間もなく販売が終了する「冬の青春18きっぷ」。JR旅客各社の普通列車が乗り放題となるフリー切符のロングセラーは、格安鉄道旅行だけでなく旅を楽しむためのアイテムとしても幅広い応用力を秘め、その実用性は抜群。そこで、「18きっぷ」を使っての観光列車をの旅をピックアップ。列車の旅そのものを楽しむスタイルの観光列車は、年末年始の疲れを癒してくれるはず。



■「青春18きっぷ」ってどんな切符?

 今シーズンの「青春18きっぷ」は12月31日まで販売され、来年2020年1月10日まで利用することができる。

 基本的な発売方法やルールは従来通りだが、消費税率値上げの影響で、1万1850円から1万2050円に価格が改定た点はご留意を。

 簡単におさらいすると、1枚の「青春18きっぷ」は5回分の1日乗車券がセットになった切符だ。期間中の任意の5日(連続でも飛び飛びでもOK)に使えるほか、5人グループで一緒に利用したり、2人で2日間の旅をした残りの1枚をひとりで使うなどの組み合わせは自由自在。1回分の有効期間は乗車日当日限りだが、乗車した列車が0時を過ぎて最初に停車する駅まで有効。ただし、東京と大阪の電車特定区間では終電まで使うことができる。

 普通列車(快速系統も普通列車の一種)の普通車自由席が乗り降り自由で利用できるほか、別途に指定券や普通列車用自由席グリーン券を購入することで普通車指定席や自由席グリーン車にも乗車可能。このほか一部区間での特急列車や一部第三セクター路線の利用ができるなど例外的なルールも設けられている。

 今回、年末年始におすすめするのは、普通列車扱いで運行されている観光列車。全国各地で趣向を凝らした観光列車がお目見えしているなか、快速など普通列車の普通車で運行されている列車も多く、「青春18きっぷ」で贅沢気分を味わえるというわけだ。ただし、大半の列車は全車指定席となっていることから、指定券ぶんの出費は必要。しかし、真冬の絶景に、その出費以上の満足感が得られるに違いない。

■“星空”も楽しめる高原列車「HIGH RAIL 1375」

 八ヶ岳の東麓を往く小海(こうみ)線を走っている観光列車が「HIGH RAIL 1375」だ。

 小海線の走る清里(きよさと)〜野辺山(のべやま)間で、一般的な鉄道における日本最高地点となる標高1375メートルを記録するなど、日本一の高原路線。列車名「HIGH RAIL 1375」の由来ともなっている。

「HIGH RAIL 1375」は小海線で運行されているキハ100・110系の改造により2017年にデビュー。キハ103−711とキハ112−711の気動車2両編成で、バラエティに富む車内設備が自慢だ。

 小淵沢寄りの1号車はテーブルを備えたボックス席のほか、窓向きに2席ずつを配したペアシート、ヘリンボーンふうに斜に並ぶシングルシートと多彩な座席を用意。車端部には物販カウンターがあり、アテンダントによるオリジナルグッズなどの販売が実施されている。

 2号車はリクライニングシートを配置。車端部にあるギャラリー「HIGH RAIL」に設置された半球型ドーム天井を生かした星空映像の上映などが楽しめる。

 列車は小淵沢(こぶちざわ)〜小諸(こもろ)間で週末を中心に1日1往復が運行されている(小淵沢行きは「HIGH RAIL 星空」として運行)。今シーズンの「青春18きっぷ」期間でこの列車に乗車できるチャンスは1月4・5日のみ。それだけに、この“天空に近い列車”に乗れたら特別感もひとしおかもしれない。

 なお、乗車には別途に指定券(大人840円/子ども420円)が必要。また、小海線は小淵沢以外ではJR在来線との接続がないため、往復か乗車券を別買いのうえ、小諸でしなの鉄道との乗り継ぎとなる。
 
■山岳車窓を満喫! 「リゾートビューふるさと」
 
 もうひとつ、信州から「リゾートビューふるさと」もおすすめしたい列車のひとつ。長野と南小谷(みまみおたり)との間を信越本線・篠ノ井線・大糸線経由で結ぶ臨時快速列車で、「ゆとりとおもでなしのリゾートトレイン」をテーマに週末を中心に運行されている。

 現在、このルートを直通するのは「リゾートビューふるさと」のみ。沿線には善光寺平の絶景が展開する姨捨や、刻々と姿を変えてゆく北アルプスの山並など山岳絶景が次々と現れ、小海線とはまたひと味違う高原列車の旅が楽しめることだろう。

 絶景だけでなく、注目ポイントは、列車に用いられているHG−R300系だ。JR東日本が開発したハイブリッド気動車で、エンジン動力を駆動ではなく発電機とリンクさせ、そこで生じる電力と蓄電池の電力によってモーターと駆動させるシステムが採用されている。

