立したが、メジャーではその何倍もの人数のトレードが決まった。

 大リーグでは、ダルビッシュがレンジャーズからドジャースへ移籍。アストロズの青木はブルージェイズに移籍した。ダルビッシュだが、世界一を狙うチームにこれだけ求められて行くのは光栄だよね。そして放出したレンジャーズも3人の若手を手にした。狙っていた若手選手とは若干違うようだが、それでもダルビッシュは、お世話になったレンジャーズに3人もの若手有望株をもたらせ、恩返しをしたとも言える。

 シーズン中のトレードを考えると、日本では「トレード=戦力構想外」と思うだろう。大リーグではそんな考えは一切ない。ビジネスとして、優勝争いから脱落したチームは「主力放出」で将来性ある若手を獲得する。逆に、優勝争いしているチームは主力を獲得し、優勝への戦力補強を行う。常に「WIN−WIN」の関係が成り立っている。移籍しなければならない選手は大変だが、トレードに対して卑屈になる選手はいない。そういう土壌ができあがっていることはうらやましい部分もある。

 日本球団も、メジャーほどでないにしろ、もっと活発に選手のトレードを行っていいと思うよ。日本ハムは4件中3件に絡んだが、球団のビジョンがはっきりしている。若手の登用、チームの活性化を図るという部分が見える。他の球団も、もっと鮮明に球団の色を打ち出していいよね。「功労者だから」「来年は復活するかも」「簡単に選手をトレードに出したら、新人が入団してくれないかも」などの理論は古すぎる。今の野球界は「10年ひと昔」ではない。数年周期で野球は変わる。ならば、固定観念を捨てて、新しい可能性を常に模索したほうがいいに決まっている。

 トレード移籍した選手も胸を張って新天地でプレーしてほしい。「(所属球団から)出された」のではなく「(移籍球団に)請われた」のだと感じてほしい。ファンも拍手を送り続けてほしい。その空気がトレードに対するイメージを変えてくれる。

 話は変わるが、西武が大型連勝で一気にソフトバンクと楽天の優勝争いに割って入ろうとしている。以前も指摘したが、打線はもともと素晴らしい爆発力を誇っている。今年はそこに金子侑、源田らの足も絡んで得点力は増している。投手は自信を持って投げてほしい。少々打たれたって、打線が援護してくれる。白星がつけば、投手は自信を深める。さらに、夏場は打撃力の強いチームが強い。このまま持続して、9月まで優勝争いに残ってほしい。

 逆にセ・リーグは首位の広島は別として2位争いが熾烈(しれつ)だ。巨人も一時期の得点力不足からは抜け出し、本来の力を発揮しつつある。菅野、田口、マイコラスの3枚は強力。クライマックスシリーズや日本シリーズの短期決戦までいけば、強力な先発陣を持っているチームは有利だ。

 もうここからは、新しい力を探す時期ではない。これまで築き上げたチーム力をどう発揮するか。そして勝てる試合を確実にモノにしたチームが最後に笑う。

※週刊朝日 2017年8月18−25日号