「世界のスーパースター」への階段を、駆け上がろうとしている。イングランド1部ブランドンの三笘薫だ。
直近の公式戦6戦4得点とチームに不可欠なゴールスコアラーに。1月29日のFAカップ4回戦・リバプール戦では値千金の決勝ゴールを挙げた。1−1で迎えた後半アディショナルタイム。フリーキックの場面で左サイドから浮き球できたボールをアウトサイドでトラップすると、右足でボールを浮かせるフェイントを入れてディフェンスのタイミングを外し、再び右足を振り抜いてゴールに蹴り込んだ。昨季王者を撃破する一撃でスタジアムは熱狂の渦に。FAカップ4回戦のベストゴールに選出された。
欧州で取材する通信員は「三笘はスピードに乗ったドリブルがフォーカスされますが、それだけではない。足元の技術が高くシュートも巧い。試合を決められるプレイヤーという評価で、ビッグクラブに移籍するのは時間の問題です。欧州のジャーナリストから『ミトマはなんでW杯にスタメンで出なかったの?』とよく聞かれましたよ。『森保監督の方針』だと答えましたけど」と苦笑いを浮かべる。
三笘が、日本代表でも替えの利かない存在であることは間違いない。昨年のカタールW杯では、グループステージ1戦目のドイツ戦では1点ビハインドの後半12分から左ウイングバックで投入されると、左サイドから絶妙なスルーパス。堂安律の同点弾を呼び込んだ。3戦目のスペイン戦でも後半開始から出場し、同点に追いついた3分後の後半6分に左サイドでギリギリから折り返し、田中碧の決勝ゴールをおぜん立て。三笘が追い付く前にボールがエリアの外に出たとして、スペイン側がノーゴールを主張したが、VARの判定でゴールが認められた。このシーンは「三笘の1ミリ」と称賛され、グループリーグ突破の立役者となった。
ただ、日本代表では途中出場の「ジョーカー」という位置づけで、スタメン出場の機会が見られない。W杯の全4試合でいずれも途中出場。W杯出場を決めたアジア最終予選のオーストラリア代表戦も、0−0の後半39分から出場し、2ゴールを挙げている。21年の東京五輪もケガの影響はあったが、出場時間は6試合で計70分のみ。
スポーツ紙デスクは「森保監督が三笘を評価していないわけではない。むしろ攻撃で違いを出せる選手だから、相手が疲弊した後半の勝負所で起用しているのでしょう。実際、この采配が的中している部分はある。でも、今後さらに上のランクを目指すなら、攻撃の形を構築しなければいけない。三笘はその中心になれる選手です。スタメンから起用しても十分に結果を残せる力を持っていますから」
続投が決まった森保監督だが、W杯で優勝候補のスペイン、ドイツを破った戦術に限界があることも事実だ。技術で上回る相手にボールを保持されるのは仕方ないが、攻撃はショートカウンターに依存。グループリーグ2戦目のコスタリカ戦のように、相手守備陣に固いブロックを敷かれると、攻撃面で引き出しが少なく決定機を生み出せない。0−1で敗れたのはツキに見放されたのではなく。相手の術中にハマった必然だった。
途中出場で勝負を決める「戦術・三笘」から、次のステージに向かわなければ日本代表は進化しない。森保監督の起用法が注目される。(今川秀悟)