北京オリンピックまで4カ月を切った。羽生結弦、宇野昌磨、紀平梨花らが出場するフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズが10月22日に開幕。五輪有望選手の動向を、フィギュアスケートを長年取材するライター・田村明子さんが予測分析した。

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 10月22日からラスベガスで開催されるスケートアメリカを皮切りに、いよいよ今季のグランプリ(GP)シリーズが開幕する。2022年2月の北京オリンピックに向けて本格的なシーズンスタートだ。

 日本は男女ともオリンピック出場枠3枠を獲得したが、メインになるライバルは女子では圧巻の強さを見せるロシアと、アメリカ。男子はやはりアメリカ、ロシア勢とメダルを競うことが予想される。今季のGPシリーズでの見どころをいくつかあげてみたい。

 初戦スケートアメリカには、日本から男子は宇野昌磨と、佐藤駿が出場する。宇野は10月2日のジャパンオープンでは、フリー「ボレロ」に五つの4回転ジャンプを組み込み、難易度を最大限まで上げた構成で挑んだ。優勝したものの二つジャンプミスが出たが、どこまで調整してくるかに注目。また4回転ルッツを成功させて2位だった佐藤駿にとっては、アメリカがシニアとして初の海外GP戦となる。最大のライバルは言うまでもなく、安定して高いレベルの演技を見せ続けてきた世界チャンピオンのネーサン・チェン。そして9月のネーベルホルン杯で優勝したビンセント・ゾウだろう。

 一方女子は、坂本花織と宮原知子らが、ロシアのアレクサンドラ・トルソワらに挑むことになる。9月にロシアで行われたテストスケートイベントで、トルソワはフリーで5度の4回転を着氷した。大技だけにミスも多いが、この構成で完璧に滑り切ったら女子で彼女より高いポイントを出せる選手は存在しない。それどころか男子でも対抗できるのは、一握りのトップ選手のみという難易度の高さである。表彰台の顔ぶれは彼女の調子次第と言っても過言ではない、目の離せない存在だ。男女以外で注目して欲しいのは、ペアの三浦璃来&木原龍一だ。9月のオータムクラシックで日本のペアとしてシニア国際大会初優勝。アメリカで初のGPメダル獲得なるか、楽しみだ。

 2戦目のスケートカナダは、女子は今シリーズ最大の激戦区になりそうだ。海外勢はロシアのエリザベータ・トゥクタミシェワ、アリョーナ・コストルナヤ、そして注目の新人15歳のカミラ・ワリエワがシニアGPデビューをする。もう一人注目の新人はアメリカの16歳、アリサ・リュウだ。ワリエワとリュウは北京のメダリスト候補としてジュニアの頃から注目されていた。だが彼女たちが4年前のアリーナ・ザギトワのようにすごい勢いでシニアの舞台を征服していくかどうかは未知数だ。リュウは昨年大人の体形になってジャンプの難易度は落としてきたが、今季ロンバルディア杯、ネーベルホルン杯と2試合連勝。いずれにしても、要注目の若手であることには変わりない。

 日本からは今季からブライアン・オーサー・コーチに師事する紀平梨花と、ジャパンオープンでトリプルアクセルを成功させて優勝した樋口新葉が出場する。紀平は、ジャンプの調整がどこまでできているだろうか。オーサーは常々、新しく来た選手を調整するのに2シーズンかかると語っていたが、紀平は4カ月後の北京まで時間との戦いになりそうだ。

◆GPファイナル 大阪で12月開催

 3戦目の中国杯は中国の辞退により急きょイタリアのトリノでの開催に変更された。女子は三原舞依、宮原知子が出場。現世界チャンピオン、ロシアのアンナ・シェルバコワ、アメリカのブレイディ・テネルなどの強豪たちとあたる。けがから回復したばかりというシェルバコワは今季まだ4回転を戻してきていないものの、安定した高い技術は健在だ。

 男子は鍵山優真、友野一希がミハイル・コリャダ、ディミトリ・アリエフ、ピョートル・グメンニクのロシア勢、韓国のチャ・ジュンファン、中国のボーヤン・ジンと顔を合わせる。鍵山は10月の関東選手権で初めて試合で4回転ループに挑み、回転不足だった。どのくらい完成度を上げてくるか、注目したい。

 4戦目のNHK杯では、いよいよ羽生結弦が登場する。3位だったストックホルム世界選手権で報道陣に、パンデミックで帰国した練習環境が思いのほか快適だったことを告白。今シーズンもカナダに戻らずに、日本でトレーニングを続けてきた。北京オリンピックに出場する意思があるのかどうか、4回転アクセルにいよいよ試合で挑戦するのか。オフシーズンの間、ずっと沈黙を守ってきた羽生だが、いろいろなことが明らかになるだろう。宇野昌磨が初めてNHK杯で羽生と顔をそろえる豪華なキャスティングになる。またアイスダンスでは、9月にフロリダの試合で高いスコアで優勝した村元哉中&高橋大輔にも期待がかかる。

 5戦目のフランス杯では、鍵山、佐藤の若手二人がアリエフらのロシア勢や、アメリカのベテラン、ジェーソン・ブラウンと表彰台を競うことが予想される。

 そして最終戦のロステレコム杯は、再び羽生結弦が、友野一希、田中刑事と赴く。この合計6試合で高い成績を収めたトップ6選手が12月に大阪で開催されるGPファイナルに進出する。日本は2005/06年シーズンから、オリンピックシーズンのGPファイナルを開催してきた。オリンピックの前哨戦となるGPファイナルは、さぞ盛り上がることだろう。(ライター・田村明子)

※週刊朝日  2021年10月29日号