 この形式は2010年に長野地区に投入されたのち、2016年にのちに紹介する「リゾートしらかみブナ編成」として運行を開始するなどエリアを拡大しているが、従来の気動車とは異なる乗り心地にもぜひ堪能していただきたい。

 列車は2両編成での運行で、座席肘掛け位置まである大型の側窓などが外観上の特徴。車内はシートピッチ120センチにも及ぶリクライニングシートを配置、運転室後を展望室とするなど、余裕たっぷりの空間が持ち味となっている。

 アテンダントが乗務しサービスにあたるほか、南小谷行きでは沿線地元有志による民話語りや伝統楽器の演奏などのイベントを実施(※中止となる場合もあり)。大糸線の穂高、信濃大町の両駅では下車散策の時間が設けられ、ボランティアガイドによる穂高神社参拝ガイドなども楽しめる(いずれも南小谷行きのみ)。

 今冬の「青春18きっぷ」期間で乗れるのは、1月4・5日のみ。乗車には別途に指定券(大人530円/子ども260円)が必要となる。

 南小谷からは大糸線を乗り継ぎ糸魚川に向かうのもオおすすめだ。糸魚川からは第三セクター(あいの里とやま鉄道・えちごトキめき鉄道)となり「青春18きっぷ」での乗車はできないが、安曇野と日本海側との分水嶺を境に気象が激変する真冬ならではの体験はほかに代え難い魅力がある。

■厳冬期の日本海を間近に!「リゾートしらかみ」

 真冬の日本海という話も出たが、日本海沿岸の情景は厳冬期にこそ引き立つ……と思う。

「リゾートしらかみ」はまさにそんな日本海の魅力を満喫できる列車の代表格。五能線(東能代(ひがしのしろ)〜川部(かわべ)間)を舞台にする観光列車で、秋田〜青森間に1日3往復が設定されている(3・6号は秋田〜弘前間)。

 1997(平成9)年にデビュー、大型窓や半個室など充実した設備でも人気を集め、現在は「ブナ」と「青池」「くまげら」の3編成で“しらかみファミリー”をつくっている。

 五能線の魅力は、なんといっても線路の間近に迫る日本海だろう。秋田県の東八森(ひがしはちもり)から青森県の鯵ケ沢(あじがさわ)まで、およそ105キロメートルに及ぶ多くの区間で日本海を望み、ときに白波を受けるほどの臨場感を伴う。線路は白神山地の西麓に沿う細道に敷設され、鯵ケ沢付近から弘前にかけては、天候次第では岩木山が車窓を飾る。

 列車設備は編成によって異なるが、リクライニングシートを中心に4両中2号車にボックス席を用意。編成端には展望スペースが設けられている。車内では津軽三味線の演奏(1〜3号の鯵ケ沢〜五所川原(ごしょがわら)間)などの催しが開かれるほか、各地停車駅で用意される体験メニューやご当地グルメなどもこの列車の楽しみだ。

 冬期は2ないし1.5往復での運行で、運転日・列車ごとの充当編成はJR東日本秋田支社の公式サイトで案内されている。今冬の「青春18きっぷ」期間のうち、12月23〜26日と1月6〜9日は全列車が運休となる。乗車には別途に指定券(大人530円/子ども260円)が必要。

■1月4日限定! 「SLぐんま よこかわ」の旅

 最後に紹介したいのは、蒸気機関車の迫力が堪能できる「SLぐんま よこかわ」。

 名蒸機として名高いC61 20(1949年製造)の2機が12系客車を牽引して高崎と横川との間を結ぶ(ただし、高崎発は電気機関車が牽引)。1時間3分のトリップだが、蒸機ならではの乗り心地を味わえる貴重な機会となることだろう。

 この冬の「青春18きっぷ」で乗車可能なのは1月4日のみ。すでに指定券(大人530円/子ども260円)は発売されているが、満席の場合でもキャンセルぶんを狙ってみたい。

 首都圏の蒸機列車ということで、都心からの日帰りもじゅうぶん可能。ぜひ、真冬の蒸気機関車にチャレンジしてみては?

【著者プロフィール】
植村 誠(うえむら・まこと)/国内外を問わず、鉄道をはじめのりものを楽しむ旅をテーマに取材・執筆中。近年は東南アジアを重点的に散策している。主な著書に『ワンテーマ指さし会話 韓国×鉄道』(情報センター出版局)、『ボートで東京湾を遊びつくす!』(情報センター出版局・共著)、『絶対この季節に乗りたい鉄道の旅』(東京書籍・共著)など。