巨人が21日、春季キャンプのメンバー振り分けを発表した。ソフトバンクから加入した松田宣浩、広島から無償トレードで復帰した長野久義の両ベテランのほか、新人はドラフト2位の萩尾匡也(慶大)、4位の門脇誠(創価大)、5位の船迫大雅投手(西濃運輸)が一軍スタートに。高校№1野手として名を轟かせた1位・浅野翔吾(高松商)は二軍スタートとなった。
そして、一軍入りしたメンバーで注目される存在が、昨オフに現役ドラフトで楽天から移籍したオコエ瑠偉だ。巨人を取材するスポーツ紙記者は、「松原聖弥、重信慎之介、石川慎吾を押しのける形で1軍のメンバー入りしたことは正直驚きました。ただ、これは現在の実力を反映しているというより、1軍の首脳陣が新戦力としてどれだけ動けるのか確認したい意味合いが強いと思います。他球団を見渡しても、現役ドラフトで移籍した選手たちがキャンプで1軍メンバー入りしている。オコエもそうだが、開幕がスタートではない。このキャンプの実戦で結果を残して1軍に残れるか。練習でリタイアしているようだったら話にならない。期待値は高いと思うので、新たな風を吹き込んでほしいですね」と語る。
肩が強く、俊足でスイングスピードも速い。楽天にドラフト1位で入団したのが、15年秋。3拍子揃った選手として将来を嘱望されたが、その恵まれた才能を生かせないまま、伸び悩んでいる。チャンスがなかったわけではない。楽天は左打者が多いため、右でパンチ力があるオコエは貴重な存在だったが1軍に定着できない。石井一久監督から精神面での甘さを指摘されることもあった。昨季は自己最少の6試合出場で打率.200、0本塁打。ドラフト1位で獲得した選手を放出するのはチームにとっても大きな決断だったが、結果が全ての世界だ。楽天は新天地に移籍した方が、オコエにとって良いと判断したのだろう。
戦力層が厚い巨人だが、オコエも目に見える結果でアピールし続ければ、レギュラー獲りのチャンスはある。外野は左翼がウォーカー、右翼は中堅からコンバートされた丸佳浩が基本形となるが、中堅が固まっていない。メジャー28本塁打をマークしたルイス・ブリンソンが最有力候補だが、助っ人は未知数だ。日本野球に適応できる保証はない。
キャンプは2軍スタートとなった松原も虎視眈々と定位置奪取を狙っている。21年は135試合出場で打率.274、12本塁打、37打点、15盗塁と頭角を現したが、昨年は50試合出場と激減。打撃不振がたたり、打率.113、0本塁打、4打点、2盗塁と苦しんだ。俊足を生かした広い守備範囲で外野の守備力はチームトップクラス。打撃の復調がカギを握る。20年オフにDeNAからFA移籍した梶谷隆幸も復活を目指す。昨年は度重なる故障で1軍出場なしに終わり、昨オフに育成契約を結んで再スタート。リハビリは順調に進んでおり、開幕1軍を目指す。
スポーツ紙デスクは「ブリンソン以外に、センターを守れるのは松原、梶谷、重信、オコエ。増田陸、萩尾を起用するなら右翼にして、丸をセンターに戻した方がしっくりくる。オコエは楽天時代に体を大きくしてパワーに走った時があったが、彼の持ち味はスピード。巨人は走れる選手が少ないので、そこに活路を見出した方が良いと思います」と指摘する。
キャンプ1軍スタートだが、ラストチャンスと言っていいだろう。オコエはレギュラー争いの序列をひっくり返せるか。(今川秀悟)