8日から第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が始まった。侍ジャパンは9日に中国代表と対戦し、8対1で勝利したが、話題の中心となっているのは、なんといっても大谷翔平(エンゼルス)だろう。

 中国戦では先発投手と3番打者の“二刀流”として出場。投げては4回を5奪三振、無失点、打っては貴重なタイムリーを含む2安打2打点と初戦の白星発進に貢献した。大谷にとってWBC出場は今回が初めてとなるが、「世界一」という目標への思いは人一倍強いように見える。

「WBC公式戦の初戦に二刀流で出場したことが全てを物語っている。オフにはフリーエージェント(FA)を迎える重要な年で、万全な状態でシーズン開幕を迎えたいはず。WBCは出場の辞退はしなくとも、無理のない出場方法でも誰も文句は言わなかったはず。大谷の本気度を証明している」(在京テレビ局スポーツ担当者)

「初戦の中国戦は正直、格下相手なので他の投手が投げても勝てたでしょう。(二刀流で出場したのは)大谷が侍ジャパンの投打の柱であることを証明したかったのもあるだろう。他国へ無言の圧力もをかけられたことで、今後の戦いも有利に進められる。実際の結果以上の大谷効果を発揮できた」(在米スポーツライター)

 今回のWBCでは各国がMLB主力選手の参戦を発表し、真の世界一決定戦として盛り上がりが期待された。しかし大会が近づくにつれ、サイ・ヤング賞3度の左腕クレイトン・カーショー(米国/ドジャース)、メジャー屈指の大砲ブラディミール・ゲレーロJr(ドミニカ共和国/ブルージェイズ)など、大物選手の出場辞退が発表され始めた。

「代理人を含め、MLB関係者全てがシーズンに集中したい気持ちを同様に持っている。故障が主な辞退理由に挙げられるが、無理はさせられないので当然の判断とも言える。高額契約で今やMLBの顔ともなった大谷に関してもそれは当てはまる。それでもWBCにフルで参加するのは、本人の意思が余程強かったのだろう」(MLBアジア地区担当スカウト)

 今回のWBCに“万全の状態”で迎えたのは、その体格を見ても一目瞭然だ。

「MLBのシーズンは長丁場なので、1年を乗り切れる身体でシーズンインする選手も多い。開幕直後は多少、身体を絞りきれてなくとも勝負どころでベストコンディションにすれば良い。各球団の主力選手ならば暗黙の了解で許されている考え方です。大谷もそのクラスの選手だが、来日時の身体を見てもコンデションは完璧。WBCへ向けて仕上げてきていた。お尻から太ももにかけての盛り上がりを見てもらえればわかります」(MLBアジア地区担当スカウト)

 また、打撃や投球の技術向上にも余念がない。メジャーリーグに移籍してからは今季で6年目となるが、心・技・体がかなり高いレベルで揃いつつある。WBCでの活躍から今季はさらに一段レベルアップしたプレーを米国でも見られるかもしれない。

「今春キャンプのバッティング練習では、強烈な打球とともにレフト線へ落ちる打球が目立った。ポイントをより身体に近づけても打ち返せるスイングスピードとバットコントロールが上がったから可能になったのでしょう。イチロー(元マリナーズなど)が安打を量産した時と似たような打球。これにパワーがあることを考えれば、レフトポール際への本塁打も増えそう」(MLBアジア地区担当スカウト)

「(投手としては)三振を取れるのが強みなので、タイブレークもある短期決戦のWBCでは抑え投手での起用も噂されているほど。試合数が多く、本塁打というインパクトがあるので打者の印象が強い。しかし米国では投手として最高レベルの評価をされており、今季はア・リーグのサイ・ヤング賞候補と言われている」(在米スポーツライター)

 今オフにはFAとなることから去就も注目されているが、シーズンで活躍することができれば、給料の面でも“トップ”になることが予想される。大谷が目標とする「世界一の選手」になる日が実際に近づきつつあるのは間違いないだろう。

「MLB史上最高額となる、数字の5で始まる年俸(5000万ドル/約68億円)になると言われている。加えて契約年数も10年前後となるのではないか。豊富な資金があるドジャース、メッツ、フィリーズ、パドレス、新オーナーとなるエンゼルスの動向も気になる。何にせよグラウンド内外でMLBの主役になるのは間違いなさそう」(在京テレビ局スポーツ担当者)

 まだ、WBCは始まったばかりだが、今年も日米ともに「大谷翔平の年」になるような空気感が漂っている。WBCでの世界一からメジャーで大活躍、そして最高年俸の選手に……。日本のファンが思い描くようなストーリーは実現するのだろうか。いつも想像を上回るパフォーマンスを披露してくる大谷が、今年も何かをやってくれそうな気がする。