エンゼルスの大谷翔平は2年連続のア・リーグ最優秀選手(MVP)受賞を逃した。それでも、二刀流で過去にない成績を残した今季の活躍は決して色あせない。AERA2022年11月28日号の記事を紹介する。

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 11月18日(日本時間)に発表されたア・リーグMVPは、62本塁打を放ったヤンキースのアーロン・ジャッジ(30)が初受賞した。MVPは全米野球記者協会(BBWAA)の各支部から選ばれた30人の記者の投票で選出される。ジャッジが有利という報道が多かったが、予想外の大差がついたと言える。ジャッジは1位投票が28票でトータル410ポイント、エンゼルスの大谷翔平(28)は1位投票が2票でトータル280ポイントだった。

■「クリーン」な62本塁打

 米国駐在の通信員は言う。

「ジャッジはア・リーグ新記録の62本塁打を放ったインパクトが大きかった。2001年にナ・リーグでシーズン記録の73本塁打を放ったバリー・ボンズを筆頭に、1990年代から00年代にかけてマーク・マグワイア、サミー・ソーサら強打者は筋肉増強作用のあるステロイドを使用していたという疑惑が取り沙汰された。ジャッジはクリーンな記録として新たな歴史を作った。ヤンキースをポストシーズン進出に導く活躍を見せた貢献度も評価されたと思います。大谷はエンゼルスが早々と優勝争いから脱落し、スポーツニュースで取り上げられる機会がジャッジに比べて大幅に少なかった。印象度の点でも投票に影響したと思います」

 だが、大谷の活躍は色あせない。投手として15勝9敗、防御率2.33、219奪三振。打者でも打率2割7分3厘、34本塁打、95打点をマーク。大リーグ史上初となる規定打席と規定投球回の両方に到達し、ベーブ・ルース以来大リーグで104年ぶりの2桁勝利&2桁本塁打を達成した。米紙ワシントン・ポストのニール・グリーンバーグ記者は、

「ショウヘイ・オオタニが21年に満票でMVPに輝き、22年はさらにいいシーズンを送ったのに、MVPに選ばれなかったのは理解できない」

 と自身のツイッターで今回の投票結果に疑問を呈した。

■投手の印象が強かった

 1位投票が集まらなかった理由は、「投手・大谷」が活躍した印象が強かったのも一つの要因かもしれない。

 昨年は投手で9勝2敗、防御率3.18、打者で打率2割5分7厘、46本塁打、100打点。今年の成績と比較すると、投手で6勝を上積みし、防御率も大幅に改善した。大リーグで自身初の規定投球回数にも到達した。一方、打撃成績は昨年より本塁打を12本減らしたが、打率は1分6厘上がっている。グリーンバーグ記者の指摘通り、今年は投打でステップアップしているように感じる。

 ところが、大谷を取材するスポーツ紙記者は違う見方を示す。

「米国の野球ファンは本塁打が野球の一番の華だと思っています。大谷は昨年、シーズン終盤まで熾烈(しれつ)な本塁打王争いを繰り広げた。ホームランアーティストとしての活躍が大きなインパクトを残したと思います。今年は投手で申し分ない成績を残していますが、MVPは打者が選ばれやすい傾向がある。投手はサイ・ヤング賞(最優秀投手賞)があるのですみ分けができている感じがします。実際にア・リーグで投手がMVPに選ばれたのは11年にタイガースで活躍したジャスティン・バーランダー(39)までさかのぼります。二刀流でこれほどの成績を残した選手が過去にいなかったので、大谷が残した数字にどれほどの価値があるのか判断基準が難しい部分もある。その功績が評価される時代はもう少し後かもしれません」

 来年はどんな活躍を見せるか。MVPを獲得できなくても、最もパフォーマンスが注目される選手である事実は変わらない。(ライター・今川秀悟)

※AERA 2022年11月28日号