松坂大輔投手が中日を退団したことに驚いた人は多いだろう。

 今季は2月のキャンプで右肩を痛めて出遅れ、わずか2試合登板で0勝1敗、防御率16.88。若手が台頭している中で来季に40歳を迎える右腕は戦力構想から外れても不思議ではなかったが、球団は経験と若手の手本となる姿勢を評価して来季の契約を提示した。だが、松坂は予想外の道を選んだ。



 なぜ、退団を選択したのか。

 10月4日に加藤宏幸球団代表と会談し、今季限りでの退団を申し入れた松坂は報道陣の取材に対応した。

「なかなか答えが出なくて、この1カ月弱、本当に悩みましたけど…」
 と複雑な表情を浮かべ、退団を決意した理由を明かした。

「先日、森(繁和シニアディレクター=SD)さんとデニー(友利結国際渉外担当)さんの退団も発表されましたけど、僕は2人に(ソフトバンク・)ホークスをクビになったときに声をかけてもらってドラゴンズに拾ってもらったので、『僕もいちゃいけないな』と思って退団する気持ちを球団代表に伝えさせていただきました」

 松坂にとって森SD、デニー国際渉外担当は特別な存在だ。大リーグから14年に国内復帰し、ソフトバンクに在籍した3年間で1軍登板は1試合のみ。右肩痛に苦しんで期待外れの結果に終わり、17年限りで退団した際はバッシングの嵐だった。

 日本プロ野球機構(NPB)で野球を続けるのが困難な状況の中で救いの手を差し伸べたのが、当時中日の監督だった森SDとデニー国際渉外担当だった。

 松坂は昨年、6勝(4敗)をマークしてカムバック賞を受賞。本人は満足していないかもしれないが、右腕を振り続けて中日ファン、野球ファンの心をつかんだ。

 松坂をよく知る関係者は今回の退団について、こう理解を示す。

「もちろん中日でプレーしたい気持ちはあったと思います。ただ、恩人の2人がチームを去って自分が残ることをよしとしなかったんでしょう。不器用ですけど大輔らしいなと。自分の筋を通したのだと感じました」

 だが、ファンの胸中は複雑だ。名古屋市在住で中日ファン歴30年の赤木庸介さん(39)は肩を落とす。

「獲得の経緯は理解できますが、選手はチーム、ファンのために投げる思いを持ってほしいという気持ちが個人的にあります。ファンは中日のユニホームを着てマウンドに立つ松坂投手をまだまだ見たかった。球団も望んでいたし……。今回の決断は正直残念です」

 松坂は他球団での現役続行を模索している。救いの手を差し伸べる球団が注目される。(梅宮昌宗)

※週刊朝日オンライン限定記事