来年2月に行われる北京五輪のフィギュアスケート日本女子代表の枠は三つ。現状、誰が選ばれるか予想するのはとても難しい。

 昨季までの成績と持っている大技を考慮すると、紀平梨花が頭一つ抜けているといえるだろう。ただ、今季の紀平は右足関節骨軟骨損傷の回復が遅れており、グランプリシリーズはスケートカナダに続きNHK杯も棄権を余儀なくされている。全日本選手権が今季初戦となるが、昨季も初戦となった全日本で初めて4回転サルコウを決めており、今年も女王らしい演技をみせてくれるに違いない。

 平昌五輪代表の坂本花織は、昨季の世界選手権で6位に入り、日本の北京五輪出場枠“3”の獲得に貢献した。トリプルアクセルや4回転などの大技は怪我のリスクも考慮して組み込まず、演技の完成度を優先する戦略をとっている。今季は難しいフリープログラムに苦戦していたものの、グランプリシリーズ初戦のスケートアメリカでは演技をまとめて4位に入り、NHK杯では素晴らしい演技をみせて優勝、グランプリファイナル進出を決めた。

 NHK杯を戦い終え、坂本は今季ここまでの試合で得た手応えを語っている。

「グランプリ2戦終わって、大きなミスというのはアメリカのショートの3回転−3回転(ファーストジャンプが2回転になる)だけだったので、ちょっとずつ“自分には安定した演技ができるんだぞ”ということを見せられたかなと思う。今回、ショートもフリーも取りこぼしや回転不足などいろいろあったので、まだまだ(得点を)更新し続けられるんじゃないかな」(坂本)

 グランプリファイナル、全日本とさらに調子を上げられれば、二大会連続の五輪出場が近づく。

 昨季全日本ジュニア女王の松生理乃も、NHK杯に出場した。後半に組み込むコンビネーションジャンプもきっちり決める抜群の安定感が武器だが、今大会は右足首を負傷しており、万全の状態ではなかった。ショートではジャンプの回転不足があり、フリーでも後半のジャンプにミスが出て6位に終わる。試合後の松生は演技構成を落とした悔しさも口にしたが、グランプリシリーズ2戦目となるロシア杯に向け前を向いている。

「自分がどういう状況にあったとしても、しっかりと気持ちを強く持って練習すれば、完璧な演技ではなくても後悔はしない演技ができるというのは今回学べた。しっかりとどんな状況にあっても気持ちを強く持つということは、今後にもたくさん生かしていけると思いました」(松生)

 またNHK杯には、紀平の負傷による繰り上がりで一昨季全日本ジュニア女王の河辺愛菜も出場した。グランプリシリーズ初戦のスケートカナダではショートプログラム冒頭のトリプルアクセルを失敗しているが、このNHK杯のショートでも果敢にトリプルアクセルに挑み、2.06の加点がつく出来栄えで成功させている。フリーではトリプルアクセルで転倒したもののその後のジャンプを決め、2位となって表彰台に上がった。

「試合で(トリプル)アクセルを決められる確率が、少しずつですけど上がってきてはいるので、全日本までスピンとかステップも練習して、完璧な演技を見せられるように頑張りたいです」(河辺)

 NHK杯でのメダル獲得により、河辺は北京五輪代表候補としての存在感を一気に増したといえる。

 紀平とNHK杯に出場した3人に三原舞依、樋口新葉、宮原知子らも加えた代表候補たちの全日本での結果の重要性が増している。12月22日からにさいたまスーパーアリーナで行われる全日本選手権は、熱い戦いになりそうだ。(文・沢田聡子)

●沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」