2020年の異例ともいえるシーズン、広島カープは5位に終わった。しかし、二塁手として史上初となるシーズン無失策、守備率10割を達成、守備機会連続無失策を503に更新した男がいた。菊池涼介選手(30)だ。

 新型コロナウイルスの感染拡大、緊急事態宣言で開幕が2か月遅れる中、出場した試合は107。全試合出場とはならなかったが、数々の記録を達成した菊地に本誌は独占インタビューした。

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「今年、子供も生まれて家族も増えました。来シーズンは、全部の試合にフル出場して、上回る記録を達成させたい。それと同時に優勝したいですね」

 6月にずれ込んだ開幕戦。無観客試合が続き、今までにない経験をした。

「守備とは守ることですが、僕は攻めを貫きました。それが一番だったと思います」

 普段とは感覚が違ったそうだが、それがよい方向に出たという。

「セカンドの守備は、バッターが打ってから4秒後に一塁へ走り込むのでその前にボールが届かないとアウトになりません。無観客だと、まずバットに当たるボールの音が鮮明に聞こえます。バットの先っぽ、芯でとらえた、などの音がきれいに聞こえる。その瞬間に体を反応させることができた。それで第一歩を踏み出せ、守備には大きかった。もう一つは、大観衆がいないので、白いボールとお客さんの服などの色が重ならず、打球が見やすかったこともあります」

 菊池はそのメリットをこう指摘する。だが、無観客試合のデメリットもある。

「カープはありがたいことに、いつも満員の球場で試合をさせてもらっていました。最初は大学や新人時代の二軍の試合のような感じでしたが、しばらくして寂しくなってきた。その後、お客さんも入るようになって、モチベーションがアップしました」

 これまで二塁手の守備機会連続無失策記録は、阪神タイガースの和田元監督の432。シーズン終盤、周囲からも記録達成の期待がかかり、菊池にとってはプレッシャーでもあった。

「こっちが試合前に集中、今日もいいプレーをとやっている時にショートの田中(広輔)が記録のことを言う。そうすると余計、プレッシャーでね。正直、ボールが飛んで来なければいいと思った時もあります。そう思うとギリギリとれるボールにいけなくなる。ファンにも消極的に守っていたら『菊池なら追いついた』『取れたはず』と思われるじゃないですか。
『オレはやれる、エラーしない、アウトにできる』と自分に自信もって、奮い立たせていました」

 今年で8年連続ゴールデングラブ賞を獲得、セ・リーグ連盟特別表彰も受けた。菊池の守備を見ていると、明らかにヒットだと思う打球にサーカスのように飛びついて、追いつく。そしてアウトにするというプロの醍醐味を見せてくれる。

「正直、プロに入って1年目、2年目と比較すれば、スピードが落ちていたり、守備範囲も狭くなっているのかもしれない。だが、今は風やグランド状態から飛んでくる打球を想定、読む力が経験でアップしたり、バッターが打った瞬間、どうゴロをさばけば、4秒以内にファーストにボールが届き、1塁でアウトにできるかという動きを無駄きたかな。サーカスと言われる守備もすべてアウトをとるためです。派手にやっているのではない」

 菊池が今シーズン、最も印象的だったというプレーは、10月14日の巨人戦。3回無死1塁、巨人の坂本が放ったショートへの強烈な打球を田中が好捕。セカンドに入った菊池にトス。その球を1塁へ送球し、ダブルプレーに仕留めた。

「ショートからのトスが弱くて、強い球が1塁に投げられるような態勢じゃなかった。そこを強いボールを送球してダブルプレーがとれた。やったって感じでしたね」

(今西憲之)


※週刊朝日オンライン限定記事