2017年もさまざまな出来事があったプロ野球。華々しいニュースの陰でクスッと笑えるニュースもたくさんあった。「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に2017年シーズンの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「ボーク&暴投編」である。

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 2016年の新人王・高梨裕稔(日本ハム)は、2017年もシーズン初登板の4月4日のロッテ戦(ZOZOマリン)を6回途中1失点で白星スタート。先発に転向した前年6月8日の広島戦(札幌ドーム)以来9連勝と、快進撃は2年越しで続くかに見えた。

 ところが、2度目の登板となった4月11日のソフトバンク戦(札幌ドーム)で、コケながら投げてボークを取られるという珍プレーを演じ、いっぺんにツキが落ちてしまうのだから、人間、先のことは本当にわからない。

 問題のシーンは、0対0の3回表。上林誠知の右越え三塁打と2四球で2死満塁のピンチを招き、4番・内川聖一を迎えた。

「ここが踏ん張りどころ」と気合を入れ直して初球を投げようとした高梨だったが、なんと、踏み出した左足のかかとが地面に引っかかり、大きくバランスを崩してしまった。

 前方に倒れ込みながらも、何とかボールを投げたものの、判定は「ボーク!」。三塁から上林が生還し、思わぬ形で先取点を許してしまった。

 高梨は投球動作の途中で明らかに静止していたので、ボールを投げようが投げまいがボークであることに変わりはない。だが、よりによって、満塁の場面でコケてしまったのは、不運としか言いようがない。

「ボークで失点するまでの、前の過程で何とかしなくてはいけなかったです」(高梨)

 5回にも内川に2点タイムリー二塁打を浴び、5回3失点で無念の降板。敗戦投手になり、先発転向後の連勝記録もついにストップした。このボークで歯車が狂ったのか、前半戦を3勝7敗と負け越したが、8月23日のオリックス戦(ほっともっと神戸)で約3カ月ぶりの白星を挙げてから4連勝と復調。7勝7敗でシーズンを終えた。


 一方、5月21日の阪神vsヤクルト(神宮)では、敬遠による満塁策が暴投で台無しになるトンデモハプニングが起きた。

 2点を追う阪神は7回、高山俊、上本博紀の連続内野安打で4対4の同点とした後、なおも2死二、三塁。この一打勝ち越しの場面で、打席に入ったのは、最も頼れる男、4番・福留孝介。

 一塁が空いているから、ここは敬遠が定石。当然ヤクルトベンチの指示も敬遠だった。ところが、ルーキの1ボールからの2球目は、投球前から立ち上がっていた捕手・中村悠平がジャンプ気味にグラブを差し出してやっと捕球するほど大きくそれ、一瞬ヒヤリ。
 
 この回途中、先発・星知弥をリリーフした直後に不運とも言うべき2本の内野安打で同点を許し、平常心を失っていたのかもしれない。こんなときは得てして肩に余計に力が入ってしまうもの。そして、不吉な予感は的中する。ルーキの3球目は、必死にジャンプする中村のはるか頭上を通過する大暴投。三塁走者・高山が勝ち越しのホームを踏んだ。

 結局、これが決勝点となり、阪神が5対4で勝った。労せずして貰った形のラッキーな決勝点に、金本知憲監督も「勝ち運があったのかな」と破顔一笑。

 一方、ヤクルト・伊藤智仁投手コーチは「(捕手を)座らせて投げさせたほうが良かったかも」と悔やんだが、あとの祭り……。

 メジャーでは、2017年シーズンから敬遠の申告制が導入されたが、B級ニュースファンは、「“4球のドラマ”があるからこそ、野球は面白い」と改めて実感したことだろう。

 5月25日の日本ハムvs西武(大宮)では、一度アウトになった打者が、ボークによる打ち直しを認められて、決勝タイムリーを放つ珍事が起きた。

 3点を追う西武は6回、秋山翔吾の右越え場外3ランで一気に追いついた後、源田壮亮も遊ゴロエラーで1死一塁と勝ち越しのチャンス。ここで3番・浅村栄斗は、谷元圭介の初球を鋭くとらえ、レフト上空へ大飛球を放った。

「行ったと思った。初球からいい感じで振れた」と本塁打を確信した浅村だったが、不運にもフェンス手前で風に戻されて左飛。“幻の一発”でチャンスは潰えたかに見えた。だが、この日の浅村はツイていた。


 なんと、谷元がボークを取られたのだ。雨が降りだして、足場が良くなかったことに加え、マウンドに開いていた穴に足を取られたのが原因だった。この結果、一塁走者の源田が二塁へ進み、一度はアウトになった浅村も1死二塁で打ち直しとなった。

 ちなみに、もし浅村の大飛球が風に戻されることなく、そのままスタンドに入っていたら、たとえボークでも本塁打が認められていた。これも“ボークラン”の珍事になるところだった。

 命拾いした浅村は「ボークの後だったので、開き直って打ちました。ラッキーだった。同じ球は来ないと思っていた。甘かったら振りにいこうとした」と、仕切り直しの1球目、フォークボールが甘く入ってきたところを見逃さずに一振すると、センター左への勝ち越し二塁打となった。

 西武は7回にも秋山の右前タイムリーで2点を追加し、8対5と快勝。辻発彦監督は「僕が現役のときは、『ボークでも打て』と言っていた。(アウトになっても)打ち直せるんだから。あのボークは大きかった」と笑いが止まらなかった。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。