ワールドカップカタール大会で日本代表を率いた森保一監督の続投が決まった。日本代表は1998年のフランス大会からW杯に7大会連続出場したが、大会終了後に監督が続投するのは今回が初めてとなる。
大会前に、森保監督の続投を想像できたサッカーファンは少ないかもしれない。カタールW杯までの4年間で、森保監督の手腕が疑問視され、「監督交代の危機」を迎えたことは何度もあった。攻撃の戦術で引き出しが少なく、試合中の交代も有効な策が少ない。メンバーが固定化されていたことにも批判の矛先が向けられた。個々の能力に依存した攻撃で選手間の連動性がないため、森保監督の下で能力を発揮できない選手もいた。その代表格が古橋亨梧(セルティック)だろう。
日本代表では1トップで起用される機会が多かったが、ポストプレーでボールを収めるタイプではない。DFラインの背後を狙い、中盤から良いパスが供給されることで輝く選手だが、絶妙なポジションに走り込んでもボールが出てこない。試合中に消えている時間が多く、日本代表では16試合出場で3ゴールのみ。セルティックでは得点を重ねて好調だったが、W杯で落選したのは致し方ない。森保ジャパンで居場所が見つからなかった。
今回のW杯で森保監督の評価は一変した。グループリーグで優勝候補のドイツ、スペインを撃破。決勝トーナメント1回戦でクロアチアにPK戦の末に敗れて目標のベスト8進出は叶わなかったが、交代策が的中し、選手たちの信頼も厚かった。今回のW杯で日本代表26人のメンバーのうち、初出場は19選手。冨安健洋(アーセナル)、堂安律(フライブルク)、三笘薫(ブライトン)らは4年後もW杯の主軸として期待される。日本サッカー協会は現体制の伸びしろが大きいと判断したのだろう。
ただ、森保体制を続けることには賛否両論の意見がある。サッカー評論家の中でも異を唱える声が。
元日本代表の城彰二氏は、同じく元日本代表の前園真聖氏のYouTubeチャンネルに出演。森保監督の続投について聞かれると、「いや、続投しない」と主張した上で、「一番の目標って何だったのって考えると、ベスト8なのよ。新しい景色を見に行くって言ってやったの。でも結果は出てないの。だけど、日本人の特徴というか、凄いことなんだけど、ドイツ、スペインに勝ったからいいじゃない、で終わっちゃってる。そこをはぐらかされるのがすごい嫌で。森保さんを続投させるなら、アドバイザーで経験値の高い外国の人を入れたらいい。森保さん1人じゃ無理だし、あのコーチ陣じゃ無理。世界経験してないんだもん」と語気を強めた。
日本代表を取材するスポーツ紙記者は、「メンバーがガラッと入れ替わる可能性もある」と指摘する。
「今回のメンバーで言えば、久保建英(レアル・ソシエダ)は代表入りの当落線上だった。テクニックは屈指だが、守備の強度に課題があり、まだ90分間持たない。今回のW杯でもスペイン戦は良いプレーを見せていたが、戦術上の問題により前半終了で交代した。能力は高い選手だが、他の選手と違いを見せるまではたどりついていない。森保監督の期待が大きい選手だが、今後も日本代表入りが保証されているわけではない」
4年後に向けての戦いは始まっている。他国がレベルアップを進める中、日本代表はどう進化を遂げるか。(今川秀悟)