西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、巨人と楽天の投手トレードで両チームに得られるメリットを推察する。


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 巨人と楽天がまたトレードを行った。7月14日に発表されたのは楽天の高梨雄平と巨人の高田萌生の両投手のトレードだった。両球団は6月25日にも内野手のゼラス・ウィーラーと投手の池田駿のトレードを行ったばかりだった。

 シーズン中に、同一球団でこれだけの短い間隔で2度のトレード成立というのは記憶にない。だが、トレードの活性化は、その球団では出番がなくても、移籍先で活躍する場が与えられるのであれば、選手にとっても素晴らしいことである。

 巨人は、「異例のシーズン」というものを見越した補強であろう。週6試合がずっと続く戦いの中で、どうしても救援陣の負担というものは増える。加えて、守護神のデラロサが左脇腹肉離れで長期離脱となっている。勝ちパターンの投手を取らなければ、救援投手の疲労は深刻となってしまう。9〜10月に13連戦、10連戦がすでに組まれているという。常勝を求められる巨人だからこそ、若い投手を出してでも、実力のある救援投手を取りに行く必要があった。

 横手投げ左腕の高梨を取れたことで、六、七回の勝負どころの対左打者への投入が可能になる。高木の登板が増えていたので、軽減できるとともに、高木を八回以降に回せる。おのずと、主に八回を担ってきた中川を九回に回せる。高梨が昨年までと同様の実力を示せれば、相乗効果は大きい。

 高梨にとっても、楽天で1軍をうかがうよりもチャンスは広がる。楽天は救援にシャギワ、ブセニッツという外国人投手が2人おり、さらに森原が成長している。

 逆に楽天は石井一久GMの中長期的ビジョンに22歳の高田が必要だったのだろう。エースの則本昂とともに柱を形成する岸は35歳で、涌井は34歳。将来のチームを支える可能性のある先発投手はほしかったはずだ。石井GMは「高田選手は大学4年の年。ドラフトなら1、2位でいける逸材」と話した。ドラフト1位の投手を獲得したと考えれば、高梨放出でもファンは納得してくれるはずだ。

 トレードは「どっちが得をしたか」と損得勘定ばかり議論されることがあるが、球界の活性化という意味で、お互いが「WIN‐WIN」の関係を模索できるトレードならば、どんどんやったほうがいい。巨人は毎年優勝するため、楽天はチームに「勝つ文化を構築する」ために、どんどん入れ替えを行う。もはや一昔前のような「他球団で活躍されたら困る」という飼い殺し的発想では、入れ替わりと進化が進むプロ野球で生き抜いていけない。

 それにしても、楽天はFAでどんどん主力選手を獲得する一方、それにより活躍の場が限定された選手との交換で若い選手を獲得している。それがはまった時は、西武、ソフトバンクの2強状態が続くパ・リーグで主役を張れるようになるだろう。今年も三木新監督を中心に、ここまでは素晴らしい戦いをしている。

 今年は新型コロナウイルスの影響で、シーズン途中に外国人選手を獲得することは難しい。来日したとしても2週間の隔離などがあり、即1軍戦力とはならないからだ。例年以上に、2軍選手の実力をしっかりと見極め、首脳陣がうまく起用して総合力を発揮したチームが上位に来る。

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95〜2001年)に2度リーグ優勝

※週刊朝日  2020年7月31日号