福岡第一高3年生のポイントガード、河村勇輝が大きな注目を集めている。

 昨年、同校をウインターカップ(全国高等学校バスケットボール選手権大会)2連覇に導く活躍を見せただけではなく、11月の第95回天皇杯(全日本バスケットボール選手権大会)2次ラウンド1回戦では、Bリーグの強豪で大会3連覇中の千葉ジェッツと対戦し73対109で大敗したが、河村は約37分の出場で21得点、10アシスト、6スティールと大活躍。富樫勇樹との「ユウキ対決」でその存在感を見せつけた。



 すると、1月末にB1の三遠ネオフェニックスとの特別指定選手契約が決定。同月25日の千葉戦からいきなりコートに立ち、今月10日現在まで7試合に出場している。

 周囲を驚かせたのは、河村にとって2試合目の千葉戦と3試合目の新潟アルビレックスBB戦だ。千葉戦では21得点、先発出場した新潟戦では24得点をマーク。現役高校生として相手チームはもちろん、ファンに衝撃を与えるプレーを見せてくれた。

 それ以降の4試合でも二桁得点した他、1日の宇都宮ブレックス戦では7アシストと司令塔としても申し分ないパフォーマンスを披露。7試合とはいえアベレージで14.7得点、2.7アシスト、3Pシュート成功率43.6%のスタッツは、想像以上のサプライズなのではないだろうか。チームは河村加入後も連敗が止まらないが、河村入団前に3勝しかしてなかったことを考えれば、その責任を高校生に負わせるのは酷というものだろう。

 高校卒業後の河村は、東海大学への進学が決まっている。Bリーグでのプレーは3月までの予定で、その後は、再び特別指定選手としてBリーグでプレーすることはあるだろうが、基本的に大学バスケ部での活動がメインとなる予定だ。

 しかし、河村は日本代表の先発ポイントガードを将来の目標として掲げている。であれば、国内の大学ではなく米国の大学に進学するという選択肢はなかったのだろうか。

 もちろん、高校No.1と評価される河村とはいえ、東海大でいきなりこれまでのようなプレータイムをもらえるかは分からない。三遠でスターターを務めているが、まだ数試合をこなしただけで、これからは未知数。大学になれば当たりも強くなり、フィジカルなどそこでの適応力も求められるだろう。しかし、さらなるレベルアップを目指すのではあれば、国内にとどまることなく海外にチャレンジして欲しい。

 そこには日の丸を背負うというだけではなく、世界の舞台で輝いて欲しいという願いがあるからだ。

 昨年のワールドカップでも露呈したが、司令塔の冨樫が不在になったとはいえ、日本代表は世界が舞台となった時にフロントコートよりもガードが劣る傾向にある。単純にサイズの問題もあるが、そこにはBリーグチームの選手構成も関わっているように思うからだ。

 Bリーグは、どこもビッグマンに外国籍選手を擁するチーム編成が基本だ。日本人もフロントコート陣であれば、フィジカルに勝る外国籍選手とマッチアップする機会があるが、これがガードになるとリーグ内では日本人同士のマッチアップになることがほとんど。大学は言うまでもないだろう。つまり日本人ガードがレベルの高いプレーヤーと対峙できるのは、極端な話、国際試合だけということになってしまう。

 日本が世界の舞台でも戦える集団になるためには、ガードの強化は必須。河村が日本代表になるだけで満足するのなら国内で進学するのも良いが、さらなる高みを目指すのであれば、18歳の今だからこそ日本を飛び出しても良いはずだ。

 河村は身長が172cmそこそことガードとしても小柄な部類に入るが、日本には果敢にNBAを目指した田臥勇太(宇都宮)や富樫勇樹(千葉)など身長が同程度の先人がいる。河村には既にこの2人に負けないスピードとスキルがあることはこれまでのプレーで証明されているわけで、可能性がある以上、大きな夢を追うべきだろう。

 最近は、NBAの下部リーグ、Gリーグでプレーする馬場雄大(テキサス・レジェンズ)のように、大学に進学してからBリーグでプレーしNBAにチャレンジするという新たな道も開けてきた。しかし、ワシントン・ウィザーズの八村塁やメンフィス・グリズリーズと2−Way契約を結ぶ渡邊雄太が高校卒業後、米国の大学に進み現在地に辿り着いたことを考えると、彼らの足跡を辿る方が様々なチャンスが広がるように思える。

 さらに、2018年のウインターカップでダントツの得点王に輝いた富永啓生(当時、桜丘高)は、卒業後に渡米しレンジャーカレッジで活躍。短大が終わった2021年秋からはネブラスカ大リンカーン校に編入することが濃厚になった。ネブラスカ大といえば、NCAAディビジョン1のビッグ10カンファレンスに所属し、自身もNBAで活躍し引退後はシカゴ・ブルズでヘッドコーチを務めたフレッド・ホイバーグが指揮を執る名門校。一歩一歩、夢に近づいているというわけだ。

 渡邊、八村、そして冨永……。国内の高校バスケで名を馳せれば、米国の大学からも評価されるようになっているわけで、河村にも、もっとスケールの大きな夢を見て欲しい。(文・田村一人)