本大会への出場枠をめぐり、各国がしのぎを削ってきたW杯アジア予選。2026年大会ではアジア枠がほぼ倍増する。どんな影響があるだろうか。AERA 2022年9月12日号より紹介する。

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 サッカー・ワールドカップ(W杯)のアジア予選が、大激変する。8月1日、アジアサッカー連盟は、アメリカ・カナダ・メキシコが共催するW杯2026年大会の予選方式を発表。現在4.5チームが本大会へ進めるアジア枠(0.5は大陸間プレーオフ)が、8.5に増枠されることが明らかになった。W杯本大会はこれまで32チームで争われてきたが、26年大会からは48チームが出場する。アジア枠がほぼ倍増するのもその影響だ。

貴重な強化の場だった

 日本は、アジア枠が3.5だった1998年フランス大会でW杯初出場。その後、今年11月に開幕するカタール大会まで7大会連続で出場を決めてきた。ただし、アジア予選での戦いが常に盤石だったわけではない。アジア予選では、日本や韓国、イラン、サウジアラビア、オーストラリアといった常連国に加え、中東の中堅国、さらにはウズベキスタンや中国などの新興国が4.5枠を目指してしのぎを削る。カタール大会の最終予選では、初戦でオマーン、第3戦でサウジアラビアに敗れ、一気に土俵際に追い詰められた。その後6連勝して本大会出場を決めたが、文字通り「絶対に負けられない戦い」が続いた。一方、本大会出場枠が8.5になれば、日本にとってアジア予選は「ぬるま湯」になるだろう。

 サッカー元日本代表で、現在は解説者として活躍する福田正博さんはこう懸念する。

「活動期間が限られる日本代表にとって、フルメンバーで真剣勝負をするアジア最終予選は貴重な強化の場でした。しかし、アジア枠が8.5となれば、日本にとって予選はあってないようなものになる。強化のチャンスが今以上に失われ、世界との差はさらに広がりかねません」

地上波で中継なし

 そして最大の懸念が、ライト層のさらなるサッカー離れだ。

 W杯初出場を決めた「ジョホールバルの歓喜」(97年)や、02年日韓W杯の盛り上がりを覚えている人は多いだろう。それ以降も、W杯本大会はもちろん、アジア最終予選やアジアカップなどの折に代表人気は高まった。だが、いまその熱はない。マクロミルと三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行う「スポーツマーケティング基礎調査」によると、「サッカー日本代表ファン」は11年に4717万人いたが、21年には2180万人と半数以下に落ち込んでいる。

 一方、それと逆行するように放映権料は高騰している。カタール大会のアジア最終予選は、ホームゲームこそテレビ朝日が地上波で中継したものの、高視聴率が見込みづらいアウェー戦は手を出せず、有料動画配信サービスのみでの放送になった。日本代表が本大会出場を決めた試合(写真)も地上波で中継されていない。福田さんは続ける。

「Jリーグも似たような状況で、サッカー中継は既に限られたコアなファンのためのものになりつつあります。W杯出場チーム数の増加でアジア予選の魅力が失われれば、日本代表の試合を地上波で見られる機会はさらに少なくなるでしょう。ライトなファン層のサッカー離れがより進みかねない。テレビで代表の活躍を見てサッカーを志す子どもたちが減ると裾野がしぼみ、日本代表の弱体化にもつながってしまいます」

 日本にとって懸案だらけのW杯改革。代表のレベルと魅力をどう維持し、高めていくか。

「まずは目前に迫ったW杯カタール大会で、日本中が盛り上がるような戦いを見せてほしい。ドイツ、スペインと同組になった日本がグループステージを勝ち抜けば、世界的なニュースです。子どもたちにも日本代表はできるんだと思える試合を見せることができれば、それが次の大会やその次の大会にもつながっていくはずです」(福田さん)

(編集部・川口穣)

※AERA 2022年9月12日号