『アサヒカメラ』2019年12月号では「動物写真の世界へようこそ」と題し、動物写真の撮り方を75ページにわたって大特集!「シーンごとの最適なカメラやレンズ構成」「絞りやシャッター速度、ピントの合わせ方」といった初心者向けの基本のテクニックから、「背景の扱い方や画面の切り取り方」そして「動物と対峙する姿勢やマナー」までを、第一線の動物写真家たちが教えてくれました。

 前回の記事「03 今から始める 野鳥撮影実践講座」に続き、今回は犬や猫など、大切な家族の姿を写真にとどめておきたいと考える方のために、「活発に動きまわるペットをじっとさせるコツ」から「流し撮りのテクニック」までを、その道のプロ、小川晃代さんが段階を追って具体的に伝授してくれます。



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【レベル1】動きをコントロールして表情をとらえる

 ふだん扱い慣れているはずの自分のペットをいざ撮影しようとしても、なかなか難しかったという経験はないだろうか。とにかく、こちらが思うように相手は動いてくれないものだ。犬や猫の場合なら、撮り手である飼い主はある程度のやりとりができるものと感じているだろう。
 
 しかし、撮影においてはまるで別のコツがある。ポートレートを撮ってきた経験があるならば、赤ちゃんや子どもを撮影する場合と比較すると把握しやすいだろう。こちらの思惑と違って動き回るペットをいかに引きつけ、コントロールできるかが何より大切になるからだ。

 以上をふまえて、ペット写真の第一人者、小川晃代さんにさまざまなコツを教えてもらった。基礎的なポイントを身につけてから、次第にレベルアップした撮影にステップアップする構成にしているので、本企画を参考に、ぜひじっくりとペット撮影に取り組んでほしい。

■動きを制限して撮影する

 まずは動きをとめることから。生態を理解してじっくり撮ることでその先にも応用できる。

<箱状のものを用意する>
小川:活発に動いている元気な子犬は動きを制限しないと撮りにくいものです。そこで手軽で見栄えのいい箱状のものを用意し、そこに入れます。おとなしくなった瞬間がシャッターチャンスです。

<屋外では小さな台を用意>
小川:屋外でしばしば選ばれるお花畑での撮影シーン。できれば花が密集している場所で撮りたいものです。これだ、という位置を決めたら、用意しておいた台にのせます。小型の犬の場合、花の位置と高さを合わせるのにも有効。

<椅子などのインテリアを使う>
小川:室内で撮影する場合、犬がそのまま床にいるとつい動き回りがち。そこで背景に合うインテリアを使うと撮りやすくなります。この作例の場合は、椅子に座らせて動きを制限しています。

■視線を誘導し撮影する

 いかに注意を引き寄せるか。子どものポートレートと比較すると把握しやすい。

<遊具で遊びながら片手で撮影>
小川:24〜70ミリのレンズを使い、近い距離で遊びながら撮影します。右手にカメラ、左手におもちゃなどを持ち、遊びながら撮ると生き生きとした表情がねらえます。

<表情を声色で誘い出す>小川:カメラを構えたら、犬の鳴き声をまねた声を発します。すると、「何だろう?」と一瞬とまってくれます。バッチリ目線をもらえたところがシャッターチャンス。うまくいくと、声をよく聞こうとして首をかしげてくれます。

<二人一組で誘導>
小川:犬のポートレートとして雰囲気を出したいときには、カメラ目線以外もほしいもの。その場合は、別の人に見てほしい方向の先にいてもらいます。名前を呼んだり、おもちゃで気を引いたりした瞬間をキャッチ。

【レベル2】光とボケの扱い

■毛並みが映える光をみつける

 可愛いパートナーがもっとも輝くようにするには、どんな光を選べばいいのか? 大きさや毛並みに配慮しつつ最適な条件で撮ってみたい。

<室内で使いやすい逆光と半逆光>
小川:半逆光は毛の輪郭もきれいに出るし、質感もよく出るのでおすすめです。ただし、どうしても顔の部分が暗くなりがちに。光をそこにプラスするためには、A3サイズぐらいの白い厚紙などを用意し、レフの代わりにするといいですね。

<斜光を意識する>
 
小川:順光で撮ると犬はどうしてもまぶしがるし、毛並みもペッタリしがちでナチュラルな表情はねらえません。斜光だとそれほどまぶしそうな目にならず、ほどよい影が出て有用です。いちばん使いやすい光だと思います。

■望遠とボケの生かし方

 望遠とボケの効果はポートレートの一大要素。ペット撮影では人を撮るシチュエーションと比較し試してみると、のみこみやすい。

<背景をしっかりぼかす>
小川:屋外では70〜200ミリの望遠レンズが便利で、ひんぱんに使います。とくに花畑で撮る場合は望遠レンズの力は大きく、圧縮効果によってスカスカ気味の花畑でも密集感が出せますね。

<前ボケを入れ込んで>
小川:望遠レンズによるボケと圧縮効果による作画ができたら、加えて前ボケを入れると、より華やかな印象に。撮影の状況に余裕があったり、前ボケに適した花があれば、作品の力もアップしていく、という方向で試してみてください。

(構成/編集部・池谷修一)

写真・解説:小川晃代(おがわ・あきよ)
1980年埼玉県生まれ。トリマー、ドッグトレーナーなど、さまざまな動物に関する資格を持つペットフォトグラファー。東京都世田谷区でペット専門の写真スタジオ「アニマルラグーン STUDIO」を運営。著作多数。

※『アサヒカメラ』2019年12月号より抜粋。本誌では「レベル3 絞りのコントロール」「レベル4 素早い動きを追いかける」など、より上級者向けのテクニックも紹介している。