「ヤクルトの4番」から、「球界の4番」へ。

 ヤクルト・村上宗隆が首位を快走するチームを牽引している。10月15日現在で打率.282、39本塁打、107打点。本塁打はリーグトップ、打点も岡本和真と並ぶリーグトップタイで打撃2冠が見えてきた。王手をかけている40本塁打に21歳で到達すれば、1963年の王貞治、85年の秋山幸二の23歳を抜く最年少記録だ。

「デビューした当時は、一本立ちするまでにもう少し時間がかかるかなと思いました。ボールを遠くへ飛ばす才能は目を見張るものがありましたが、直球に振り遅れたり、差し込まれるケースが目立った。打者のタイプや成長曲線としては筒香嘉智(パイレーツ)に近かったですが、そのイメージを覆す速さで成長している。村上の強みは左翼に本塁打を飛ばせること。左打者で逆方向に長打を飛ばせる選手は少ないんです。特に右投げ左打ちの選手が左翼方向に飛ばすためには、利き手でない左手で押し込まなければいけない。どうしても打球が失速してしまうんです。でも村上はリストの力が強いので、左翼方向にも打球が伸びる。松井秀喜(元巨人)も凄かったですが、21歳という年齢を考えるとそれを上回る衝撃ですね」(スポーツ紙記者)

 ヤクルトにドラフト1位で入団したのは4年前。清宮幸太郎(日本ハム)の「外れ1位」だった。新人の2018年9月16日の広島戦(神宮)でプロ初打席初アーチのド派手なデビューを飾ったが、その後は13打数無安打。打率.083、1本塁打、2打点とプロの厳しさも味わった。だが、目を見張る適応能力の高さで成長を遂げる。19年は全143試合出場し、打率.231、36本塁打、96打点をマーク。高卒2年目以内のシーズンで最多本塁打、最多打点の記録を更新した。新型コロナウイルスの影響により、120試合制で開催された昨季は打率.307、28本塁打、86打点。課題とされていた直球をはじき返せるようになり、ボール球になる変化球を見極められるようになった。リーグ最多の86四球で打率も大幅にアップ。最高出塁率(.427)のタイトルを獲得した。

 今年は侍ジャパンの最年少で東京五輪に出場し、金メダル獲得に貢献。チームでも中心選手としての自覚が十分。常にベンチで声を張り上げている。打撃も7月まではなかなか上向かなかったが、8月は月間打率.378、5本塁打、12打点、9月も月間打率.348、5本塁打、23打点と暑さと共に調子を上げた。10月に入っても好調でリーグ優勝と共に、2冠王に向けて視界良好だ。

 中日担当を過去にしていたスポーツ紙記者が「こんな数字見たことない」と驚くデータがある。今季中日の本拠地・バンテリンドームナゴヤで13試合出場し、打率.300、4本塁打、12打点。この4本は全て逆方向の左翼席に運んでいる。

「広いバンテリンドームナゴヤは投手有利と呼ばれ、甲子園と並んで本塁打が出にくい球場の1つです。それなのに逆方向にシーズン4本の本塁打…。そんな打者は今まで聞いたことがありません。長打を防ぐために外角攻めがセオリーですが、村上には通用しない。将来は50本塁打、バレンティンの日本記録60本塁打を超える可能性が十分にあると思います」

 村上のアーチはロマンが詰まっている。リーグ優勝に向け、4番の一撃でラストスパートをかける。(牧忠則)