今季、目覚ましい活躍を見せたエンゼルス・大谷翔平(27)。本塁打王は逃したものの、今もMVPの最有力候補と目されている。「二刀流」で驚くべき活躍をみせた大谷だが、特に米国メディアが注目したのは「投」での活躍だった。AERA 2021年10月18日号の記事を紹介する。

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 米国メディアの驚きは「投球での覚醒」だったという。大谷の「二刀流」に懐疑的な見方が少なくなかったのは、大リーグで目立った投手成績を残していなかったからだった。

 1年目の18年は右肘(ひじ)の内側側副靱帯(じんたい)損傷で1カ月戦線離脱するなどしたため、10試合登板で4勝2敗、防御率3.31。同年オフに右肘靱帯再建手術(トミー・ジョン手術)を受けた影響で、19年は野手に専念して登板機会がなかった。昨年も右屈曲回内筋群損傷で2試合の登板に終わり、0勝1敗、防御率37.80だった。「投手でケガをすることで打撃にも影響する。大谷は打者に専念するべきだ」と二刀流に反対する声が高まった。

■「エリートスターター」

 しかし、大谷は想像を超える進化を見せた。トミー・ジョン手術を受けて3年近くが経ち、腕の振りが体になじんだのもあるだろう。テイクバックをコンパクトにした新しい投球フォームで制球力が見違えるように改善した。相手打者が際どい球をよけずに死球で出塁する場面もあり、夏場以降は数字以上に制球力が安定していた。日本ハム時代からの課題だった変化球の精度が上がったことで直球も生きる。走者がいないときの球速は150キロ台に抑え、ピンチで160キロ台をたたき出した。

「今年最後の登板(9月26日のマリナーズ戦)は圧巻だった。7回1失点で勝ち投手にはなれなかったが、直球がコースに決まり、変化球の制球も抜群。あれでは打者もお手上げだ。大リーグでは制球力、快速球をトップレベルで兼ね備えた上位5パーセントの投手たちを『エリートスターター』と形容する。7月以降の大谷を見ると、そう呼ぶ価値が十分にある。もう二刀流に文句をつける人はいない。シーズンを通じてこの投球を続ければ、最多勝、最優秀防御率も狙える。打っては本塁打王、投げては最多勝。こんな夢物語を達成できる選手は大谷しかいない」(米国在住のフリーライター)

 試合を重ねるごとに注目度が高まり、大谷が打席に入ると「MVP!」コールが起きるようになった。それはエンゼルスファンだけではない。来年はどんなパフォーマンスを見せてくれるか。シーズンを終えたばかりで気が早いかもしれないが、さらなる進化に胸が高鳴るばかりだ。(ライター・牧忠則)

※AERA 2021年10月18日号より抜粋