来春の選抜大会から走者を置いて攻撃を始めるタイブレーク制の導入が決まった。その前哨戦となる明治神宮大会で実現し、バックネット裏で視察していた名将2人の実況解説が始まったのだが──。

 11月10日、神宮球場で開かれた高校の部1回戦、航空石川(北信越)─日大三(東京)は延長戦に突入。「僕は先攻有利だと思いますよ」と話すのは、甲子園春夏通算49勝の明徳義塾(高知)の馬淵史郎監督。例えば先攻で3点取ると、その裏は2点奪われてもいい、という守備体形を敷け、相手にプレッシャーをかけられる。「当たってる打者からの攻撃だから、バントさせるより、一気に打たせます」(馬淵監督)

 ベンチ入りメンバーの選考も変わると断言。「無死一、二塁から攻撃するんだから、守備も打撃も下手だけどバントだけメチャクチャうまい選手をメンバーに入れとくとかね」(同)

 選手層の厚さが影響するとも見ている。「大阪のあのチーム(大阪桐蔭)とか、強豪校であれば三枚くらい投手を置いてバンバンいけますから」(同)

 先攻有利説を掲げる馬淵監督だが、甲子園春夏通算最多となる64勝を挙げる智弁和歌山の高嶋仁監督は、「まだわからん」と濁しながらも、「僕は“流れ”を大事に考え、先攻のやり方を見て対応すると思います」と、“後攻有利”の口ぶりだ。無死一、二塁の場面は、攻撃野球をモットーとする高嶋監督には好機とも思えるのだが、「僕らの頭の中は昔の野球しかないんで、できたらタイブレークまでに決着を付けたい。今のところそれぐらいしかタイブレーク対策はないですね」と淡々とした表情。だが、秘策はあるようだ。「バントでいったら流れが止まるような気がすることがあるし、打たせればダブルプレーもあるわけで、ゴロだけは打つな、最悪でも外野フライ、という指導になっていくでしょうね。今でもチャンスでゴロを打ったら、たとえヒットでも怒りますから(笑)」(高嶋監督)

 ちなみにこの両校、昨秋に練習試合でタイブレーク制を導入。十回表に明徳義塾が2点を取ったが、その裏、智弁和歌山が3点を返し、高嶋監督に軍配が上がった。今大会で優勝を飾った明徳義塾、そして近畿大会準優勝の智弁和歌山の選抜出場は濃厚だ。対照的な戦略を巡らす名将の駆け引きを甲子園で見てみたい。(黒田朔)

※週刊朝日  2017年12月1日号