いよいよキャンプインしたプロ野球。ドラフトで入団したルーキーやフリーエージェント(FA)、トレード、現役ドラフトなどで移籍した新戦力に注目が集まっているが、実績がありながらもいまだに去就が未定の選手は確かに存在している。果たして彼らを必要とする球団は今後出てくるのだろうか、現状の戦力から探ってみたいと思う。

 投手で真っ先に名前が挙がるのが巨人を自由契約になった山口俊だ。2019年にはキャリアハイとなる15勝をマークして最多勝、最多奪三振、最高勝率、ベストナインのタイトルを受賞するなど見事な成績を残したものの、翌年に移籍したメジャー、復帰した巨人でも結果を残すことができず、昨年も一軍ではわずか1試合の登板に終わっている。

 12球団合同トライアウトを受けることなくオファーを待つことを選択したが、いまだに獲得に動いている球団の報道はない。ただそんな中でも獲得を検討すべき球団としてはヤクルトと日本ハムを挙げたい。ヤクルトはリーグ連覇を達成しているものの、昨年の先発防御率はリーグ最下位であり、またリリーフ陣も抑えのマクガフがメジャーに復帰しただけに再編の必要を迫られている。新外国人のケラ、ピーターズ、エスピナル、ドラフト1位ルーキーの吉村貢司郎などを補強したが、彼らが機能しないとなると昨年以上に苦しくなることも十分に考えられる。そうなった時の保険という意味合いでも先発、リリーフの両方で実績のある山口は最適な人材であり、これまでも数々の選手が再生していることを考えても獲得を検討しても面白いだろう。

 一方の日本ハムで大きな課題となっているのはリリーフ陣だ。昨年もルーキーの北山亘基が奮闘したものの、チームセーブ数、チームホールド数、救援防御率は全てリーグ最下位となっている。阪神からトレードで移籍した斎藤友貴哉がキャンプ初日の紅白戦でいきなり右足を痛めて緊急降板となっていることも不安を感じさせる。通算112セーブ、25ホールドを誇る山口の補強を考える余地は十分にありそうだ。

 野手では倉本寿彦(前DeNA)が山口と同じく合同トライアウトを受験せずにオファーを待っている状態が続いている。プロ入り2年目の2016年には157安打、打率.294をマークし、翌2017年には全試合フルイニング出場を果たすなどショートのレギュラーに定着したが、2018年以降は大和がFAで加入したこともあって出場試合数が減少。ここ数年は二軍(昨季は90打数17安打/打率.189)でも結果を残すことができておらず、自由契約となったのも致し方ないという状況だったが、堅実な守備はまだまだ健在という印象だ。

 獲得を検討しても面白い球団としては西武を挙げたい。昨年は源田壮亮が怪我で離脱した際に代役として高校卒ルーキーで、しかも育成ドラフト2位で入団した滝沢夏央がいきなり抜擢されていることからも分かるように、ショートのバックアップは大きな課題となっている。昨年のドラフトでは守備に定評のある児玉亮涼(大阪ガス・ドラフト6位)を獲得しているが、過去2年控えとして存在感を示していた山田遥楓がトレードで日本ハムに移籍しており、まだまだ手薄な感は否めない。源田がWBCの侍ジャパンにも選ばれて負担が大きいことを考えても、実績のある倉本が加入すればプラスも大きいのではないだろうか。

 最後に去就未定の外国人選手としてはマルテ(前阪神)の名前を挙げたい。昨年は右足の故障の影響で23安打、1本塁打と来日以来最低の成績に終わったが、一昨年はチーム2位の22本塁打、チームトップタイの71打点をマークするなど中軸として十分な働きを見せている。打率はそれほど高くないが、ボールを見極める力には定評があり、出塁率の高さも大きな魅力である。今年で32歳という年齢を考えても、コンディションさえ万全ならまだまだ活躍できる可能性はあるはずだ。昨年得点力不足に悩んだオリックス、ロッテなどは新加入の外国人選手が機能しない場合は検討しても面白いだろう。

 2020年には鳥谷敬がロッテ、2021年には平野佳寿がオリックスとキャンプイン後に契約を結び、昨年もシーズン途中の7月に秋吉亮が独立リーグから復帰する形でソフトバンクに加入している。この中で目立った活躍を見せているのは平野だけだが、実績のある選手が与える影響はプレー以外の面でも確かにあるだけに、今後もここで挙げた選手たちの動向に引き続き注目したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。