3月19日に開幕する今年の選抜高校野球。「春はセンバツから」という言葉もあるように、ドラフト戦線もここから本格的に活発化していくが、今大会目立つのが出場する投手のレベルの高さである。ちなみに、過去10年間に選抜高校野球(中止となった昨年も含む)に出場した3年生投手で、その年のドラフト指名を受けた選手を並べてみたところ、以下のような顔ぶれとなった。

■2011年:2人

釜田佳直(金沢→楽天2位)、松田遼馬(波佐見→阪神5位)
※三好匠(九州国際大付→楽天3位)は野手としてプロ入り。

■2012年:5人

藤浪晋太郎(大阪桐蔭→阪神1位)、大谷翔平(花巻東→日本ハム1位)、浜田達郎(愛工大名電→中日2位)、大塚尚仁(九州学院→楽天3位)、田原啓吾(横浜→巨人育成1位)
※柿沢貴裕(神村学園→楽天6位)は野手としてプロ入り。

■2013年:2人

・児山祐斗(関西→ヤクルト5位)、岸本淳希(敦賀気比→中日育成1位)

■2014年:1人

・飯塚悟史(日本文理→DeNA7位)

■2015年:3人

■高橋純平(県岐阜商→ソフトバンク1位)、高橋奎二(龍谷大平安→ヤクルト3位)、佐藤世那(仙台育英→オリックス6位)
※平沼翔太(敦賀気比→日本ハム4位)は野手としてプロ入り。

■2016年:6人

・高橋昂也(花咲徳栄→広島2位)、高山優希(大阪桐蔭→日本ハム5位)、高田萌生(創志学園→巨人5位)、藤嶋健人(東邦→中日5位)、山崎颯一郎(敦賀気比→オリックス6位)、堀岡隼人(青森山田→巨人育成7位)

■2017年:4人

・山口翔(熊本工→広島2位)、金久保優斗(東海大市原望洋→ヤクルト5位)、桜井周斗(日大三→DeNA5位)、田浦文丸(秀岳館→ソフトバンク5位)
※難波侑平(創志学園→日本ハム4位)は野手としてプロ入り。

■2018年:5人

・市川悠太(明徳義塾→ヤクルト3位)、横川凱(大阪桐蔭→巨人4位)、柿木蓮(大阪桐蔭→日本ハム5位)、川原陸(創成館→阪神5位)、土居豪人(松山聖陵→ロッテ8位)

■2019年:3人

・奥川恭伸(星稜→ヤクルト1位)、及川雅貴(横浜→阪神3位)、前佑囲斗(津田学園→オリックス4位)
※石川昂弥(東邦→中日1位)は野手としてプロ入り。

■2020年(新型コロナウイルスの影響で大会中止):8人

・高橋宏斗(中京大中京→中日1位)、中森俊介(明石商→ロッテ2位)、小林樹斗(智弁和歌山→広島4位)、田上奏大(履正社→ソフトバンク5位)、内星龍(履正社→楽天6位)、嘉手苅浩太(日本航空石川→ヤクルト6位)、下慎之介(健大高崎→ヤクルト育成1位)、川瀬堅斗(大分商→オリックス育成1位)

 プロ入りした人数だけで見ると、中止となった昨年の大会がこの10年で最多となった。上位指名となった高橋、中森に加えて小林も前評判は高く、過去を振り返ってみてもかなり高レベルだったことは間違いない。選手の格としては2012年がやはり目立つ。藤浪、大谷の二人が1位指名されており、彼らと並んで「高校ビッグ3」とも言われていた浜田も2位でプロ入りを果たした。ただ、投手としての1位指名が複数いたのはこの年だけというのは意外な印象を受ける。

 そして改めて今年出場予定の投手を見てみると、前評判では過去10年でもやはり最高レベルという印象を受ける。現時点でも上位指名候補の可能性があるのが小園健太(市立和歌山)、畔柳亨丞(中京大中京)、松浦慶斗、関戸康介(ともに大阪桐蔭)の4人で、全員が昨年秋の時点で既に150キロを超えるスピードをマークしている。中でも一番の注目度を集めることになりそうなのが小園だ。184cm、89kgという堂々とした体格でスピードだけでなくコントロール、変化球も高校生離れした完成度を誇る。更にまだまだここから伸びていきそうなスケールを感じるのも大きな魅力だ。

 ストレートの勢いで小園を上回りそうなのが畔柳だ。躍動感溢れるフォームでスピードはコンスタントに145キロを超え、数字以上に打者の手元で強さを感じる。2年秋の時点では先輩の高橋を総合力では上回っていると言えるだろう。大阪桐蔭の2人は中学時代から大器と評判だった投手だ。松浦は大型ながら粗さがなく、サウスポーらしいボールの角度が魅力。関戸は小さい故障でなかなか万全の状態で投げられていないが、昨年夏には154キロをマークして潜在能力の高さを見せた。秋の投球を見る限り安定感では小園、畔柳が少しリードしている印象だが、選抜でどこまで巻き返してくるか注目だ。

 この4人以外にも右投手では達孝太(天理)、伊藤樹(仙台育英)、秋本璃空、大川慈英(ともに常総学院)、阪上翔也(神戸国際大付)、京本眞(明豊)、左腕では木村大成(北海)、石田隼都(東海大相模)、毛利海大(福岡大大濠)などが有力候補だ。中でもスケールの大きさで注目を集めているのが193cmの超大型右腕である達だ。体つきはまだ細く、スピードも130キロ台中盤から後半が多いものの、なかなかいないボールの角度がある。これだけの長身でありながら指先の感覚も良く、変化球の制球力も高い。

 サウスポーでは木村がリードしている印象。秋の全道大会では連戦となった準決勝、決勝を連続完封するなど4試合で無失点と圧巻の投球を見せた。同じ腕の振りでストレートと変化球を操り、ギアを上げると140キロを超えるスピードも誇る。達、木村とも選抜の投球次第では上位候補に浮上してくることも十分に考えられる。

 今年3年生になる世代は、中学時代に軟式で150キロをマークした森木大智(高知)が入学前から大評判だったが、それが大きな刺激となって同学年の投手たちがレベルアップしてきたことは十分に考えられる。森木以外にも、昨年夏の秋田県代替大会で150キロをマークした風間球打(ノースアジア大明桜)、全道大会で木村と投手戦を演じた田中楓基(旭川実)、大型左腕の金井慎之介(横浜)、沢山優介(掛川西)など、出場を逃した投手の中にも好素材は多いが、まずは選抜で今回紹介した投手たちが、見事なパフォーマンスを見せてくれることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。