日本球界でトップレベルの選手たちがメジャーに挑戦してきたが、活躍した選手はごく一握りだ。パワー、スピード、技術に加えて異国の環境への適応力も求められる。この両選手も試行錯誤を繰り返し、来季は正念場となる。レイズ・筒香嘉智とマリナーズ・菊池雄星だ。



 日本野球機構(NPB)通算205本塁打を放ち、侍ジャパンでも4番を務めた筒香は2019年オフにDeNAからポスティングシステムを行使してメジャーに挑戦。推定2年総額1200万ドル(当時約13億1千万円)でレイズに入団した。レイズは金満球団ではない。19年の総年俸はメジャー30球団で28位の約55億円。筒香は球団内で4番目の高給取りになったのが期待の大きさを物語っていた。

 チームはリーグ最高勝率でポストシーズンへ進み、12年ぶりにワールドシリーズに出場したが、筒香は51試合出場で打率1割9分7厘、8本塁打、24打点と不本意な数字に終わった。

 新型コロナウイルスの影響でレギュラーシーズンが60試合と短く、初対戦が続く投手に対応するための時間が足りなかったことは差し引かなればいけない。選球眼の良さは相変わらずで出塁率は3割1分4厘だったため、打率ほどの悪いイメージはない。米国メディアの記者は筒香の課題をこう指摘する。

「速い球にアジャストできていないように感じた。特に95マイル(約153キロ)を超える球を捉えられないので、シーズン終盤は直球を懐に投げ込まれて苦しんでいた。この部分を改善しないとレギュラーに定着するのは厳しい」

 筒香は来季が2年契約の最終年。結果を出せばレイズとの再契約や、他球団からビッグオファーが舞い込む可能性がある一方で、そうでなければメジャーで生き残れない。野球人生の分岐点の年になりそうだ。

「日本人ナンバーワン左腕」と形容されたマリナーズの菊池も苦しんでいる。昨季は9試合登板で2勝4敗、防御率5.17。地元紙のシアトル・タイムズは「キクチはもう言い訳できない。力を発揮しなければならない」と辛辣(しんらつ)だ。

 数字を見れば決して良いと言えないが、筒香と同様に努力家で自己分析力が高く、確実に進歩している。

 メジャー挑戦1年目の19年は32試合で6勝11敗、防御率5.46。161回2/3で36本塁打を浴びた。日本では150キロ近い自慢の快速球が、米国では「打ちごろの速さ」になる。このままでは通用しないと痛感したのだろう。オフに投球フォームの改造に着手。テイクバックの際に左腕を体から離し、右手を高く上げる形にガラッと変えた。直球の平均球速は4キロ以上アップした152キロに。メジャーのパワーヒッターたちを力でねじ伏せる場面も度々見られたが、変化球が問題だった。ウィニングショットとなる決め球がないため、なかなか打ち取れない。地元紙の記者はこう分析する。

「菊池はスライダー、カーブ、カットボールなどを投げるが、すべて同じ軌道なので、打者の目が慣れると合わされてしまう。スプリットやフォークなど落ちる球があれば、投球の幅が広がりガラッと変わるのではないか。直球が良くなっているだけにもったいない」

 菊池は4年契約のため22年までメジャーでプレーできるが、過去2年間で思うような結果が出せていないため3年目の来季が勝負の年となる。現時点では先発ローテーションに入る可能性が高いが、打ち込まれる登板が続けば今までのような猶予は与えられない。責任感が強い菊池の性格を考えれば、事実上の戦力構想から外れた場合に22年もマリナーズでプレーしようとは考えないだろう。

 筒香、菊池が日本球界復帰となれば数球団による争奪戦になる。ただ、両選手は長年抱いていた夢をかなえてメジャーの舞台でプレーしている。共に同学年の29歳と経験値を重ね、野球選手として脂の乗り切った時期だ。日本球界を代表する「投打の両輪」が意地を見せてほしい。(梅宮昌宗)

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