Jリーグのシーズン開幕まで残りわずか。コロナ禍での調整、対策、影響を受けながらも、J1は2月26日の開幕から12月4日の最終節まで長丁場の熾烈な戦いが続く。昨季はシーズン中断の後の過密日程の中、川崎が圧倒的な強さを見せてJリーグ史上最速優勝を達成。迎える今季、「ストップ・ザ・川崎」のチームは現れるのか。4チーム自動降格という残留争いはどうなるのか。J1全クラブのオフシーズンの選手補強を査定(良い方からA・B・C・D・Eの五段階)し、3日間にわけて紹介する。今回は札幌、仙台、鹿島、柏、浦和、FC東京、川崎の7チーム。


■札幌「C」

 ペトロヴィッチ監督4シーズン目。対人能力の高いDF岡村大八(←群馬)とDF柳貴博(←FC東京)の2人を加え、ドリブル突破が魅力のMF青木亮太(←名古屋)と20代前半の面々を獲得した上で、GKに31歳の大谷幸輝(←新潟)、そして41歳のレジェンド・小野伸二(←琉球)が1年半ぶりの復帰。その他、レンタル復帰のMF中村桐耶(←Honda FC)、大卒でGK中野小次郎(←法政大)、FW小柏剛(←明治大)、高卒でFW中島大嘉(←国見高)、新外国人としてFWガブリエル(←ウィダード・カサブランカ)を加えた。

 選手層を含めた守備力アップは間違いなく、“小野効果”も期待できるが、問題は最後を仕上げるストライカー。昨季途中に鈴木武蔵が海外移籍し、その代わりに短期契約で獲得したウーゴ・ヴィエイラも放出した点がマイナス要素となっている。大器として期待の中島に高卒1年目から期待するのは酷だ。元ナイジェリア代表の肩書を持つガブリエルが、“オルンガ的”なアフリカンパワーを発揮することができるか。将来性も含めて期待は持てる補強ではあるが、同時に未知数な部分も多い。


■仙台「B」

 昨季17位。新型コロナウイルスによる特例処置がなければJ2降格となっていたチームから、新たに手倉森誠監督が就任し、10人以上の選手が入れ替わった。目立つところでは、横浜FMで2年間、浦和での3年間を経て日本で6年目となるMFマルティノス(←浦和)、2014年に日本代表に選出された経験もある運動量が魅力のFW皆川佑介(←横浜FC)、スピードに乗ったドリブルが魅力のMF氣田亮真(←長崎)、テクニックの高い左SB秋山陽介(←名古屋)。昨季J2で38試合に出場した24歳MF上原力也(←磐田)のレンタル獲得もチームのプラスになるだろう。

 その他、すでに昨季からレンタル移籍でチームに復帰していたFW西村拓真(←CSKAモスクワ)を完全移籍で再獲得。昨季はケガで2月から長期離脱を強いられたMFクエンカが残留し、プレシーズンから元気な姿を見せているのは大きなプラスだ。2年間、チームのエースだったFW長沢駿の流出は大きなマイナスで選手層の薄さも気になるが、低迷した昨季のチームを変えるには大幅な血の入れ替えは有効な手段。あとは8年ぶりに戻ってきた指揮官の手腕の見せどころだ。


■鹿島「C」

 ザーゴ体制2年目。国内の主力級を多く獲得した昨オフに比べると、今オフの補強は大人しく、大卒でGK早川友基(←明治大)、DF林尚輝(←大阪体育大)、DF常本佳吾(←明治大)、高卒でMF舩橋佑(←鹿島ユース)、MF須藤直輝(←昌平高)、MF小川優介(←昌平高)と6人のルーキーを獲得した以外は、外国人を加えたのみ。その新助っ人である左利きで万能性も高いMFディエゴ・ピトゥカ(←サントス)、強烈なシュート力を持つMFアルトゥール カイキ(←アル・シャバブ)の2人も、新型コロナの影響で来日が遅れており、開幕後しばらくは、ほぼ昨季のままのチームでの戦いが予想される。

 チームを離れたのは、DF山本脩斗、伊東幸敏、奈良竜樹、FW伊藤翔という面々。補強という面ではやや物足りないが、チームは昨季5位で戦術ベースも出来上がっている。何より、オフに流出の噂があり、実際に多くの海外クラブから熱視線を送られていたFWエヴェラウドの残留が最大のプラス材料。昨季10ゴールを挙げたFW上田綺世を筆頭に有望な若手たちが成長すれば、今季の優勝争いだけでなく、その後の黄金期再到来も可能になる。


■柏「E」

 J1昇格から即、台風の目となった昨季の柏。しかし、その原動力だったケニア代表FWオルンガが中東へ。規格外の身体能力とシュート力で得点王&MVPに輝いたエースの代わりを見つけるのは困難だ。さらにGK中村航輔もポルトガルへ旅立ち、最前線と最後尾の駒を失ったところからのチーム作りを強いられる。新エース候補として、身長193cmを誇る大型ブラジル人FWペドロ・ラウルの獲得が決定的との報道(2月12日)があったが、開幕前に不在なのは大きなマイナス。チームとして新たな攻撃の形を作ることが、最初にして最大のテーマとなる。

