オリックス・山本由伸はプロ入り7年目の今季、侍ジャパンの世界一とオリックスの2年連続日本一の原動力になることが期待されている。

 2016年のドラフトでは4位指名と上位でのプロ入りではなかったが、今や誰もが認める日本のエースへと成長した。

「高校時代から球が速くて九州では有名だった。しかし身体も大きくなく(178cm80kg)、アーム式の投球フォームが気になった。本人の努力が一番だが、まさかここまでの投手になるとは想像していなかった。ドラフトで指名しなかったことが悔やまれます」(在京球団スカウト)

 山本はドラフトではそこまで注目の選手ではなかったが、プロ入り後は見事な成長曲線を描いた。ルーキーイヤーに早くも白星を挙げ、翌年にはリリーフに転向。54試合に登板して32ホールド、防御率2.89と安定感ある投球を披露すると、2019年シーズンから再び先発に。ローテーションの一角として結果を残し続け、常勝チームへと変貌していくオリックスの象徴的なプレイヤーとなった。

「(山本が入団した当時の)オリックスはBクラス常連。即戦力になれる選手の獲得が必要で、故障の心配がある高卒選手を獲得し、育成する余裕はない時期でもあった。周囲のそういった心配を吹き飛ばす成長を遂げ、日本トップクラスの投手になった」(在阪テレビ局スポーツ担当者)

「普段から真面目で優しく、良い子という言葉がぴったり。常に野球のことを考え、良いと思った練習メニューなどは全て試してみる。ひたすら努力する。若手選手にとって由伸ほど見本になれる選手はいない。年上の我々も見習うことばかり」(オリックス関係者)

 昨季は26試合に先発して、すべてリーグトップとなる15勝(5敗)、205奪三振、防御率1.68と圧倒的なピッチングを披露。最高勝率、最多完封を加えて、NPB史上初となる2年連続の投手5冠を達成し、沢村賞も2年連続で受賞した。年齢も今年で25歳とまだまだ若く、将来的なメジャー移籍など今後どのような投手になるのか非常に楽しみでもある。

 しかし、プロ入りから投げ続けてきた疲労も気になるところ。2020年からは2年続けてリーグ最多のイニング(2021年が193回2/3、2022年は193回)を投げ、オリックス以外でも2021年には侍ジャパンのメンバーとして五輪にも出場している。そういった疲れもあってか、昨年の日本シリーズでは初戦で左わき腹を痛め、途中降板。チームは日本一とはなったが、予定されていた第6戦の先発マウンドは回避した。

「(日本シリーズでの降板は)高校時代の持病だった肘ではなく右ワキ腹だったので誰もが心配した。プロ入り以来、頑張り続けてきた勤続疲労でなかったのであれば良いですが……」(オリックス担当記者)

「大舞台での精神的重圧に加え、勤続疲労もあるのでしょう。一昨年の日本シリーズは東京五輪の影響で11月末までずれ込んだ。オフ期間が短かった中で、昨年もフル回転。身体が悲鳴をあげてもおかしくない」(在阪テレビ局スポーツ担当者)

 今季もシーズン開幕前に開催されるWBCの日本代表にも選ばれており、そこでの肉体的、精神的な疲労も気がかりではある。

「責任感の強い男なので、(昨年の日本シリーズでの降板時は)投げられないほどの厳しい状態だったのだろう。頭の良い投手なので、昨シーズン終了後には徹底的にケアをして強化も図ったはず。しかし国を背負って戦うWBCの負担は想像を絶するはずで、心配は大きい」(在京球団スカウト)

 WBCでは第1回大会から連続で世界一となった日本代表だが、ここ2大会はベスト4止まり。今大会は大谷翔平(エンゼルス)、ダルビッシュ有(パドレス)、日系米国人のラーズ・ヌートバー(カージナルス)らメジャーリーガーを招集するなど本気モード。その中で山本は投手陣の中心としての活躍が期待されている。

「NPBのシーズンも重要だが、世界一になることが野球人にとって最大の目標。まずはWBCに集中して勝って欲しい。故障なく大会を終え、完全に疲労を取った後で(所属チームのオリックスで)貢献して欲しい。それまではチーム一丸となって戦う気持ちを誰もが持っている」(オリックス関係者)

「オリックスの一員が世界に通用するところが見たい。WBCで活躍できれば夢のメジャー挑戦も近づく。宮崎の高校から下位指名で入団した投手がオリックスを経由し、世界の舞台で投げる。サクセスストーリーを見届けたい」(オリックス担当記者)

 プロ入り後から一気にオリックス、そして日本代表のエースにまで駆け上がった山本。今季はWBCの開催もあり、いきなりの“本番モード”からシーズンへと移っていく。体のコンディションは心配ではあるが、オフに濃厚とされているポスティングシステムを利用してのメジャー移籍のためにも、今年こそ是が非でも結果が欲しいところだ。メジャーでは体力面でのタフさも必要なため、ある意味では今季のパフォーマンスはメジャーで活躍できるかの試金石にもなるかもしれない。