日本ハムは今季から新球場エスコンフィールド北海道に本拠地を移転する。
エスコンフィールドは日本初の開閉式屋根を持つ天然芝の球場。魅力満載で開業前から話題となっており、今シーズンはプロ野球界のトピックの一つになるのは間違いないだろう。
「野球ファンのみならず、多くの人たちが1度は足を運んでみたいはず。アクセスなどで懸念される部分があるものの、設備の素晴らしさが伝わってくる。北海道のみならず、日本を代表するランドマーク的建設物になる可能性がある」(在京キー局スポーツ担当者)
温泉や宿泊施設、クラフトビール醸造所があるレストランや多くのアクティビティなど、イベントがない日でも人が集まることができる工夫がされている。JRの新駅建設計画もあり、球場を中心とした町づくりが進められている。
エスコンフィールドが注目を集める中、気になるのが日本ハムが去った後の札幌ドーム(以下ドーム)の未来だ。
「(ドームは)人が常にいる(住む)ところでイベントを行うという発想で、イベントのために人を呼ぶという考えとは正反対です。最も多く使用していた日本ハムがいなくなった今後が心配ではあります」(大手広告代理店関係者)
コロナ禍前の2019年度のドームは日本ハムの試合開催を中心に、Jリーグの北海道コンサドーレ札幌、展示会や自主イベントなどを合わせ、130日前後の稼働だった。今年度もイベントやコンサート誘致計画が進み100日程度は稼動できるメドは立っているという。コロナ禍の影響も残り今年度は赤字になる予想ではあるが、未来へ向けて着実に動き始めているようにも見える。
そして、今後へ向けてドームが新たに打ち出した戦略が「新コンサートモード」。天井からおろしたカーテンで客席を仕切って2万人規模の会場を作るというものだ。3月から稼働の予定で、2024年度以降に単年度黒字転換するための柱の1つと見込んでいるが、どれだけイベントを誘致できる効果があるかは今のところ不透明だ。
「コンサートは映像配信の普及もあり2万人規模の箱でも埋めるのは難しくなっている。それができる演者なら3万人以上の規模で開催する。ファン側も大箱というプレミア感を感じたい。カーテンで仕切ることで音質も下がるはずで、中途半端な戦略にも思える」(音楽雑誌編集者)
スポーツなどのイベント以外でも一般ユーザーからの収益増を目指している。サッカー開催時にドーム内へ取り込まれるホヴァリングステージや室内ブルペンを一般に貸し出す。またトレーニングルームの個人利用、名物になりつつあった地上53mの展望台など、収益を上げるアイデアは決し少なくないが……。
「色々やろうとしているが野球に勝るコンテンツはない。プロ、アマを問わず野球の注目度は高く、観客動員や物販販売も見込める。今後は高校野球の試合開催をめぐるドームとエスコンフィールドとの綱引きもあるかもしれない」(大手広告代理店関係者)
野球の会場としては、今秋の全道高校野球大会でドームが使用される。これまで札幌市内の円山、麻生の両球場で行われていたものがドームに移り開催される予定で、高校野球の公式戦がドームで行われるのは初めてとなる。ドームはNPBの他球団の試合を含め、引き続き野球の試合を開催していくことも、生き残りのためのカギとなりそうだ。
そういった意味では、ドームはいまだ北海道のファンにとっては特別な球場であるというのは強み。3月4、5日にはオープン戦(楽天戦)が2試合行われることも発表されている。2004年の移転から昨年までの19年間でリーグ優勝5回、日本一2回を成し遂げた歴史もあり、今後は他球団ではなく日本ハムの公式戦も行われることもあるのだろうか。
「ドームでオープン戦が開催されることには驚きました。ですが、これは日本ハムとして最後の奉仕でしょう。反響によっては、ドーム側から年間数試合の公式戦開催を打診する可能性もあるのではないでしょうか。実現の可能性は低いと思いますが……」(在京キー局スポーツ担当者)
様々な試みが今後も続くと見られているが、やはりドームの未来ついては厳しい見方が多いのは事実だ。
「日本ハムの度重なる要望を聞かず営業面での利益を追求したことで出ていかれてしまった。よほどの営業努力をしないと今後は厳しくなるとは思う」(日本ハム担当記者)
日本ハムがドームを本拠地としていた時代はリース料(使用料金)のほか、広告、グッズ販売、飲食など興行時の売り上げも入る契約だった。年間20億円超とも言われていた収入がなくなるため、今後は同額分を別から生み出さなければならない。
「来年、優勝だけを目指してぶれずに戦っていこうと思います」(新庄剛志監督/11月23日のファンフェスティバル)
新庄監督の新たなシーズンへの向けての誓いも、エスコンフィールドからビジョン越しにファンに送られた。日本ハムはこれまでドームで積み上げた歴史を、新たにエスコンフィールドで引き継ごうとしている。新球場はまもなく開業されるが、そんな中でドームは存在感を維持し、生き残ることはできるのだろうか。