イタリア、イングランドが決勝(現地7月11日開催)に駒を進めた欧州選手権は、国の威信をかけた戦いであるのと同時に、選手個人が名前を売るのにも絶好の舞台でもある。開催されるたびに、新たなスター選手が誕生する同大会だが、今年のEURO2020で評価を大きく上げた6選手を紹介したいと思う。



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■マヌエル・ロカテッリ(イタリア)

2020−21シーズンのセリエAを騒がせたサッスオーロのレジスタが、“アッズーリ”でも躍動。所属クラブよりも攻撃的なポジションを任されると、アタッキングセンスが開花。パスワークにも参加しつつ、持ち前の戦術眼で相手の死角をうまく取りながらボックス内へ侵入し、ネットを揺らす。スイス戦ではまさにその長所が生かされた先制点の他、逆足で鋭いミドルシュートも叩き込んでみせ、スター・オブ・ザ・マッチに輝いた。タックル数(14)も全体で2位タイにつけており、前線から積極的にプレッシングを狙う中で守備のキーマンにもなっている。大会屈指の中盤を誇るイタリアゆえに先発で出場する機会は多くはなかったが、優勝まであと一歩と迫っている絶好調の彼らをけん引したのは間違いない。すでにユヴェントスやアーセナル等ビッグクラブの関心も聞こえてきており、今夏のステップアップは確実視されている。今大会のブレークスターの1人だろう。


■デンゼル・ダンフリース(オランダ)

ラウンド16でチェコを前に無念の敗退を喫したオランダだったが、最もインパクトを残したのがダンフリースだろう。190cm近い身長と屈強な体躯を誇る大型サイドバックは、所属のPSVより一列前で全4試合に先発出場。システムのかみ合わせ上フリーになることが多かったとはいえ、クロスへの迫力ある飛び込みはオランダ最大の武器となり、DFながら2ゴールを奪った。今大会を沸かせた1人だろう。この25歳のサイドバックにはドイツ王者バイエルン・ミュンヘンなどからの関心が伝えられており、PSVのロジャー・シュミット監督も「サッカーとはそういうもの」と退団を覚悟。本人も大会前にステップアップ希望を公言していた。今後の動向にも注目だ。


■ブカヨ・サカ(イングランド)

開幕2試合で勝ち点4を稼ぎながら、イングランドには“いつも通り”の閉塞感が漂っていた。世界トップクラスのタレントを豊富に抱えながら、攻撃のバリエーションもテンポもなく、当然のように批判の声が強まった。そんな空気を一変させたのが、第3戦で初出場を飾ったサカだ。わずか19歳で名門アーセナルのシーズンMVPに輝いた彼は、初出場の大舞台でも躍動。チェコ戦で最多4度のドリブルを成功させ、スター・オブ・ザ・マッチを獲得(ちなみに代表デビューから5試合で3度目のMVP)。イングランドに新しい風を吹かせると、宿敵ドイツ戦でも巧みなポジショニングで攻撃に彩りを加えている。またピッチ外でも、練習後のプールでのクールダウン中に撮られたあどけなさ全開の姿がSNSで大反響を呼んでおり、すっかり国民の「愛されキャラ」となった。市場価格6500万ユーロ(transfermarkt)を超える彼は、来季もアーセナルの7番を背負って戦うことが濃厚。すでに多彩な才能を発揮するサカだが、新シーズンはどんな成長を見せてくれるのだろうか。


■レオナルド・スピナッツォーラ(イタリア)

セリエA好きの方にはおなじみの名前かもしれないが、初の国際主要大会で大ブレーク。チームとして最高の完成度を誇る“アッズリーリ”の中で、ロレンツォ・インシーニェと共に左サイドを支配。攻撃時にはウイングとして常に前を向いてしかけ続け、相手DFの脅威になり続けた。DFながら出場4試合のドリブル数(17)は全体6位タイ。トップスピード(33.8km/h)はトップタイだ。2アシストを記録し、延長戦にもつれ込む激闘となったオーストリア戦を含め、2度もスター・オブ・ザ・マッチに輝いている。しかし、非常に残念ながらベルギー戦でアキレス腱断裂の重傷。最低でも4カ月以上の長期離脱を強いられることになってしまった。キャリア最高の時期での大怪我は本人が一番悔しいだろうが、チームを去る際に見せた仲間の健闘を称える姿が感動を呼んでいる。おそらくピッチで再びその姿を見られるのは来年になるだろうが、ジョゼ・モウリーニョと共に首を長くして待とう。


■パトリック・シック(チェコ)

大会前の欧州での評価は最低クラスだったものの、完成度の高いパフォーマンスでオランダを破って準々決勝に進出し、今大会のサプライズとなったチェコ。そんな“伏兵”の絶対的エースがシックだ。190cm近い身長を誇りながらスピードに溢れ、繊細なタッチでDFを翻弄。また独特の間合いと懐の深さで相手を飛び込ませず、シュートチャンスも逃さない(チェコが奪った6ゴール中、5ゴールが彼のもの)。スコットランド戦の45mロングシュートは、今大会のベストゴールだろう。UEFAが発表するプレイヤーランキングでも堂々の2位。大きく評価を上げた1人だ。昨夏にレヴァークーゼンへ完全移籍したばかりだが、さらなるメガクラブへの移籍もあり得るかもしれない。


■ミッケル・ダムスゴー(デンマーク)

目の前でチームメイトが心肺停止に陥るという悲劇を体験。あまりの精神的ショックに、サッカーどころではなかったはずだ。初戦を終えたカスパー・ヒュルマン監督も認めている。グループリーグでは2連敗を喫した。それでも、迅速で勇敢な対応で仲間の命を救ったばかりか、第3戦の奇跡的な勝利で決勝トーナメントに進出。ノックアウトステージではさらに成熟し、29年ぶりにベスト4へ駒を進めた。今大会のデンマークは、全世界からこれ以上ないほどの称賛を受けるべきだろう。そんなチームで躍動するブレークスターが、ダムスゴーだ。若くして“デンマークのアザール”などと注目を集めたアタッカーはサンプドリアで充実のシーズンを送った後、EUROでも印象的な活躍を見せている。左右両サイドやトップ下を器用にこなし、高いテクニックの他、スプリントを繰り返せる走力は大きな魅力。2ゴール1アシストと結果も残している。奇跡的な復活を目指すクリスティアン・エリクセンに憧れてきた21歳は、その先輩と同じく偉大なキャリアを歩んでいけるだろうか。バルセロナなどの関心も聞こえているが、今夏の去就にも注目だ。

(文・三上凌平)