今年も運命のドラフト会議が迫ってきた。甲子園を熱狂させた“あの選手”は一体どのチームに行くのか、野球ファンは固唾を飲んで見守っている。そこで、ニュースサイト「AERAdot.」では、年間300試合以上を現地で取材する、野球ライターの西尾典文氏に球団別のおすすめ選手を選んでもらった。今回は今季セ・リーグ連覇を成し遂げた広島東洋カープだ。

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 37年ぶりのリーグ連覇を達成した広島。野手の充実ぶりは12球団でも1、2を争うレベルで即戦力が必要なポジションは見当たらない。10月14日のスカウト会議後には早々に地元選手である中村奨成(広陵)の1位指名を公表したが、捕手も有望な若手が多く、そこまでの必要性は感じないのが正直な印象だ。一方の投手陣は若手が台頭したものの、野手に比べると安定感のある選手が少ない印象。先発、リリーフともに層を厚くする必要があるだろう。

【おすすめ選手・その1】
石川翔:青藍泰斗 投手 180cm 80kg 右投左打

 1位は中村で決まっているが、もし外した場合はやはり投手に向かいたい。現在の広島のローテーションを見ると大学卒の選手が多いため、将来のエースが期待できる超高校級投手が補強ポイントとなる。そこで候補となるのが石川翔だ。甲子園出場こそないが、今年の高校生投手では間違いなくナンバーワンの本格派右腕である。最大の特長はフォームに大きな欠点がなく、速いボールを投げられるということ。夏の栃木大会では常時150キロ前後をマークするスピードを武器に勝ち上がり、優勝した作新学院相手にも見事なピッチングを見せた。変化球、コントロールに加えてフィールディングもうまいため早い段階から一軍の戦力となり、長くローテーションを守れる投手になれる可能性は高い。

【おすすめ選手・その2】
馬場皐輔:仙台大 投手 180cm 88kg 右投右打

 高校生ではなく、あくまで即戦力の投手を望むのであれば馬場がおすすめだ。上半身の強いフォームでバランスは少し良くないが、球威には目を見張るものがある。好調時のピッチングの迫力は今年の候補の中でも指折りで、先発、リリーフどちらでも力を発揮することができるのも魅力だ。調子の波が大きいことは課題と見られていたが、今年の秋は4試合で二桁奪三振をマークするなど安定感がアップしている。カープはボールの力を重視するチームであり、同じように上半身で投げるタイプの薮田和樹がブレイクしたことも後押しになるだろう。

【おすすめ選手・その3】
本田仁海:星槎国際 投手 181cm 75kg 右投左打

 高校生投手で石川とともにおすすめしたいのが本田だ。まだまだ細身だが、いかにも投手らしい体形で、長いリーチを柔らかく使える腕の振りは一級品。コンスタントに140キロ以上をマークするストレートの勢いは出色で、春の神奈川県大会では新興チームをベスト4に導く活躍を見せた。コントロールや走者を背負ってからのピッチングには不安があり、プロで活躍するにはクリアしないといけない課題は多いが、投手としてのセンスは高く、将来のローテーション候補として期待できる素材だ。

【おすすめ選手・その4】
比嘉賢伸:盛岡大付 遊撃手 180cm 81kg 右投左打

 高校球界では屈指の強打のショートであり、菊池涼介、田中広輔の後釜候補として獲得したい選手だ。守備は少し雑な面はあるものの、グラブさばきが巧みでランニングスローを軽くこなすセンスが光る。バッティングはまだまだ粗さが残るものの、とにかく強く振れることが長所。体勢を崩されても外野の頭を越えるパワーがあり、夏の甲子園でも見事な一発を放った。体の強さとプレーのスピードがあるのがいかにも広島のチームカラーに合っており、二軍でしっかり鍛えたい選手である。

【おすすめ選手・その5】
永井敦士:二松学舎大付 外野手 178cm 91kg 右投右打

 鈴木誠也の下の世代に選手がいない外野手には、同じ高校の後輩でもある永井を推薦したい。たくましい体格のパワーヒッターだが、ホームランバッターというよりは中距離打者タイプ。粗さは残るものの意外な器用さがあり、夏の甲子園でも1試合5安打をマークした。そして打撃以上に魅力なのがその脚力。機動力を重視するチームのスタイルにもマッチすることは間違いないだろう。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。