 すでに決まっている補強としては、MFドッジ(←フルミネンセ)、FWアンジェロッティ(←レッドブル・ブランガンチーノ)の2人のブラジル人の他、昨季J2で41試合に出場したDF上島拓巳(←福岡)がレンタル復帰し、高いボール奪取能力が魅力の23歳MF椎橋慧也(←仙台)、右サイドを主戦場とするMFイッペイ・シノヅカ(←大宮)、高卒としてGK佐々木雅士(柏レイソルU−18)、DF大嶽拓馬(柏レイソルU−18)がチームに加わった。GKには韓国代表のキム・スンギュがおり、DF、MF陣も人材豊富の陣容と言えるが、「オルンガ放出」の影響はやはり大きく、補強診断という点では低く評価せざるを得ない。


■浦和「D」

 昨季10位。「改革3年計画」を修正し、新たにリカルド・ロドリゲス監督を招いた。オフの補強も積極的で、元日本代表で33歳となった現在も国内有数の右SBであるDF西大伍(←神戸)、素早いプレスと前への推進力を持ち合わせる22歳のセントラルMF金子大毅(←湘南)、右サイドからドリブル突破で“違い”を見せる28歳MF田中達也(←大分)、左右両利きのテクニシャンである24歳MF小泉佳穂(←琉球)と国内の実力者を獲得。ルーキーでも、将来の日本代表候補と言えるDF藤原優大(青森山田高)ら4人を加えた。

 その一方で、MF長澤和輝、MF青木拓矢は移籍し、DF橋岡大樹は海外挑戦。MFエヴェルトン、MFマルティノスの外国人もチームを去り、さらにエースとして爆発が期待されたFWレオナルドが巨額マネーによって中国・山東魯能泰山への電撃移籍が取り沙汰され、これが正式に決まれば大きな誤算となり、新たな外国人選手の補強は必須になるだろう。さらにMF柏木陽介とFW杉本健勇がキャンプ中に新型コロナの感染予防のための外出禁止の規律を破り、柏木は退団の可能性も伝えられている状況。果たして今後、さらなる動き、補強はあるのか。少なくとも手放しで喜べるオフではない。


■FC東京「B」

 長谷川体制4年目。チームの成熟度は年々、高まってきており、今季は悲願のリーグ制覇を狙う。オフの補強は最小限。新外国人のDFブルーノ・ウヴィニ(←アル・イテハド)を筆頭に、MF青木拓矢(←浦和)、渡辺凌磨(←山形)、GK阿部伸行(←長野)に、大卒新人のDF蓮川壮大(←明治大)、高卒新人のDF大森理生(←FC東京U−18)。目玉は、2011年のU−20W杯で優勝したブラジル代表のキャプテンを務め、フル代表にも選出経験のあるブルーノだが、新型コロナの影響による来日遅れが、シーズンにどう響くか。仲間との連携構築が不可欠なCBなだけに心配ではある。

 その他、相手の攻撃の芽を摘むプレーを得意とする31歳MF青木は、4−3−3のアンカー役として期待。技術と運動量を併せ持つMF渡辺も出番があるはず。さらにレンタル加入中だったFWレアンドロを完全移籍で獲得し、去就が未定だったDFオマリの残留も決定。FW永井謙佑が右肩手術で開幕時は不在だが、その他の主力勢は軒並み残留してマイナス面は最小限に抑えた。ピンポイント補強で、戦力は間違いなくアップしたはずだ。


■川崎「C」

 昨季の王者。その圧倒的な強さを支えたのは、誰が試合に出ても変わらないサッカーを展開できる選手層の厚さにあったと言える。その中で今オフの動きとしてはまず、チームのバンディエラ、MF中村憲剛が引退し、アンカーとして攻撃サッカーを下支えしたMF守田英正が海外移籍したこと。この穴埋めとして、精度の高いキックが武器の左利きMFシミッチ(←名古屋)を獲得。この男がアンカー役として機能するかどうか。昨季とは異なる“色”を出せるかが、連覇への大きなポイントになる。

 その他、高い技術を持つ26歳MF小塚和季(←大分)、ボランチながら昨季J2で9得点を挙げた26歳MF塚川孝輝(←松本)を加え、さらにFW知念慶(←大分)、FW遠野大弥(←福岡)、FW宮城天(←富山)の3人をレンタルバック。新人では、大卒MF橘田健人 (←桐蔭横浜大)、高卒DF田辺秀斗(←静岡学園高)の2人を獲得した。今季、他クラブからのマークが強くなり、研究・対策もされる中で、新戦力の彼らがどのような形で勝利に貢献できるか。現状、中村と守田の離脱によるマイナス面の方が心配だ。確かにシミッチの獲得は大きく、現有戦力のレベルは間違いなくリーグトップだが、オフの戦力補強という点ではやや物足りないのではないか。